清水和夫が大絶賛。シビックe:HEVは「欧州車と戦える乗り味&乗り心地が秀逸」

■新型シビック、e:HEVのパワートレーンがいいのは想定内。ビークルダイナミクスの凄いポイントは「重心点の低さ」

●価格は高いけど、それだけの価値は十分にあり

国際モータージャーナリスト・清水和夫さん試乗動画紹介、今回はホンダシビックe:HEV」です。

清水和夫×シビックe:HEV
清水和夫×シビックe:HEVのすべてのインプレッションは動画で!

シビックというと、やっぱり最速バージョンの「タイプR」に注目が集まってしまいがちのような気がします。ルノー・メガーヌR.S.とのニュル最速対決は有名なハナシですからね。シビックタイプR最新バージョンが近日中にも各種詳細が発表される?とのウワサでもちきりです。もちろん、私も楽しみな1台です。

清水和夫×シビックe:HEV
清水和夫×シビックe:HEV

しかし、清水さんは昔から「タイプRみたいに尖り過ぎなクルマは興味無し」的なことを言っています。

そんな清水さんがシビックe:HEVに試乗したら「コイツこそヨーロッパ勢と戦える!」と断言。タイプRではなくe:HEV仕様こそ、Cセグ・セダン界でヨーロッパ勢と競える実力があるというのです。

なにが清水さんを夢中にさせたのか? ワインディング&街中試乗インプレッションほか、シビックe:HEVの開発責任者である齋藤吉晴さんへのインタビューも含め、興味深いお話がいっぱいです。

では動画へドーゾ!(クリッカー:永光 やすの)

●シビック登場50周年、清水和夫の自動車運転歴も50年

今日は新型シビックの試乗会でニューモデルに乗ります。今回のシビックで11代目ですね。

清水和夫×シビックe:HEV
初代シビックは1972年に登場

今思えば、本当に偶然なんですけど、私が免許を取った1972年に初代シビックが登場したということで、ちょうど50周年ですね、半世紀。

50年で11代目ということは、シビックは平均4~5年に1回くらいの割合でモデルチェンジしてきました。

シビックといって私の記憶に残るのは、初代シビックがアメリカのマスキー法という、世界で初めて厳しい排気ガス規制が施行されたときに、世界中の自動車メーカーが苦しんでいる中、シビックに搭載されたCVCCエンジンが、アメリカの環境基準を世界で初めてクリア!

清水和夫×シビックe:HEV
シビックe:HEVのコクピット

その時は、さすがのトヨタも「マスキー法…ちょっと困ったなぁ」という感じで、ホンダからCVCCの技術を貰い、トヨタのエンジンに載せてアメリカに輸出したことがありましたね。

それを受けて日本は「昭和53年規制」と言われるものが施行され、乗用車に関しては都市部のいわゆる排ガス、大気汚染の問題にひとつの道筋をつけたというのが、このシビックの出だしでした。

だから、シビックって生まれた時から環境適応車だったな、という気がしています。

●調子こいてオプション付けたらシビックでも500万円?

清水和夫×シビックe:HEV
シビックe:HEVのエンジン

このe:HEVっていうのは、電気自動車っぽい、かなりシリーズハイブリッドで走るもの。だけど、高速へ行くと直接エンジンがタイヤを回すモードを持っているので、そういう意味ではシリーズパラレル。日産のシリーズハイブリッドにエンジン直結モードを付けたみたいな感じですね。

だから、こうやって(普通に)走っていると本当にEVですよね。エンジンで発電した電気を使ってモーターで走っている。このモーターの出力も上がって、EV距離も伸び、このe:HEVの「e」の部分が強調されたのが、この11代目シビックe:HEVです。

清水和夫×シビックe:HEV
シビックe:HEV(画像:クリッカー)

ただ、この新型シビックのe:HEV、これね390万円くらいです。多分、オプション付けて調子こいたら500万円近くいっちゃうんじゃないかな。「シビックが500万円かよ!」っていう気はするんですけども…。

でも考えてみれば、1972年にシビックが出て。1974年にフォルクスワーゲンはビートルから初代ゴルフを出しました。それも空冷水平対向エンジンから、フロントの水冷4気筒エンジンになった。ゴルフも、ワーゲンもビートルをやめ、空冷エンジンをやめたというところから環境適応をしたわけです。

清水和夫×シビックe:HEV
シビックe:HEVのリヤビュー

でも、そのゴルフもいま日本で売られているクルマはDSG(デュアルクラッチトランスミッション)ですけど、やっぱり300万円台だったような気がするので、ゴルフ、シビックというクルマがもはや200万円台では手に入らなくなったな、という気はしますね。それだけクルマも大きいし。

一昔前のアコードですよね。だからシビックはアッパーミドルの世界になっています。

●ボディ&サスペンションの進化こそスゴイ

このエンジンは、充電してバッテリーに電力を供給してます。ココにモードがあるんですけども、モード切り替えていくとインディビデュアルとエコモードというのがあります。これは一番燃費がいいモードになるんでしょうね。

回生ブレーキが強くなるのかな? こういうハイブリッドでも、ホンダは遊び心を忘れてないなっていうのがいいですね。

清水和夫×シビックe:HEV
シビックe:HEVのタイヤサイズは235/40ZR18 95Y

でも、パワートレーンだけじゃなくて、ボディとかサスペンションも相当良くなってます。けっこう路面が荒れているんだけど、上手くハーシュを抑え込んだり。乗り味いいな! ワイドボディで非常に低重心的な印象はあります。

前のクルマに急接近すると、トラフィックアラートが出ますね。いわゆる、衝突するリスクが増えるよ!っていうことです。

何とも言えないパワートレーンだな。いや、本当に足がイイね、コレ。見事だな。

まぁ400万円取るんだからこのくらいの乗り味出して当然だけど。

コレ、初めて32GT-R(BNR32)に乗ったときの感動と同じくらいの感動かな。トヨタで言えば80スープラ(JZA80)とザックスのダンパー付けたCH-R。

まぁ、GRヤリスとかはちょっと尖ったクルマなので。量産タイプで言えばトヨタではその2台、ホンダで言えばNSX 、S2000とかね。それがいいのは分かるんだけど、普通のセダンで良いクルマという部分では、このシビックが初めてかな。

●ねぇ、何でシビックはこんなに良くなったの?

清水和夫×シビックe:HEV
本田技研工業株式会社 CIVIC e:HEV 開発責任者:齋藤吉晴氏にインタビュー

清水:いきなり無茶振りしますが、何でこんなに良くなったんですか? お世辞抜きで!

齋藤:ありがとうございます。一言でいうのは難しいんですけれど、今回のシビックe:HEVは、素のポテンシャルをしっかりと引き出すと。e:HEVは生まれた時からしっかりと135kWという非常に大きなモーターを積んでいたんですけど、それを使いこなせていなかった。0-100km/hタイムであったり燃費というところはもう十分に。

清水:それは安全をみて遠慮してたの?

齋藤:やはり、実際の使い方でどうやったらいいかとか、全部勉強できていなかった、というところがあると思います。いろいろなシチュエーションでバッテリーが無くならないようにするとか、どんなシチュエーションでもレスポンスを出さないといけないという、やはりそういう部分が上手くできていなくて。分かっている部分はしっかりと入れて。

清水和夫×シビックe:HEV
シビックe:HEVのフロントビュー

清水:最悪の状態を避けるために、ちょっとコンサバ(コンサバティブ(conservative)/保守的、無難)だったということですね。

齋藤:はい、それはもう間違いなく。

清水:それでいろいろなことが分かってきたから、どんどん引き出しが広がって性能を引き出せたと。

それはe:HEVの話なんですけど、ボクが驚いたのは、ハンドリング。ステアリング握って最初にちょっとワインディングに行ったときに、本当に冗談抜きに、お世辞抜きで、1990年の32GT-Rに乗ったときのインパクトがあったんですね。あの骨太感。なんじゃこりゃ~!みたいな。

それが、あのステアリングホイールから最初に感じたんです。ステアリングもちょっと重め。でも、本当にロードインフォメーションもあって、路面にトリモチでくっついたみたいに吸い付いているじゃないですか。なんだ、この接地感は!みたいな。そのふたつで驚きましたね。


まだまだ続く、清水さんによる突っ込みインタビュー。動画でぜひ確認を!

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの/画像:クリッカー)

【SPECIFICATIONS】
車名:CIVIC e:HEV
・SIZE
全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
トレッド(フロント/リヤ):1535/1565mm
最低地上高:135mm
車両重量:1460kg
乗車定員:5名
・ENGINE
種類:直列4気筒DOHC
総排気量:1993cc
内径×行程:81.0×96.7mm
圧縮比:13.9
最高出力:104kW(141ps)/6000rpm
最大トルク:182Nm(18.6kgm)/4500rpm
燃料/タンク容量:無鉛レギュラーガソリン/40L
・MOTOR
最高出力:135kW(184ps)/5000-6000rpm
最大トルク:315Nm(32.1kgm)/0-2000rpm
燃費消費率WLTCモード:24.2km/L
・OTHERS
駆動方式:FF
トランスミッション:電気式無段変速機
ステアリング装置形式:ラック&ピニオン(電動パワーステアリング仕様)
最小回転半径:5.7m
タイヤサイズ(フロント/リヤ共):235/40ZR18 95Y
ブレーキ:油圧式ベンチレーテッドディスク/油圧式ディスク
サスペンション方式(フロント/リヤ):マクファーソン式/マルチリンク式
価格(税込):3,940,200円

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この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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