トヨタ・オーパは「驚き」を車名にした独創の新時代モノスペースボディ【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第8回】

■オンリーワンなデザイン、トヨタ・オーパを憶えていますか?

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第8回は、機能性の時代からスタイルの時代への変化を予見した、超個性派モノスペースに太鼓判です。

オーパ・メイン
何にも当てはまらないまったく新しいスタイル

●何にも似ていないシルエット

90年代後半、スパシオやナディアなどミニバンベースのクロスオーバー車を広く揃えたトヨタは、次に向かうべき方向を模索。2000年、機能面に加え、デザインやクオリティの時代を見据えて登場したのがオーパです。

2700mmのロングホイールベースに前後ショートオーバーハングのボディは、ミニバンでもワゴンでもセダンでもない独特なモノスペーススタイル。一見するとかなり大きく感じるものの、全長はカローラクラスという点もまたユニークです。

フロントは、ボリューム感のあるフードから緩やかに前方へ流れる造形が特徴。異形の縦型ランプはミニバン的ですが、パンチング風な表現のグリルはどこかセダン的なのが面白いところ。バンパーには余計な装飾がなく、実にスッキリした表情です。

オーパ・サイド
大きなキャビンと豊かなボディ面のサイドビュー

サイドビューでは、前に出したAピラーによる高いカウルとベルトラインとの大きな段違い構成が特徴。ショートノーズでありながら、後ろへ引いた格好のドアミラーの効果か、実際よりフロントフェンダーが長く感じられます。

サイドパネルは、大きな張りのショルダーラインで安定感を生む一方、その上を凹面にすることで不思議な動感を醸し出しています。さらに、一見直線に見えるベルトラインは微妙にカーブを描いており、ここもまた微妙な表情を作る原因となっています。

●不協和音の中の調和を目指す

オーパ・リア
各要素がバラバラに置かれたようなリアパネル

リアビューは、上下逆のような形状のランプが不思議ですが、これがサイド面に回り込んでいるのも実に妙。また、サイド面の張りを受け止めるため左右にはみ出したパネル形状も唐突です。結果、リアはランプ、ガラス、パネルなど各要素がすべてバラバラに置かれたように。

オーパ・インテリア
前方に流れるような面のインパネが特徴

一方、インテリアは前後に流れるようなインパネが特徴的で、センターメーターを上手く組み込んだもの。この未来感覚のある造形と、2トーンを用いた質感のある仕上げが、同時期のトヨタの内装作りの「巧さ」です。

合理的な思考や自分の価値観をしっかり持つ大人をターゲットとしたオーパは、大きなキャビンを持ちながら生活臭がなく、強いオリジナリティを感じるクルマを目指したといいます。

そのため、あえて不協和音の中でのハーモニーに挑んだオーパですが、同じ時期の意欲作である初代ヴィッツやファンカーゴなどの正攻法的商品と並ぶ理解を得られなかったのが残念なところです。

■主要諸元 オーパ 2.0 D-4 a(SuperCVT)
形式 TA-ACT10
全長4250mm×全幅1695mm×全高1525mm
ホイールベース 2700mm
車両重量 1250kg
エンジン 1998cc 直列4気筒DOHC16バルブ
出力 152ps/6000rpm 20.4kg-m/4000rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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