御神体に込められたダイナミックな造形。新型レクサス「NX」の次世代デザインランゲージとは?【特別インタビュー】

■レクサス次世代をNXを通して見てみる

10月7日、およそ7年ぶりにモデルチェンジされた新型「NX」は、次世代レクサスの第一弾として登場しました。そこで、エクステリアデザインを担当した熊井氏に、レクサスの新しいデザインランゲージについて話を聞きました。

NX・メイン
新世代レクサスデザインの第1弾となったスタイル

●レクサスSUVのデザインとは

── では最初に。新型の開発に先立ち、「ひし形」をモチーフにするなど非常にユニークだった初代をどう評価、総括しましたか?

「初代は非常にアバンギャルドなスタイリングでしたし、かなり意識しました。タイヤを四隅に置くことを中心にした面の作りはかなり挑戦的でしたが、それがちゃんと理にかなっていた。大げさでなく世界のカーデザイン界が揺れたと思っています。当然、新型もそのDNAを引き継ぎました」

NX・コンセプトカー
次世代デザインを表現したコンセプトカー「LF-Z Electrified」

── その新型はレクサスの次世代デザインランゲージとして「独自性」「シンプリシティ」を掲げていますが、なぜいま次世代なのですか?

「レクサスは今年2021年3月にEVのコンセプトカーである「LF-Z Electrified」を発表しましたが、このクルマはレクサスの次世代デザインも提案しています。つまり、電動化は機能の本質をデザインに反映にさせるチャンスと考えました。グリルを筆頭にボディ全体をカタマリとして「シンプル」に捉え、そうした挑戦を継続することで「独自性」を持つと」

── たとえば、2020年に「IS」はマイナーチェンジで非常に先鋭的なスタイルとなりましたが、その流れとも違うのですか?

「はい。ISまでは、ある意味純粋なカッコよさを追求していたと言えます。それに対し、機能を表現するコンセプトとして、あたかも1世代分進化したのが次世代のデザインです」

NX・スケッチ
新型の出発点となったキースケッチから

── 最近はAピラーを後ろに引いて「クルマらしさ」を表現するSUVが多い中、新型はピラーを前に出したワンモーション的なシルエットです

「運動性とユーティリティを両立したうえで骨太なダイナミックさ、カタマリを追求した結果です。実は、デザイン開発の初期にキースケッチを具体化した「御神体」と呼ばれるモデルを作りました。初代で掲げた「ヒューマンセンターコンセプト」を踏襲したもので、そのダイナミックさを反映させたワケです」

── そのカタマリの中で、キャビンが薄く小さく見えます。SUVでは居住性をアピールする例も多いですが?

「実際、ベルトラインがかなり前方からキックアップしていて、サイドウインドウは初代より小さくなっています。これは軽快感や走りのよさの表現ですが、実はヒップポイントを見直すなどでユーティリティは向上している。いわばデザインのマジックでしょうか(笑)」

●スピンドルグリルは、次世代ではどうなる?

NX・モデル
キースケッチを具現化した「御神体」

── 今回は「新世代スピンドル」も掲げていますが、メッキ枠を廃したこともその一環ですか?

「そうです。まずグリル全体を直立した「壁」ととらえ、フードの先端に抜けて行くイメージとしました。もちろん空気をもっとも効率よく通すという機能性の反映です。メッキ枠をなくしたのは、グリル自体も面としてとらえ、ボディのカタマリの中で見せたい。単に顔の中の「具」ではないと」

── 新型は「シャープなライン」も特徴と謳っていますが、実車を見ると先のISほどの鋭さは感じられませんね

「技術的に言うと、ISのプレスは最小Rが「3R」という強烈な鋭さなんですね。それを特徴としてアプローチした。一方、NXではパキパキなラインではない、ボリュームのある面を削いだ表現としたんです。カタマリを優先することで、先代より重量感も上がっています」

NX・サイド
ワンモーション的なシルエットとした新型のサイドビュー

── 新型はフロントフェンダーからキャビンへ向かう立体と、リアフェンダーに向かう立体の「交差」が特徴だとしています。少々難解な造形ですが、その意図はどこにありますか?

「これはキースケッチからの発想なんです。立体をクロスさせることで、面の動きを大きく見せることができる。言い方を変えれば、造形を動かすためのサイズを稼ぐことができるんです。フロントタイヤの張り出しや前に抜けてゆくイメージなど、ある種の機能的な表現も可能になります」

── たとえばトヨタの「C-HR」など、最近は大きなサイドシルプロテクターが流行ですが、新型はかなり控えめですね

「そこもカタマリの世界観として純粋に造形で見せたかった。新型はリアフェンダーの面がドア下に深く入り込んでいて、大きな光のグラデーションを作っています。そこに大きなプロテクターがあると却って邪魔になるんですね。サイドシルはあくまで土台なんです」

NX・イメージ図
異なる二つの立体を交差させた造形イメージ

── 先代のリアパネルは少し腰高でしたが、新型は横方向への動きが強くなりましたね

「ええ。デザインとしてはトレッドが片側で約30mm拡大したのが大きかったし、横一文字のランプなどでもワイド感を出した。これで欧州車のように絞り込んだキャビンと、安定感のある大きなボディの組み合わせが可能になったワケです」

NX・リア
先代に比べて重心を大きく下げたリアビュー

── では最後に。次世代デザインの第1弾が完成したいま、今後のレクサスデザインにはどのような可能性を感じていますか?

「そこは無限の可能性があると答えておきます。レクサスデザインは止まることなく常に最先端を走る、私たちデザイン部は本当にそう思っています。世界のカーデザインの中でも非常に特徴的だし、進化するスピードはどこよりも速いという自負ですね」

── ラグジュアリーブランドとして歴史の浅いレクサスが立ち止まることはあり得ないと。本日はありがとうございました。

【語る人】
Lexus International レクサスデザイン部
新型NX外形デザイン担当
熊井 弥彦氏

NX・デザイナー

(インタビュー:すぎもと たかよし

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この記事の著者

すぎもと たかよし

すぎもと たかよし 近影
東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。