スバル新型WRX S4の究極のパフォーマンスをカタチにしたアグレッシブなデザインとは? 【特別インタビュー】

■スバル新型WRX S4のエクステリアデザインに迫る!

WRX・メイン
コンセプトカーの再現に挑戦したスタイリング

SUBARUの新型「WRX S4」は、革新を超えた「The Fun to with AWDパフォーマンス」の実現を掲げました。その価値を示す力強いスタイリングの意図はどこにあるのか、エクステリアデザインを担当した源田氏にお聞ききしました。

●より個性を極めるために

── まずはじめに、新型のデザインコンセプトについて伺います。従来の「Dynamic×Solid」を進化させた「BOLDER」に加え、今回は「Aggressive(攻撃的)」がテーマとして掲げられましたが、これらの関係について教えてください。

「「Dynamic×Solid」は、グローバルでスバル車全体の認知度を高めるために掲げたもので、すでに一定の成果を得ています。ただ、その一方で車種ごとの個性が薄まり、似たような表現になってしまった。そこで、その進化の幅を広げるのが「BOLDER」です。その上で、WRX S4の「パフォーマンスを極める」という商品コンセプトをデザインに反映したキーワードが「Aggressive」となります」

WRX・スケッチ
面の流れと内圧から張り出すデザインイメージ

── 新型は、開発の途中からコンセプトカーである「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT(以下「VIZIV」)」の再現を目指したと聞きます。当初は「Aggressive」な案は出なかったのですか?

「そうですね。先代はグローバルカーとしてユーザー層も広がり、女性ユーザーも含めて、たとえば通勤などの日常使いも多かったんです。そうした背景を踏まえると、どうしても正常進化的な案に止まってしまった。そこに「VIZIV」の評判が耳に入ってきて…」

WRX・コンセプトカー
2017年に発表された「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」

── では、フロントから各部についてお聞きします。まずボディの流れの起点としたヘキサゴン・グリルですが、実車を見ると意外に「面」的な表現になっています。他社ではもっと先端を前傾させるなど「Aggressive」な手法も見られますが?

「それにはふたつの理由があります。まず、先代のグリルは顔の中に六角形の穴が開いたような『カタチ』の表現だったのですが、新型はボディ全体のカタマリとして捉えたかった。もうひとつは、スバル車として歩行者保護や視界性能といった安心・安全の機能を重視したことです。フードを延長するなど手法はいろいろありますが、もっと総合的に考えたということです」

WRX・フロント
意外に面的なグリルと、スバル車のアイコンであるパワーバルジ

── ボンネットのパワーバルジですが、「VIZIV」ではブラックの面的な表現でした。新型は従来通りの形状としましたが、これをなくすことで新しさが表現できませんか?

「実は、当初『VIZIV』同様の黒いパネルも検討したのですが、別パーツになるので重くなってしまうんですね。『究極のパフォーマンスカー』としてそれはあり得ない。クルマに詳しくない方の中には『あの穴は何?』といった声もあるそうですが、今回も機能試験では効果が出ていますし、やはりスバル車としてキャッチーだろうと判断しました」

WRX・フロント2
長いオーバーハングとフードからAピラーへの曲線的な流れ

── 近年のスバル車は、モデルチェンジをしても大きくイメージが変わらないと感じています。理由のひとつにフロントオーバーハングの長さが大きく変化してないこともあると思っていますが、ボンネットからAピラーへの流れにシャープさを抑えている部分もそのひとつではないでしょうか?

「そうですね、たとえば視界確保のためにカウルを下げてしまうと、ボンネットからの流れに『折れ』ができてボディの一体感がなくなってしまう。それに、空力や歩行者保護の面からもフードの厚みは必要なんです。オーバーハングについては、2世代ほど前からAピラーを100mm程度前に出して短く見せる工夫はしています。ただ、あまり攻めると逆に他社との差がなくなってしまうし、フロントのプランカーブもしっかり取れないなどデメリットもあるんですね」

── ではサイド面です。新型の特徴である張り出したリアフェンダーのラインは、写真だと非常にシャープに見えますが、実車では意外に柔らかいラインです。ここはもっとシャープにすると「Aggressive」になりませんか?

WRX・リア
張り出したフェンダーとダックテール形状のリアパネル

「いや、単に鋭ければいいとは言えません。新型は内圧で張り出したようなフェンダーを目指していますが、鉄板の中に力が漲っている様子を示すには、あまりシャープなラインだとエネルギー感が出ない。『圧』の強さを示すにはこの程度のRが最適だと考えています」

── リア部ですが、「BRZ」同様、いわゆるダックテール形状としたのはなぜですか?

「まず空力性能が基本にありますが、その上で、張り出したリアフェンダーやコンビランプのワイド感を強調する意図があります。フロントから流れてくるパワーがここで集約されるイメージですね。BRZとの共通性についてはよく聞かれるのですが、実はほとんど意識していなかったんですよ」

WRX・空力
CMF部門が開発した空力テクスチャ

── ボディ下部をブラックで1周させる表現ですが、力強さを出すとはいえ、とりわけリアバンパーのブラック面の広さは驚きですね

「ギョッとしたという声も聞きます(笑)。ホイールアーチのクラッディングにも賛否があるようですが、とにかく従来と同じことをやっていては埋没してしまうという危機感がありました。CMF部門が発案した六角形の空力テクスチャだけでなく、リアバンパーには空気の抜けなど機能的な意味もしっかり持たせています」

── 最後に。今回コンセプトカーの再現に取り組まれたのですが、その経験が今後の量産車デザインの開発に影響することはありそうですか?

「ありますね。具体的なことはまだ言えませんが、次作ではコンセプトカーより量産車の方がジャンプアップしている?と言えそうです(笑)。ユーザーの見る目は日々進化していますので、私たちはその先を行かなくてはいけない。今回の経験ではそういう手応えを感じたと言えます」

── コンセプトカーはいいけど量産車は…という声はいよいよなくなりそうですね。本日はありがとうございました。

WRX・デザイナー
商品企画本部 デザイン部 開発主査 源田 哲朗氏

【語る人】
株式会社SUBARU
商品企画本部 デザイン部 開発主査
源田 哲朗

(インタビュー:すぎもと たかよし

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この記事の著者

すぎもと たかよし

すぎもと たかよし 近影
東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。