三菱 デボネアVは厳つそうだけどシンプル、重厚そうだけどパーソナル?【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第14回】

■三菱自動車のセルシオ? シーマ?? デボネアVを深掘り!

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第14回は、三菱自動車が22年ぶりに復活させた、本物志向の最高級FFパーソナルセダン「デボネアV」に太鼓判です。

デボネア・メイン
正統をコンセプトにした存在感のあるスタイル

●ボディはセダンタイプのみ

1964年に発売された初代の刷新時期を見計らっていた三菱は、提携先のクライスラーやヒュンダイへのエンジン、車両供給の機会を獲得。これに合わせ、実に22年ぶりにモデルチェンジを敢行したのが1986年発表のデボネアVです。

ギャランΣのシャシーをストレッチ、ロングホイールベース、ロングノーズ・ショートデッキとしたボディは、「正統」を基本コンセプトとした水平基調のセダンスタイル。流行のハードトップは見送られましたが、狙いはあくまでパーソナルユースとしました。

左右に張り出したフロントには、長方形のランプとグリルが一列に並べられ、四角四面のイメージを決定付けています。ただし、妙な派手さを感じないのが不思議なところ。それを支える一体成型の大型バンパーは、いかにも80年代といった表情です。

デボネア・サイド
プレスドアの採用が一体感を生むサイド面

サイドビューでは、6ライトの巨大なキャビンと、比較的薄いボディの組み合わせが特徴。プレスドアの採用は、重厚さとともに、サイド面の一体感を強めています。

また、ショルダーラインと水平のサイドモールは、薄いボディをさらに軽く見せ、切り立ったピラーの巨大キャビンを載せていながら、不思議とパーソナルなイメージを醸し出しています。そのモールの高さに合わせたリアホイールアーチも、下半身に軽快さ与えます。

リアビューでは、何といってもパネル全面をランプとガーニッシュで覆った点が見所。この大きなボディに対して不釣り合いとも言えそうな表現ですが、しかしこれでほとんど強引にパーソナルなイメージを得ていますし、さらにシンプルさも感じられます。

●コントロールされた表現

デボネア・リア
パネル全面をランプやガーニッシュで覆ったリア

インテリアは、ボディ同様インパネ全面が直線基調で構成され、メーターフードやグローブボックスなどの表皮にはドイツ製の高級素材が使用されています。シートは80年代らしいルースクッションタイプですが、ただ、ここでも近未来感のあるステアリングホイールが、フォーマルカーではないことを主張します。

初代ミラージュや2代目ランサーなど、当時の三菱車の多くに関わったデザイナー、アルド・セッサーノ氏は、このデボネアVも手掛けたといいます。「正統」ながら「粋で現代的な味付け」と三菱が謳ったのは、その意外なほどのシンプルさに理由がありそうです。

近年の社内デザイン部の強化により、外国人デザイナーやカロッツェリアは不要になったという話をよく聞きますが、本来はもっと軽やかに、内外のデザイナーの交流が行われるべきなのかもしれません。

■主要諸元 3000 ロイヤル(4AT)
形式 E-S12A
全長4865mm×全幅1725mm×全高1440mm
ホイールベース 2735mm
車両重量 1530kg
エンジン 2972cc V型6気筒SOHC
出力 150ps/5000rpm 23.5kg-m/2500rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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