【自動車用語辞典:運転支援と自動運転「日産プロパイロット」】日本車にいち早く登場したレベル2の運転支援システム

■2016年、日産セレナに初めて搭載

●2019年には2.0に進化

多くのメーカーが自動運転レベル2のクルマを商品化していますが、その中で自動運転を最も意識して「半自動運転」をアピールしたのが、2016年の日産・セレナに搭載した「プロパイロット」です。

プロパイロットの機能や特徴について、解説していきます。

●プロパイロットとは

日産のプロパイロットは、高速道路で単一車線を維持しながら先行車に追従することによって、渋滞時や高速巡行時にドライバーの運転負荷を軽減します。自動運動レベル2に相当し、信号のない高速道路走行や自動車専用道路に限って、アクセルとブレーキ、ステアリングを自動的に制御します。

プロパイロットは、基本的に2つの機能から成ります。

・ACC(追従機能付クルーズコントロール)

車速30~100km/hの範囲で、先行車との車間距離を維持する追従走行を行います。先行車が停止すると自車も停止、先行車が3秒以内に再発進すれば、自動発進して追従を続けます。停止して3秒以上経過した場合は、アクセルを踏むか、ステアリングにあるスイッチを押すことによって再発進し、追従制御を継続します。

・LKAS(車線維持支援システム)

走行レーンの白線を認識して車線中央を走行するように、ステアリングの操作を支援します。ステアリングの支援は、上記のACCが作動しているとき、レーンの白線が認識できているとき、先行車を検知しているとき、ドライバーがハンドルを握っているときに限られます。

●プロパイロットの構成

一般にACCを機能させるには、「カメラ+ミリ波レーダー」や「ステレオカメラ」を使用しますが、プロパイロットでは高性能の単眼カメラのみで先行車や歩行者を認識します。

これは、画像処理に優れているモービルアイ社(イスラエル)の高度画像認識技術を採用しているからです。

ステアリングへの介入は、手を添えている程度の軽さでも分かる強さに調整しています。また、ドライバーが手動に切り替えたいと意識して少しでもハンドルを操作すると、すぐに制御は解除されます。

現在の法規では、プロパイロット作動中でも車速10km/h以上では手放し運転は禁止されています。セレナでは、手放し運転すると5秒後には警報が鳴り、10秒後には自動運転が解除されるように設定しています。

●状況によっては作動に限界も

2016年11月、日産の販売店でセレナの試乗に来たお客さんに、販売員が自動停止するクルマだからブレーキを踏まないように指示しため、交差点で信号待ちのクルマに追突するという事故が発生しました。

事故当時は、夜間で雨降りというカメラが先行車を認知しづらい悪条件でした。自動運転技術は万能でないという、意識付けが重要であることの一例です。

●自動運転レベル3以上に向けた動き

多くのメーカーが自動運転レベル2から、条件付きの自動運転レベル3以上へのレベルアップを目指しています。レベル3は、限定された条件下ですべての操作をシステムが行いますが、緊急時にはドライバーが操作を引き継がなければいけません。

日産は、2019年に高速道路での自動車線変更を可能にしたプロパイロット2.0を発表しましたが、2020年には一般路を含めた自動運転レベル3「プロパイロット3」を目指す計画です。

トヨタやホンダなど他社も、概ね2020年頃に高速道路のみか一般路も含めるかに違いはありますが、自動運転レベル3を目指しています。


2018年4月に政府が発表した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム研究開発計画」によると、2020年を目途に自動運転レベル3、2025 年を目途に自動運転レベル4の市場化を目指すと謳われています。
基本的には、各社とも上記計画に沿って自動運転レベル3の実現は、2020年頃を目標にしています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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