14歳以下の入場者が前回比で7割増し! 2019年大成功だった東京モーターショーは体験型に進化すべきだ【週刊クルマのミライ】

■モーターショーのカタチが変わっていくのを実感した

2019年の東京モーターショーが閉幕してから、まもなく一か月。オリンピック・パラリンピックの影響で会場が分散してしまったことや無料エリアの拡大など、従来とは異なるスタイルで開催されたので比較は難しいといえますが、それでも『青海・西・南展示棟、MEGA WEB、および屋外のDRIVE PARKにおける総来場者数は1,300,900人』という速報値は、ほぼ倍増といえるインパクトのある数字で、モーターショーはオワコンとはいえないという空気を生み出しています。

さらに公式発表において『特に14歳以下の来場者の割合は前回比で約7割増加しました(速報値)』という部分も注目を集めています。若者のクルマ離れといわれて久しいわけですが、あと何年かすればクルマを運転できるようになるであろう世代の来場者数が増えているというのは、クルマ離れ対策としては有効なコンテンツだったといえます。

その大きな原動力がキッザニアとコラボレーションした職業体験型施設「Out of KidZania in TMS2019」だったことは間違いありません。なんと期間中で約10,000人が体験したというのです。100万人を超える入場者を集めようかというイベントでの1万人というのは、数字としての貢献度はわずかかもしれませんが(保護者同伴だとしても2~3万人の入場者増にしかつながらない)、その盛況ぶりや注目度の高さはモーターショーのあるべき姿の未来像を示していたと感じます。

東京モーターショー2019 アウト・オブ・キッザニア
東京モーターショー2019 アウト・オブ・キッザニア エントランス

実際、筆者も激戦と呼ばれた当日申し込みを突破して、小学生の子供を連れて「Out of KidZania in TMS2019」に参加しました。想像していた以上に本格的で、悪い意味で子供だましのコンテンツではなかったのは、さすがキッザニアとのコラボレーションと感心させられました。キリッと緊張した顔のわが子の姿に感動した保護者の方も多かったのではないでしょうか。

東京モーターショー2019 アウト・オブ・キッザニア SUBARU
東京モーターショー2019 アウト・オブ・キッザニア SUBARUブースで使われた本物のレーシングカー

たとえば、「Out of KidZania in TMS2019」にSUBARUが出展していたのは、ニュルブルクリンク24時間耐久でクラス優勝を果たした本物のレーシングカーを使ったタイヤ交換でした。作業としてはホイールナットを締め付けるというだけですが、電動インパクトで締めたあとに、きちんとトルクレンチを使ってトルク管理するところまでがセットになっています。また、安全のために帽子をかぶり、必要に応じて安全メガネも装着するという部分でもリアルな対応となっていました。

短絡的に新車をアピールしたいのであればこうしたコンテンツはさほど意味がないといえます。「Out of KidZania in TMS2019」はクルマと触れ合うことの楽しさや、クルマを作るということの面白さ、またクルマを生み出すためのテクノロジーなどを学ぶ場になっていました。表層的な刺激ではなく、本当にクルマが好きになってほしいという気持ちが感じられたのです。こうした経験がブランドへのロイヤルティにつながるのでしょう。

東京モーターショー2019 アウト・オブ・キッザニア Toyota
東京モーターショー2019 アウト・オブ・キッザニア トヨタ・ブース

東京モーターショーのルーツである、全日本自動車ショウは最新モデルを展示して商品をアピールするショーでした。その後、東京モーターショーが発展していく中で、夢の具現化であるコンセプトカーを発表することでメーカーの技術力やデザイン力をアピールする場になっていきました。昨今のモーターショーでは再び最新モデルのプロトタイプを発表する場になっていました。夢よりも目前の売上が優先される時代になったということでしょうか。

そうしたリアリティも大事ですが、はやり言葉でいえば「エモい」要素が足りなくなっていたのかもしれません。それが、東京に限らず世界的なモーターショーのオワコン化につながっていった面があるといえるでしょう。

2019年の東京モーターショーでは「Out of KidZania in TMS2019」という小学生が対象の体験型コンテンツが充実していましたが、大人も同様に楽しみたいという声も少なくありませんでした。次回の東京モーターショーでは、今回のショーが示したように体験型コンテンツを中心としてクルマファンを増やす、ブランドロイヤルティを高めることを目的としたショーにシフトすることを期待します。そうして年齢を問わずブランドを好きになるような体験型コンテンツが充実させる方向での進化こそが、モーターショーの新しい価値を生み出すと思うからです。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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