フェラーリの歩み:レースとともに生きるイタリアの高級スポーツカーメーカー【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■起源は、レーサーのエンツォ・フェラーリが1929年に仲間と設立したスクーデリアフェラーリ

●比較的扱いやすいポルシェに対して、フェラーリは扱いが難しいマニアックな高級スポーツカー

フェラーリは、ポルシェと双璧をなす高級スポーツカーメーカーです。レーサーが創立したメーカーだけに、レーシングカーとして性能を突き詰めた独自の技術が特長です。

憧れのスポーツカーを提供し続けるフェラーリのこれまでの歩みついて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:フェラーリ

・CEO:ルイ・C・カミレリ

・創立:1947年

・資本金:非公表

・従業員数(2018.12現在):3851人

・販売台数:10,131台(2019.1~2019.12)

●起源

アルファロメオでレースに参加していたレーサーのエンツォ・フェラーリが、1929年に仲間と「スクーデリアフェラーリ」を創立したのが、フェラーリの起源です。しばらくして、アルファロメオのセミワークス扱いになりましたが、1939年にアルファコルセに合併されました。

しかし、経営陣と対立したエンツォ・フェラーリは1943年に自ら自動車工場を作り、レーシングカーの製作を開始しました。1947年にフェラーリを創立して、すぐにレース車の125Sの製造を開始しました。

フェラーリ 125S
1947年、125S

●メーカーとしての歩み

フェラーリ創立の翌年1948年には、166インターの受注生産を開始。このクルマが、フェラーリのロードゴーイングカー(競技用でなく公道を走行できるスポーツタイプのクルマ)第1号。レース向けの166Sを公道でも走行できるように改造したクルマです。

市販車の成功によって徐々に名声を高めていきましたが、一方でレース活動費や労使紛争によって経営が圧迫されました。その結果、1966年にフェラーリはフィアットの傘下となり、エンツォはレース車の開発に専念しました。

フィアットの支配下になってからは、商品力や品質が大幅に改善され、高級スポーツカーやGTカーのメーカーとして確固たる地位を築き上げました。またF1での成功と先進技術の導入によって、景気の低迷時期にも世界中で好調な販売を達成しました。

2016年にフィアット傘下から独立し、現在に至ります。

●往年の代表的なモデル

125Sでレーシングカーの製造を始めたフェラーリですが、166インターや250シリーズでレーシングカーをベースにした一般車両の開発を始めました。純粋にロードゴーイングカーとして設計されたのは、275GTBからです。

・1968年、275の後継として誕生したデイトナと呼ばれる365GTB/4を発売、12気筒エンジンの高性能に加えて美しいスタイルで高い評価を獲得

フェラーリ 365GTB/4 デイトナ
1968年、365GTB/4 デイトナ

V12気筒エンジン搭載車しか作らなかったフェラーリですが、フィアットの傘下になることでV6モデルのディーノ206GTや1975年にはV8エンジン搭載の308を発売しました。

フェラーリ 308GTS
1975年、308GTS

●最近の代表的モデル

1980年代に入ると、V12気筒ミッドシップのテスタロッサや4シーターV8のモンディアルが登場し、2シーターV8の308は328、348へと進化を遂げました。

フェラーリ テスタロッサ
1980年、テスタロッサ

・1984年、V8ツインターボをミッドマウントさせた288GTO発売、1987年に40周年記念モデルF40 へと発展

・1992年、V12のFRで2+2シートのグランドツーリングカー456を発売

フェラーリ F40
1987年、F40

・2002年、創始者の名を冠した55周年記念車、エンツォ・フェラーリを発売

エンツォ・フェラーリ
2002年、エンツォ・フェラーリ

・2004年に456は後継車612スカリエッティへ進化、2011年にはフェラーリ初の4WDシューティングブレークFFが登場し、2016年にGTC4ルッソへと進化

V12気筒エンジンのミッドシップモデルは、1994年発売のF512を最後に消え去り、2012年のFRレイアウトのF12、その後2017年の812スーパーファスト(800PS/12気筒)へと進化しています。


ポルシェが日常的に扱いやすい高級スポーツカーであるのに対して、フェラーリはレーシングマシンのように繊細でマニアックな高級スポーツカーというイメージがあります。

フィアット傘下となった際に量産体制を敷きましたが、伝統的にきめ細やかな少量生産で作り上げるという名残があるので、どうしても高額になってしまいます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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