海外自動車メーカーの歩み概説:コロナ禍で生き残りをかけたメーカー再編が加速か【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■電動化と自動運転、コネクテッド技術、モビリティサービスを先導するメーカーが業界をリード

●コロナに加えて、米中貿易戦争とサプライヤチェーン再編など先行きは不透明

世界的に自動車メーカーの合併や吸収が進み、毎年のように相関関係や勢力関係が変わるほど世界の自動車産業は流動的です。背景には、電動化に加えて自動運転やコネクテッド技術、モビリティサービスなど自動車の技術領域が広がったため、単独でリソースを確保できないことがあります。さらに、今年(2020年)に入ってコロナウィルスの感染拡大もメーカ間の関係に大きな影響を与えることが予想されます。

海外自動車メーカーの成り立ちから最近の動向について、解説していきます。

●海外自動車産業の概要

海外メーカー相関図
海外メーカー相関図

2019年の世界販売台数のトップは、フォルクスワーゲンで4年連速の首位でした。2位はトヨタ、3位はルノー・日産・三菱連合でした。この3社は、いずれも1000万台を超え、世界の販売台数の1/3以上を占めます。

自動車メーカーの合併や吸収が流動的に行われ、欧米日だけでなく、最近は中国メーカーやインドのタタが勢力争いに加わってきました。

●フォルクスワーゲン

フォルクスワーゲンID.4
フォルクスワーゲンID.4

フォルクスワーゲンは、大衆車メーカーから全方位の大規模メーカーに成長して、2018年の販売台数は3年連続世界第1位でした。

ビートルやゴルフ、ポロのような大衆車メーカーのイメージが強いですが、この20年間にアウディやポルシェ、ベントレーなど傘下に収めて、大規模自動車メーカーに成長しました。

●メルセデスベンツ

メルセデス・ベンツSクラス
メルセデス・ベンツSクラス

メルセデスベンツは、ダイムラー社が所有する乗用車および商用車の高級車ブランドです。ダイムラー社は、2019年販売台数では世界11位ですが、高価格帯のメルセデスベンツが売り上げに大きく貢献しています。

早くから高品質と安全性、高質感を有する高級車として圧倒的な支持を得て、今日のブランド力を築き上げました。

●BMW

BMW 5シリーズ
BMW 5シリーズ

航空機エンジンの製造を起源とするBMWは、伝統的にエンジンに強いこだわりを持ち、スポーティな高級車を主力とする自動車メーカーです。2000年以降、ミニとロールスロイスの2つの英国ブランドを傘下に収めました。

●アウディ

アウディE-tron スポーツバック
アウディE-tron スポーツバック

アウディは、フォルクスワーゲン傘下のプレミアムブランドです。メルセデス・ベンツ、BMWに続くドイツ高級車ブランドの御三家の一角ですが、その中ではモータースポーツや先進技術に対する取り組みに最も積極的なメーカーです。

●ポルシェ

ポルシェ・タイカン
ポルシェ・タイカン

ポルシェは、フォルクスワーゲン傘下の世界で最もメジャーなスポーツカーメーカーのひとつです。伝統の主力モデル911は、今もなおRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトと水平対向エンジンを採用している世界の名車です。

●PSA

プジョー208
プジョー208

欧州メーカーの中では、メジャーで高級車を得意とするドイツ車に比べて地味な大衆車中心のフランスのメーカーですが、独自の存在感を放っています。シトロエン、オペルを傘下に収めて世界トップテンを堅持しています。

2021年にFCAと合併予定、世界第4位のグループメーカーとなります。

●ルノー

ルノー・メガーヌ
ルノー・メガーヌ

ルノー・日産・三菱の3社連合の2018年の販売台数は、VWに続いて世界第2位でした。日本では比較的地味なルノーですが、AセグメントからEセグメントまで、大小のSUV、バスやトラックも生産するフルラインナップを揃えるメーカーです。

●FCA

ジープ・チェロキー
ジープ・チェロキー

フィアットには、イタリアの小型車メーカーのイメージが強いですが、フィアットを中心とするFCAは、イタリアの中小型自動車ブランドを完全に統括し、さらに米国のクライスラーとジープを加えた多彩なクルマづくりを行う一大グループです。

2021年にPSAと合併予定、世界第4位のグループメーカーとなります。

●GM

シボレー・コルベット
シボレー・コルベット

GMの2018年の販売台数は、世界第4位でした。かつては、1931年から2007年までの77年間、世界第1位の座を守り通した絶対王者でしたが、近年は経営危機にも直面し、状況を挽回する努力が続いています。

●フォード

フォード・マスタング・マッハE
フォード・マスタング・マッハE

フォード・モーターの2018年の販売台数は、世界第7位でした。フォードは「自動車の育ての親」ヘンリー・フォードが創立し、自動車黎明期と成長期を牽引した米国の自動車メーカーです。

今日の自動車産業の礎を築いたフォードですが、近年はGM同様経営危機にも直面して厳しい状況が続いています。

●ボルボ

ボルボXC40
ボルボXC40

ボルボといえば、古くから世界一安全なクルマと高く評価されています。現在は中国の吉利汽車の傘下ですが、かつての四角いボディからスタイリッシュなデザインへと変貌し、伝統の安全技術で独自性を発揮しています。


本章では、上記の海外自動車メーカー11社に加えてフェラーリ、ジャガー・ランドローバーなどメーカーの起源や成り立ち、代表的なモデルについて、それぞれ個別に解説します。

(Mr.ソラン)

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この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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