ホンダHR-Vはワゴンでもクロカンでもない、気楽に乗れるジェットフィール【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第18回】

■ワゴンでもクロカンでもない、新コンセプトを持った「ホンダ HR-V」

●Jムーバーシリーズは若者への提案だったけど…浸透はチョイ難しかった?

HRV・メイン
地上高を上げたハイライダースタイルが最大の特徴

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。

第18回は、「Small is Smart」をコンセプトに、若者が気楽に遊べるカッコよさを目指したコンパクト・ハイライダー、ホンダ HR-Vに太鼓判です。

●高いアイポイントで気楽に遊ぶ

クリエイティブムーバーシリーズ」で革新的なヒット作を連発したホンダは、次代の乗り物として、より若いユーザーをターゲットに「Jムーバーシリ―ズ」を提案。その第2弾として1998年に登場したのが「HR-V」です。

スタイリングのキーワードは「アーバンクール」。全高を抑えた2ドアセダン風ボディは、地上高を上げた独特の「ハイライダースタイル」に。気楽に遊べるロードクリアランスを持ちながら、ワゴンでもクロカンでもない新しさを狙いました。

HRV・サイド
ボディを上下2段に分けてスリムさを強調

フロントは薄くミニマムなグリルが広く滑らかな面を作り、ボディとの一体感を強く表現。そこにバンパーに食い込んだ変形のランプを置き、シンプルながら個性的な表情を作り出すことに成功しています。

サイドビューは、スリークなボディをバンパーの高さに引かれた深いラインで上下に分割、ボディをより薄く見せています。これによりずいぶん長く感じるボディですが、実は全長3995mmと、当時のシビッククラスであることが意外です。

分割された下半身は、オーバーフェンダー的な表現として安定感を生み出します。さらに、深いキャラクターラインにホイールアーチを重ねることで、より強い踏ん張り感も加わります。

HRV・リア
3次元曲面ガラスにより張りのあるリアパネル

リアビューでは、Cピラーを兼ねた縦長のランプがサイドからリアへの抜け感を演出。また、このランプを含め、3次元曲面ガラスを用いたリアパネル全体の大きな「丸み」が、ボディ全体が単純な四角形に陥らない重要な要素となっています。

●テーマは「Small is Smart」

インテリアは、機能性と道具感のあるシンプルなインパネが特徴。使い勝手優先のゆったりした面に、2連メーターを被うツインバイザーがアクセントになっており、どこかフロントフェイスにも似たイメージです。

HRV・インテリア
ゆったりとした機能優先のインパネ

成功したクリエイティブムーバーシリーズは、プロダクトアウト的な商品企画がユーザーの「新しい生活」を創造し、彩りました。一方、より若い層に向け「Joyful」をテーマにしたJムーバーシリーズは、いまひとつ浸透が足りなかったようです。

主要パーツ以外の余計なラインを廃したスタイリングや、単にスポーティとは異なるアプローチにはホンダらしさがあった筈。しかし、肝心なのはリアリティのある生活への訴求と、そこに必然性があるデザインだったのかもしれません。

■主要諸元 HR-V J(5MT)
形式 GF-GH1
全長3995mm×全幅1695mm×全高1590mm
ホイールベース 2360mm
車両重量 1110kg
エンジン 1590cc 直列4気筒SOHC 16バルブ
出力 105ps/6200rpm 14.1kg-m/3400rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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