ホンダ CR-Xデルソルが放つ南欧の光と風で、カタチも気分も変わる【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第11回】

■コンセプト一転、電動オープントップで太陽や風とともに

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第11回は、オープンの爽快感とクーペの実用性を兼ね備えた「太陽のスポーツ」に太鼓判です。

デルソル・メイン
電動オープンルーフ「トランストップ」が自慢

●異例に丸みを持ったボディ

初代をよりスポーティ方向に振り、走り好きに好評を得た2代目ホンダCR-X。そのイメージを一転、南欧の明るい光や風を感じるオープン2シーターとして、1992年に登場したのがCR-Xデルソルです。

ベースは例によって同時期のシビックですが、2370mmのホイールベースは200mm短縮されたもの。これにより4mを切ったボディは、意外にも基本をウエッジシェイプスタイルとしています。

デルソル・サイド
Bピラーの存在感も手伝ってカタマリ感を演出

コンパクトながらグラマラスなシェイプを目指した結果、ホンダとしては異例に丸みを持ったボディで、前後バンパーの一体感も含め、強いカタマリ感を備えています。

フロントでは、豊かなフェンダーの流れを受ける大型のランプも丸みを帯びた形状に。内側のアクセサリーランプは、先に発売されたトヨタ・ソアラに酷似した表現ですが、これはまったくの偶然とのこと。

デルソル・リア
大きなランプでボリューム感を抑えたリア

サイドビューは、余計なラインのない素直な面に加え、太いBピラーの存在感と、豊かな前後フェンダーとが相まって、先のカタマリ感がより強く表現されています。一方、大きく傾けたAピラーは、オープンルーフの長さとの兼ね合いで決まったもの。

リアは、トランクリッドの長さを確保しつつも、可能な限りオーバーハングを短くしているのがわかります。リア回りは結構なボリュームですが、大型ランプと意図的に入れられた切り欠きラインによって、過多な表情を避けています。

●全天候タイプのインテリア

デルソル・インテリア
ラインの少ない一体成型が見どころの内装

一方、「オープンスカイ・カフェテラス」をキーワードとしたインテリアは、全天候を考慮し、継ぎ目の少ない一体成型のインパネやシートが特徴。ゴーグルをモチーフにしたメーターパネルや、シートのストライプがそこへアクセントを与えています。

2代目は、軽さを生かした初代のスポーティイメージを壊したのではないか? それがユーザーを限定させてしまったのではないか? 開発スタッフは、そうした「反省」からデルソルの企画を着想したといいます。

そうした路線変更はホンダの十八番ですが、それが市場に受け入れられないことも少なくありません。では、デルソルの販売不振にデザインは影響していたのでしょうか? そこが実に興味あるところです。

■主要諸元
ホンダ・デルソル SiR 電動オープンルーフ仕様車(5MT)

形式 E-EG2
全長3995mm×全幅1695mm×全高1255mm
ホイールベース 2370mm
車両重量 1140kg
エンジン 1595cc 直列4気筒DOHC
出力 170ps/7800rpm 16.0kg-m/7300rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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