日産 S-Cargo(エスカルゴ)はブティックが似合うお洒落な商用車【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第28回】

■通称=カタツムリは、時代が生んだお洒落な商用車

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第28回は、街中で誰もが振り返る飛び切りお洒落な商用パイクカー、日産 S-Cargo(エスカルゴ)に太鼓判です。

エスカルゴ・メイン
大きなボディと小さなノーズの対比が特徴的

●パイクカーシリーズの第2弾

80年代後半、日産は「Be-1」など大ヒットとなったパイクカーシリーズの第2弾を計画。1989年、ブティックやフラワーショップの前に停めて絵になる商用車として登場したのが「S-Cargo(エスカルゴ)」です。

「ファッショナブルでユニークな新感覚のマルチパーパスカー」をコンセプトとした車体は、大きなボディと小さなノーズのコントラストが特徴。

最小回転半径4.7mを実現した2260mmのショートホイールベースや、1230mmの荷室高といったパッケージが商用車の証です。

フロントは、前に向かってなだらかに流れるフード面に、愛嬌のある丸型ヘッドランプが置かれます。バンパー部では、分厚い素材色のプロテクターがアクセントとなり、顔周りの引き締め役に。

エスカルゴ・サイド
円弧を描いたピラーと前傾姿勢が特徴的

サイドビューは、広告ボードを想定したフラットなパネルが目立ちます。そのあまりの広さには驚かされますが、ここは逆に商用としての割り切りを個性としました。また、やや前傾したキャビンやドアはボディに軽快さを与えています。

ユニークな素材色の円弧形ピラーは、フロントフェンダーから始まってルーフを経由してリアパネルまで続いており、バンパー同様ボディの周囲全体を引き締めます。同じく、素材色のホイールアーチプロテクターも下半身のアクセントに。

リアビューでは、ほとんど正方形に近いリアガラスがまずユニーク。フロントの丸型ランプに呼応した半円形のランプも特徴的ですが、サイド面同様、とにかく徹底してフラットなパネルに驚きます。

エスカルゴ・リア
ほぼ正方形のrガラスと半円形のランプがユニーク

●「デザイン」が向上した時代

インテリアは、広いテーブル型のインパネが、商用車としての使い勝手のよさを感じさせますが、大型の丸いセンターメーターなど、全体としてモダンさを感じさます。いまや定番となった、センターコンソール上のシフトレバーは時代の先駆けでしょうか。

エスカルゴ・インテリア
シンプルでありつつモダンさを感じるインパネ

パイクカーシリーズの企画に当たって、日産は「パイクファクトリー」を立ち上げ、社外のデザイナーも積極的に起用しました。この時期、好景気に後押しされ、日本のデザイン自体が大きく向上したとも言えます。

S-Cargoや同時発売の「PAO(パオ)」など、パイクカーシリーズはいまや伝説的な存在となりました。けれども、デザインの底上げという点では、パイクファクトリーのような柔軟な体制は、いまでこそ必要なのかもしれません。

■主要諸元 S-Cargo(3AT)
形式 R-G20
全長 3480mm×全幅1595mm×全高1835mm
ホイールベース 2260mm
車両重量 950kg
エンジン 1489cc 直列4気筒OHC
出力 73ps/5600rpm 11.8kg-m/3200rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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