80~90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、15代目のクラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。
バブル期の開発によりクオリティの底上げをしながらも、とりわけロイヤルシリーズで個性を欠いた先代。「ザ・クラウン」をキャッチコピーに、ふたたびクラウンらしさを目標としたのが、1995年発表の10代目です。
大きなカローラ的にボリューム感を持った先代から、モノコックボディを手に入れたロイヤルは一転、直線を多用した水平基調へシフト。面の作りもかなり硬質なもので、絞り込みを減らしたコーナーとともに、ガッチリした存在感を示します。
ショルダーには幅の広いラインが前後に伸ばされ、若干薄くなったように見えるボディとともに、8代目までの「らしさ」を再現したかのよう。硬い面質との組み合わせは、実に端正なイメージを提示します。
シンプルだったフロントグリルは、こちらも8代目までに見せたわかりやすい豪華さを再生。横長のリアランプも同様に、当時のイメージを復活させたかのように見えます。
「日本人の感性にフィットさせた」というインテリアは、先代の造形を継承しつつ、ボディに準じて水平基調へ。大ぶりのウッドパネルや面積を拡大したファブリックもまた、わかりやすい豪華さを表現します。
縦型のリアランプで個性を追求したマジェスタに対し、ロイヤルは若干時間を遡ることで独自の存在感を取り戻したかったようです。それ故全体のまとまりやフィニッシュはいいものの、しかしデザイン的な進化は見られません。
4年という短い周期ながら、着実な進化を継続してきたクラウンですが、この10代目前後には結構な迷いが見られます。技術が向上し、造形の自由度が飛躍的に上がることと、デザインの進化とは決して同義ではないことがよくわかるところです。
●主要諸元 クラウン 4ドアHT 3000ロイヤルサルーンG(4AT)
形式 E-JZS155
全長4820mm×全幅1760mm×全高1425mm
車両重量 1490kg
ホイールベース 2780mm
エンジン 2997cc 直列6気筒DOHC
出力 220ps/5600rpm 30.0kg-m/4000rpm(ネット値)
(すぎもと たかよし)