日産 パルサーEXAはスピンドルシェイプの超空力スペシャリティクーペ【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第22回】

■ノッチバックスタイルと専用サブネーム追加で、シリーズのイメージリーダーを担ったスペシャルティクーペ

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。

第22回は、FFの国際車を目指す2ボックスの派生として登場した、ノッチバックスタイルのスペシャリティクーペ、日産 パルサーEXAに太鼓判です。

エクサ・メイン
スピンドルシェイプを突き詰めたスタイル(後期型ターボ仕様)

●スポーツカーではなく高速コミューター

FFの2ボックスとして評価の高かった初代「パルサー」の次期型を計画するにあたり、日産はクーペに新しい個性を与えることを模索。

その2代目パルサーのイメージリーダーカーとして、1982年に発売されたのが「パルサーEXA(エクサ)」です。

リアハッチを寝かせた初代シリーズに対し、2代目はスピンドルシェイプ(紡錘型)を基本に。その特徴をさらに先鋭化するべく、EXAはスラントノーズ、テーパードフード、タッグテールを徹底。全身のフラッシュサーフェス化によるCd値は0.37を実現しました。

エクサ・サブ
フェンダーミラータイプだった初期型仕様

低いノーズ先端には、当時クラス初のリトラクタブルヘッドランプを置き、フロントの面一化を図ります。これに挟まれる5つのグリル口は、機能面とともにグラフィカルなアクセントの役割も。

さらに、前方に突き出した大型のウレタンバンパーが「顔」全体に安定感を与えます。

サイドでは、3ドアハッチと共用のドアが幅広いショルダー面を作り、スパッと前後を貫いています。このショルダーとドア面はかなり硬質感がありますが、絶妙な張りを持たせることでしっかり質感を確保。

「居住性を併せ持つ高速コミューター」として、無理に全高を落とさなかったキャビンは広いサイドウインドウが特徴的。切り立ったリアピラーはエアダクトが程よいアクセントになっています。いわゆるフルドアではありませんが、Aピラーやルーフ部などは丁寧に面一化されました。

ブラックのツートンカラーは、青や赤のボディ色との対比が巧いだけでなく、ボディを薄く見せる効果も。また、ハッチバックより豊かになったホイールアーチが、非常にしっかりした下半身を演出します。

エクサ・リア
リアエンドの大型ランプが特徴的(後期型ターボ仕様)

一方、タッグテールによる平面的なリアパネルは、ハッチバック同様大型の四角いランプが特徴的ですが、モンドリアンの絵をモチーフにしたという黒の分割線が実にユニーク。

また、スポイラーを一体化したリアパネル全体が非常にシンプルに仕上がっています。

●合理的思想から生まれた先進クーペ

インテリアでは、ハッチバックと異なる立体的なメータークラスターと3連丸型メーターが先進感とスポーティさを感じさせます。サイドサポートを考慮したシートは、スポーティであるとともに、ツイード調の生地によって品のよさも演出しました。

エクサ・インテリア
ハッチバックと異なるメータークラスターがスポーティ(後期型ターボ仕様)

EXAを含めたパルサーシリーズは、同時期の「スタンザ」「オースター」や「サニー」などとともに、小手先でなく造形自体で質感を上げるスタイリングと、欧州的な合理性によるパッケージが見て取れます。

技術面も含め、細部の仕上げなどには不足を感じる部分もありますが、この時期の日産は先進的な指向と優れたセンスを発揮していました。後の89年前後には秀作を連発することになりますが、日産には80年代前半にも見るべきクルマは多かったのです。


■主要諸元 パルサーEXA-E(5MT)
形式 E-HN12
全長 4125mm×全幅1620mm×全高1355mm
ホイールベース 2415mm
車両重量 830kg
エンジン 1487cc 直列4気筒OHC
出力 95ps/6000rpm 12.5kg-m/3600rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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