いすゞ ピアッツァ(2代目)、アメリカナイズされたコンパクトクーペは別の顔【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第21回】

■ジウジアーロ・デザインの偉大な初代の名を受け継ぐには無理があった?

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第21回は、偉大な初代の後継を意外な形で引き受けることとなったコンパクトクーペ、いすゞ ピアッツァ(2代目)に太鼓判です。

ピアッツァ・メイン
初代とはサイズ、プロポーションとも異なるボディ

●サイズもプロポーションも別モノ

3代目「ジェミニ」の開発に当たり、いすゞはGMとの関係をより強化しながら派生車種を展開。そのうち、ジオ・ブランドのクーペである「インパルス」をベースとして、1991年に発売されたのが2代目の「ピアッツァ」です。

ジェミニシリーズのクーペとなるボディは、初代と比べ160mm短く、20mm広く、15mm高いコンパクトサイズに。短いボディでありながら長いオーバーハングを持つプロポーションは、初代とは別モノの佇まいを見せます。

ピアッツァ・フロント
セミリトラクタブルライトを継承したフロントビュー

フロントは、セミリトラクタブルの丸型4灯ランプが特徴ですが、実際にはグリルの高さに合わせてランプはほとんど露出しており、あえて「フタを付けた」のは初代のイメージ継承のためかもしれません。

バンパーは80年代風にプロテクターと一体成型のような形状ですが、全面がボディ色で塗られているため、あたかも後塗りした改造車のように見えてしまうところが少々残念です。

ピアッツァ・サイド
大きなカーブを描くベルトラインが特徴

サイドビューでは、セダンに準じた直線基調のスラントしたフードと、Aピラー以降の大きくカーブを描いたベルトラインの組み合わせがこのクルマの最大の特徴。サイドガラスはこのカーブに沿って上下幅が広くなり、キャビンを大きく見せています。

ドア面には、バンパーの高さに合わせてプロテクションモールが置かれますが、これもまたボディ色に塗られていて、バンパー同様の違和感が。また、抑揚のほとんどないホイールアーチもユニークで、スパッと切り抜いたような不思議さを感じます。

ピアッツァ・リア
存在感のあるテールゲート一体型リアスポイラー

リアは、テールゲート一体型のリアスポイラーが特徴で、ベルトラインからのカーブをさらに強調。一方、広いラップラウンドウインドウは、高いクオリティ感をリアビュー全体に与えています。

●傑作の名を使った意図は?

インテリアはジェミニを基本としますが、インパネの段差を取り払い、もともとラウンド形状だったところを、さらに広々とした印象に変えています。レカロシートやMOMOのステアリングは、ロータスチューン車として初代を継承しました。

ピアッツァ・インテリア
ラウンドした広い面が特徴のインパネ

ヒット作となったジウジアーロ原案の2代目ジェミニから、社内デザインに移った3代目が販売的に振るわない中、その派生車にピアッツァの名前を与えたのは、同氏の代表作である初代を思えば不幸な組み合わせだったと言えるでしょう。

商品企画はその時点のメーカーの事情に沿うのは当然ですが、車名にはそれ相応の意味や価値があるわけで、そこには冷静かつ的確な判断力が必須です。しかし、デザインも含め、当時のいすゞにはその判断が許されない事情があったのかもしれません。

■主要諸元 181XE/S(4AT)
形式 E-JT221F
全長 4225mm×全幅1695mm×全高1315m
ホイールベース 2450mm
車両重量 1120kg
エンジン 1809cc 直列4気筒DOHC16バルブ
出力 150ps/6400rpm 17.5kg-m/5000rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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