安心して出せる速度上限が高い
「あるいは。たとえばショックのカドを丸めるためにゴムブッシュをやわらかくすると、往々にしてその弊害がでます。ある手の入力への対策としてはすごく有効でも、ほかのところでは……というふうに。しっかり踏ん張っていてほしいところでぐにゃっとしたり。“グニャ感”ですね」
--ゴムで逃げるテは万能ではない、ということですね。
「そこへいくと、バン車の車体にはゴマカシがありません。ダイレクト感があるというか。おかしなガタガタやブルブルはないし、実際の速度と速度感がキレイに連動して変わります。オトシン(音と振動)環境に関していうと、バン車のそれは、単に“うるさい”といって斬って捨てていいようなものではないと思います」
--でも、バンはシートが安っぽかったりしますね。
「見た目は安くても、ヘンにこねくりまわした作りになっていないぶんスッキリしています。長時間体重がかかっていてもツブれにくいスポンジがクッションに使われていたりもして、だから、いいヤスモノ感といえます」
--んー。
「重たい荷物を運ぶためのクルマであるからには、重たい状態でちゃんと走れないといけません。つまり、それなりの駆動力が必要になります。ということで、バン車はトランスミッションのギア比の設定が低めです」
--最近の乗用車と違って、エンジン回転数の極端に低いところを使って巡航するような設定にはなっていない、ということですね。
「同じスピードで走っていても、乗用車よりもエンジンの回転数の高いところを使っているわけです。そこはトルク特性上余裕のある、おいしい領域で、したがって、積み荷が軽い場合は気持ちよく加速してくれます。レスポンスがいい。また、アクセルペダルを離すとしっかりエンジンブレーキがききます。“空走感”がない」
--そういうクルマだから運転しやすくて、だからついついトバしてしまうことにもなりかねないと。
「運転手にとって速度の管理がしやすいクルマになっている、ということです。絶対的な速さというよりは、安心して出せる速度の上限が高い。エンジンの特性に関しても、バン車はカタログ上の5psや10psの違いよりも低速トルク重視です。ガソリンエンジンでも、普段使うところでしっかり力が出るようになっています」
--はい。