【自動車用語辞典:運転支援と自動運転「概説」】運転支援は必要。自動運転はほんとに必要?

■自動運転にはまだまだ課題が多い

●現在実現しているのはレベル2まで

現在自動車の技術として、もっとも注目されているのは、自動運転ではないでしょうか。すでにさまざまな運転支援技術が実用化され、その延長線上に自動運転がありますが、まだまだ解決すべき課題が多いのが実状です。

運転支援から自動運転に至る技術と自動運転のメリットと直面する課題について、解説していきます。

●自動運転の狙いとメリット

自動運転では、ドライバーに代わってシステムが周囲の環境を認識ながら自律的に目的地まで運転を操作します。これは、最終目標の「完全自動運転」の姿ですが、その前段階の運転を支援するレベルを含めて、広い範囲で自動運転という名称は使われています。

完全自動運転が実現されると、多くのメリットがあります。

・交通事故の減少
交通事故の主な原因は、人為的なミスです。センサーとコンピューターで判断する方が圧倒的にミスは減少し、交通事故が減少します。

・渋滞の解消
最適な走行経路の選択や適切な車間や速度を維持できるため、渋滞が緩和されます。

・運転に対する精神的負荷の解消と時間の有効活用
運転からの解放による肉体的・精神的疲労の軽減や移動中に会話や読書など自由な時間が増えます。

・迷惑運転の減少
悪質な暴走運転や最近社会問題となっている煽り運転に悩まされることがなくなります。

・その他
ドライバーの運転技術によらないので高速走行化による時間短縮、ハンドルや変速レバーがなくなることによる広い車室空間の確保、カーシェアリングが普及すれば自車購入の金銭負担の軽減

●自動運転のデメリット

メリットに比べればデメリットは少ないですが、以下のことが考えられます。

・システムのハッキングによるトラブルや事故発生のリスク
・ドライバーの運転技術の低下による自力運転時の事故発生のリスク
・カーシェアリングが進めばクルマの数が激減するため、自動車関連の就業人口の減少やタクシー運転手の減少

●自動運転実用化に向けた課題

技術課題とは別に、自動運転実現のためには以下のルールと環境整備が必要です。

・国際的な基準づくり
自動運転の将来像の共有と国際ルール(基準や標準化)づくり

・自動運転を想定してない現行法規の改正
改正の必要がある現行法規:例えば、運転者の必要性と運転者に車両制御の義務化を規定、車速10km/h以上の自動操舵(手放し運転)の禁止など

・事故時の責任問題

・情報セキュリティとハッキングへの対策

●自動運転のレベル分け

完全自動運転に至る技術レベルを6段階に分けて、レベルを規定しています。

・レベル0 (自動運転技術なし)
自動運転技術を採用せず、すべての操作をドライバーが行います。

・レベル1 (運転支援)
加速(アクセル)、操舵(ステアリング)、制動(ブレーキ)のうち、いずれかひとつをシステムが支援します。

・レベル2 (部分運転自動化)
加速、操舵、制動のうち、複数をシステムが支援します。

・レベル3 (条件付き運転自動化)
限定された条件下で、すべての操作をシステムが行います。ただし緊急時は、ドライバーが操作を行わなければいけません。

・レベル4 (高度自動運転)
限定された条件下で、すべてをシステムが行います。ドライバーが全く関与しません。

・レベル5 (完全自動運転)
いかなる状況でもシステムが操作する、実質的な完全自動運転です。

レベル3のモデルを市販化すると発表しているメーカーもありますが、現時点実用化されているのはレベル2までです。

●2020年は重要なマイルストーン

自工会の自動運転ビジョンのシナリオは、以下のようになっています。

・~2020年は、自動運転技術の実用化、導入期
・~2030年は、普及拡大、展開期
・~2050年は、定着、成熟期

特に東京オリンピック/パラリンピックが開催される2020年は、国内外に技術をアピールする重要なマイルストーンと位置付けています。


本章では、運転支援技術や自動運転技術、自動運転の現況と今後の展開について、詳細に解説します。

(Mr.ソラン)

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この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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