バック駐車・車庫入れで簡単にまっすぐスマートに決めるコツは目線とハンドル操作

■意識するのはこの2つ! これだけでたちまちバックのベテランに!

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苦手な人が多い、バックでの車庫入れ。

車庫入れや駐車場でのバックが苦手という人がいます。教習所でも習っているはずなのですが、忘れていたり、頭ではわかっていてもうまくできないなど、理由はひとそれぞれでしょう。

ここではあらためてバックでの車庫入れ操作について、写真とともにおさらいしていきましょう。

●視線の先をどこに向けるか?

出かけた先の駐車場…スーパーやホームセンター、コンビニエンスストアなどで、白線内にクルマを入れるのに、そう狭くないのに何度も切り返しをしたり、動く間に小刻みにブレーキを踏むひとがいます。

周囲のクルマを待たせた挙げ句の割には曲がっていたり、柱にスレッスレの位置に置いたままクルマから降りてしまったり…。こういったドライバーやクルマの様子を観察していると、おおかた2点の共通点が挙げられるように思います。

1. 視線の先が近すぎる
2. 駐車操作のための移動スペースが小さい

「視線が近い」というのは、無意識のうちにボンネットの先や、そのすぐ先のアスファルトを見ているなどしており、つまりは視野が狭くなっているということです。ゆえに動きがぶれ、併せてポールや柱、白線の認識が遅れ、切り返しややり直しなどが生じる。

加えて、誰に遠慮しているのか、知らず知らずのうちなのか、なぜかクルマの移動量を遠慮気味にし、省スペース性を優先させてしまうことで切り返しの回数を増やし、結果的に時間がかかるということになってしまっているひともいます。

ということは、バックでの車庫入れがうまくできないひとは、まずはその逆を意識すればいいのです。
つまり、

1-2. 遠くを見る
2-2. 使える周辺スペースはフルに使う

この2つです。といっても程度問題で、はるか向こうの山の稜線に目をやるということではありません。また、周囲のクルマを押しのけて(よけさせて)というわけでもありません。

要するに、いままでより視野を少し広げ、ゆったりかまえるということです。これだけで余裕ができて周囲のクルマを待たせることもなくなり、結果的に駐車にかける時間が短くなります。

「車庫入れがヘタだよなぁ」と思っている方、まずはこのふたつを意識してみてください。それだけで心理的にだいぶ変わってくることでしょう。

●駐車操作時に目を向ける先は?

本来、やろうとしていることはシンプルです。白線の中にクルマを収める。ただそれだけのことです。

その途中がうまく行かないからクルマがうまく収まらない。ではうまく収めるにはどうすればいいのでしょうか? まずキーになるのは、所定の位置にクルマを置くまでの間の視線の運び方です。

写真の例のような車庫入れパターンの場合、運転席から車両の左斜め後方と左右を肉眼で、補助的に左右のドアミラーを確認しましょう。

ここからは実践です。

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ねらったスペースに左寄せし、左ドアガラスから車庫や駐車場内に何もないことを確認する。

まず狙うスペースに直角に止まり、そのスペースに何もないことを確認したら、そこから右斜め前にクルマを移動させます。

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状況にもよるが、自宅車庫であれ駐車場であれ、道幅をいっぱいに利用してクルマを前に出す。

ここでのコツは、住宅街であれ店舗の駐車場であれ、道幅をいっぱいに使い、自車の右前を突き出すようにすることです。

次にシフトレバーをRに入れ、ブレーキをしっかり踏みながら腰の左側に体重をかけるよう座り直し、同時に上半身もヨガ並みにねじってバックさせる。このとき、駐めるスペースの左側先っちょ、駐車場でねらったスペースの左側にクルマがある場合は、そのクルマの右前角に自車の左後ろをぶつけるかのようになるべく近づきます。

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車両左後部を車庫左側の先などにぶつけんばかりの軌跡で車庫に向かう。寄せすぎに見えるが、あらかじめこのようにしておけば、スペース中央に収めるのに、ハンドルを戻し気味にする微調整だけですむ。
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このときの車内からの眺め。慣れていないとドキッとするかもしれないが、左のドアミラー鏡面内で、このように見えていれば大丈夫だョ。

本当にぶつけないでください! あくまでもイメージです。

クルマと周囲との距離というのは、中から見たときと外から見たときとでは印象が異なり、運転席からギリギリで寄せたつもりでも外から見ると結構空間があるものです。窓から直接見てかなり近いようでも、左ドアミラーの中で自車左の壁ないし車両との間隔が写真くらいのようであれば適当です。

また、あらかじめこの軌跡をたどるようにすることで、結果的に自然とスペース中央に、まっすぐに収めやすくなります。

●ハンドルさばきはケチケチと

同時にハンドルのまわし方はどうするか。ここで多めにをまわすと不要な切り返しの元になってしまいます。よってまわす量は必要最小限に。

後退しながら、必要に応じてハンドル回転を継ぎ足すというイメージで操作してください。下がりながら周囲の確認をするとき、後ろにしても前にしても、目安にするものは遠目のものにしてみてください。後ろのクルマのフロントガラス、建物なら壁や窓、前方なら向かいにあるクルマのフロントガラスなど、何でもかまいません。

けっこう不思議なことに、やや遠目のものを視線の軸にするとブレが少なくなります。さきに「道幅をいっぱいに使い…」と書きましたが、これはバックのスタートを駐車スペースから少しでも離れた場所から行うことで、スペースの全域をしっかり把握しながら行いたいのと、1発駐車を目指すハンドルの微調整&修正するための距離稼ぎという理由があります。

どうせ駐めるなら、まっすぐに決めたいところです。

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ウエストラインがまっすぐなクルマだと、ウエストラインと白線を平行にさせることで収まりのよい駐車操作がしやすい。

車両先端がスペース内に収まるまでの間、ハンドル修正を加えてまっすぐにしたいわけですが、前方を見ると同時にサイドにも目を向け、ドアガラス下辺(ウエストラインという)が、自宅車庫ならブロックなど、駐車場なら白線と平行になるようにします。

この場合、ガラスを下げる必要がありますが、何も自車まわりの白線でなくても、少し先にある建物の壁やドア、ガラスなど、地面に対して平行な部分などでもかまいません。

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段差のあるところでは、車庫入れ終盤で前輪が乗り上げるとき、その感触が1回であれば、前2輪とも同時に乗り上げていてきちんと垂直に入っていると判断できる。その感触が2回であれば、斜めになっているということだ。

これはフロントドア、リヤドアのウエストラインが、地面と平行する一直線スタイルを採っているクルマの場合に限られ、この部分にうねりが与えられたクルマでは通用しませんが、ひとつの参考にしてみてください。

●どこで駐車完了とするか?

みなさん、出かけた先の駐車場で、周囲のクルマを見てみてください。後ろのタイヤ…いや、頭から突っ込んで駐めたクルマの前輪でも同様なのですが、タイヤを車止めのブロックにしっかり密着させた状態で駐めているクルマを見かけると思います。

これを駐車のたびに繰り返していると、先々何かしらの致命的なトラブルが必ず起きます…とはいいませんが、ブロックにタイヤを当て、歪ませた状態にしておくことが、タイヤや車体にとっていいはずはありません。

夜寝るとき、顔を踏まれながら心地よく眠りにつけるひとはいません。

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非常にわざとらしい1枚。タイヤをブロックに押し付け、タイヤや車体に余計な負担をかけないように気を配ろう。

また、後輪はブロックに押し付けられているわ、前輪は前輪で地面を後退する向きに力を受けながら地面をグリップしているわの状態は、厳密にいえば、ホイールベースが縮む方向にある状態のままブレーキをかけられているわけですから、サスペンションにも無用な負担がかかっていると思います。

これくらいでクルマは壊れないにせよ、何もタイヤやサスペンション、車体に無用な負担をかけることはないでしょう。

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ブロックに当たったことがわかったらすぐにシフトをN(ニュートラル)にいれてブレーキを放し、クルマを少し前進させてブロックからタイヤを離そう。
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タイヤの反発力でクルマが少し前進したらブレーキを踏み、車両が停止したらブレーキ解放。クルマが動かないことを確認してからパーキングブレーキを。

ブロックにタイヤが当たったままパーキングブレーキをかけることはせず、いったんN(ニュートラル)に入れてブレーキを解放し、ブロックに当たったときの反力でわずかにクルマを前進させてからブレーキをかけて駐車完了としましょう。

もっと細かくいうなら、レバーN+フットブレーキ解放の状態でパーキングブレーキをかけます。

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これくらい離せば充分だ。タイヤに記したチョークの白線が接触部位。このときはブロックから75mm離れている。
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この操作でブロックからタイヤが離れるようす。

すなわちすべての手足を放してもクルマが動かない状態でパーキングブレーキをかけ、トランスミッションにも一切負担がかかっていない状態にしてから、ATならPに、MT車なら1速かRに入れる…。

こういった日常のちょいとしたクルマへの気遣いが、「長期に渡って何事も起こらない」というメリットとなって返ってきます。タイヤとブロックから離れてさえいれば、その距離がたとえ1mmであっても充分です。写真は、タイヤが当たる部位から75mm離れた状態です。

ここまでの「作法」、文章にすると、書いた当の本人でさえ、かなりめんどくさく感じられるのですが、朝起きて歯を磨き、顔を洗うのと同様、習慣化してしまえば苦ではなくなります。バックでの車庫入れが苦手な方、どうぞ試してみてください。

(文/写真:山口尚志