EVの充電時間が半減! 日立オートモティブシステムズが高電圧インバーターを発表【東京モーターショー2019】

■ハイパワー化を実現したEV向け新モーターも注目

日立オートモティブシステムズは、東京モーターショー2019で「Moving Forward!(持続可能な社会の実現に向けて、クルマのイノベーションを加速する」をテーマに掲げ、二つの製品をお披露目しました。

まずは「ホンダ向けi-MMD用モーター」です。

モーター
日立オートモティブ電動機システムズ製モーター。ホンダのハイブリッド(I-MMD)向けです。

こちらは日立オートモティブシステムズとホンダが電動車両用モーターの開発、製造および販売を目的として2017年に設立した「日立オートモティブ電動機システムズ」によるもの。11月から量産が開始されるそうです。

この新モーターですが、これまでのモーターとどこが違うのかというと、コイルが2スロットから4スロットに倍増されました。それによって、コンパクトなサイズをキープしながら高出力化を実現したそうです。

コイル
「集中巻き」に対してトルク密度が高いのがメリットの「分布巻き」を採用。さらにコイルを2スロットから4スロットに分散し、振動や騒音を低減しました。
従来のモーター
こちらは従来のモーター。分布巻きは同様ですが、コイルのスロット数が異なります。

具体的な搭載車種はアナウンスされていないのですが、モーターのスペックは最大出力135kW、最大トルク315Nmとなっています。

●800Vの高電圧化を世界に先駆けて実現したインバーター

もう一つの新製品が、EV用高電圧高出力インバーターです。アウディeトロンなどに採用されている従来型のものと外観は同じですが、新チップの採用によって高電圧化を実現しました。

インバーター
EV用高電圧高出力インバーター。カットモデルが今回初めて公開されました。
モジュール
右側が高い冷却性能とともに高耐圧化を実現した新パワーモジュールです。

電力は、電圧と電流の積で決まります。したがって、電圧が2倍になれば、電流は2分の1で同じ電力を発生できることになります。一般的なEVのシステム電圧が400Vなのに対して、この新インバーターは800Vということで、電圧が低いことによる電力損失の低減、細いケーブルが使用可能なことによる軽量化など様々なメリットが得られますが、何より注目なのは充電に必要な時間が半減すること。EVが抱える課題の多くを解決してくれるこの高電圧化技術は、世界に先駆けて日立オートモティブシステムズが実用化したものなのです。

また、この新インバーターはモジュラー設計を取り入れており、今後登場が予想される様々なタイプのEVに対応しているのが特徴です。

インバーター
電流の異なる2種類のインバーター。モジュール化により多様なカテゴリーのEVに対応可能としています。

ブースには電流の異なる2種類の新インバーターが展示されていましたが、外側のケースは同じもの。中身のモジュールの数によって性能が異なり、モジュールを3つ内蔵した「インバーター300」は電流が335A、3つのモジュールを並列で2セットつないだ「インバーター600」は電流が670Aとなっています。前者は一般的なEV、後者はハイパフォーマンスなEVでの搭載を想定しているそうです。

日立オートモティブシステムズの強みは、こうした技術の横の広がりにあります。モーターに強い会社、インバーターに強い会社はありますが、日立オートモティブシステムズは両方を自社でまかなうことができるため、それぞれの性能を最大限に引き出すことができるというわけです。

これからますます高度な技術が必要となる自動車の開発において、トータルでソリューションを提供できる日立オートモティブシステムズの存在感はますます強くなることと思われます。

カメラ
ADAS(先進運転システム)に活用されるステレオカメラも日立オートモティブシステムズの得意技術。こちらはスズキ・エブリイに採用されているもの。今後はカメラの広角化により、右左折時に横断歩行者を認識できることを目指しています。
AI
AI(人工知能)が搭載可能なECU(開発中)。AIによって、車と人が重なっているなど、一部が隠れている物体も認識できるようになります。また、対象物の「動きの予測」をして、数秒後の歩行者や車両の位置を推定することも可能に。
自動運転システム
こちらは自動運転に関係する技術の紹介。日立オートモティブシステムズがステレオカメラ、電動パーキングブレーキ、自動運転ECU、高精度地図ユニットなど多彩な技術を擁していることがわかります。
電動車システム
エンジンや電動化に関する技術も着々と開発中。例えば、インフィニティQXに搭載されて話題となった可変圧縮比制御エンジンも、日立オートモティブシステムズの技術なのです。
VRシアター
自動運転の走行シーンをVRシアターで体感するコーナーも設けられています。
コンパニオン
多彩な先進技術が展示されている日立オートモティブシステムズのブースは「西4ホール」です。

(長野達郎)