北米生まれでモノフォルムな存在感をまとった日産 ブルーバード セダン(9代目)【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第16回】

■セダンとハードトップ、まったく異なるデザインが与えられた9代目ブルーバード

ブルーバード・アイキャッチ
「SSS」が「スーパースポーツセダン」だからか、SSSがメインに据えられたブルーバードセダン。

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第16回は、伝統のブランドを守るため、ふたつの異なるボディを作ってしまったバブル経済の申し子「日産 ブルーバード セダン(9代目)」に太鼓判です。

●セダンは北米を意識した存在感に

901運動(1980年代に日産自動車が「1990年代までに技術の世界一を目指す」クルマ作りを目標とした運動)により登場した「プリメーラ」が予想外のヒットとなる中、同クラスのブルーバードのあり方を模索していた日産。バブル景気の残り香を受け、何とセダンとハードトップの2車型による展開を決定、1991年に登場したのが9代目のブルーバードです。

2車型のうちユーザーの多様化と北米での販売に対応させたセダンは、より存在感を高めるべくモノフォルム調のスタイリングに。こだわり派のスポーティセダンとして、従来ハードトップだったSSSグレードを譲り受けました。

全体的に滑らかなボディですが、フロントもほぼフラットなボンネットフードやツライチに整ったグリル、さらにバンパーまでひとつの流れで構成。グリルはSSSらしいハニカム構造ですが、上部左右をパネルで囲み、過度なワイルド感を避けています。

サイドは、基本のモノフォルム基調がよくわかるところですが、プレスドアを用いることでより強いカタマリ感を獲得。さらにキャラクターラインを廃し、ホイールアーチのフレアを滑らかにすることで、ボディ全体の面一感をグッと高めます。

ブルーバード・リア
尻下がりが賛否を呼ぶリアビュー

リアビューの特徴的な「尻下がり」表現は、先のモノフォルム感をより打ち出すための手段とされたようです。ここに、フロントに準じた大きめの変形楕円ランプを置いて、リアエンドの「締め」の役割を持たせています。

また、バンパーもフロント同様にボディとスムーズに一体化され、滑らかな流れが保たれています。一方、大型のスポイラーはSSSのスポーティさと同時に、下がったリアとのバランスを図ることが目的のようです。

●尻下がりは本当にダメなのか?

インテリアは基本的にハードトップと共通ですが、大きな楕円形のメータークラスターを見ると、どうやらセダンに合わせたことが想像できます。T字型のインパネ全体はオーソドックスですが、ドアの丁寧な内張りなど、品質感の高い仕上げは当時の日産らしいところでしょう。

ブルーバード・インテリア
セダンに通じる骨太感のある内装

90年代のブルーバードをどうするべきか? 苦肉の策とも言える2車型構成は、その販売の大半をハードトップが占めることとなりました。それは先代までの名残でもあり、当時の流行に沿った結果でもあります。

ただ、「尻下がりはカッコ悪い」という定説は少々短絡的と言えるかもしれません。リアが下がっているか否かではなく、トータルのデザインで判断すれば、北米スタジオの提案は決して的外れとは思えないからです。

■主要諸元 セダン 2000SSS リミテッドアテーサ(5MT)
形式 E-HNU13
全長4605mm×全幅1695mm×全高1420mm
ホイールベース 2620mm
車両重量 1370kg
エンジン 1998cc 直列4気筒DOHC インタークーラーターボ
出力 210ps/6000rpm 28.0kg-m/4000rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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