エクシーガtSはエクステリア、インテリアの特別装備も数々ありますが、tS最大のウリとも言えるのがサスペンション関連の装備。
B型tuned by STIや2.0GTユーザーからブレンボキャリパー装備の強い要望があったため、エクシーガtSにも採用されました。
エクステリア面だけでなく、7人乗りという重量を考慮すると、ワインディング等でストッピングパワーの不足を感じるユーザーも多いという事も採用の理由のようです。
ブレンボキャリパーはただポン付けすればいいと言うわけでは無く、特に元々設定の無いエクシーガではあらゆる部分の調整などが必要になります。
ブレンボキャリパー同様ユーザーからは18インチホイールも採用希望が多数寄せられましたが、元々ブレンボを収めるには17インチでは収める事は出来ないため、18インチ化は必然とも言えます。
ブレンボキャリパーを採用する事で実は一番STIを悩ませたのが、横滑り防止装置、VDC(ビークル ダイナミクス コントロール)のセッティングで、VDCは作動時にスロットルの制御だけでなく4輪個別のブレーキ制御を行う事から、制動力を高めたブレンボキャリパーを装着するとセッティングが変わって来ます。
カタログなどには大きくは取り上げられていませんが、実はエクシーガtSで一番工数のかかった部分だそうです。 安全装備のVDCですから、特にメーカー直系のSTIでは妥協を許さなかったのかもしれません。
7人乗りミニバンという性格上、乗員全員が快適に移動でき、かつスポーティな走りを両立させる専用チューニングのダンパー&サスペンション。日常使用においても硬すぎるサスペンションではドライバーは楽しめるかもしれませんが、セカンドシートやサードシートに座った乗員は快適とは言えません。
エクシーガtSは、そう言った点においても、スポーツ性と快適性、さらには多人数乗車という相反する条件が重なっている状況ですべてを高次元でバランスさせたダンパー、サスペンションは、重要なパーツとなります。
どの座席に座っても、しなやかな乗り心地を提供出来るのは、専用セッティングのダンパーだけでなく、フレキシブルシリーズと呼ばれる”逃がし”の部分を取り入れた、剛性アップパーツ群。
スポーツ走行において、剛性アップは必須条件とも言えますが、ただ突っ張るだけ、硬めるだけでは乗り心地は悪化します。
そこでSTIのトップガンである辰巳英治氏が考案したのが、タワーバー等で不必要な力の入力をピロボールジョイント等で逃がし、剛性が必要な方向には踏ん張る という、剛性アップをしつつ乗り心地を確保するというのがSTIのフレキシブルシリーズです。
エクシーガtSではフレキシブルタワーバー、フレキシブルドロースティフナー、フレキシブルサポートリヤの3点を採用しています。
もちろん剛性を上げても乗り心地等に影響しにくい部分には可動部分の無いパーツが使われており、STIサポートフロントはフロントクロスメンバーに追加する形で装着され、剛性をアップさせています。
サードシートでも快適な乗り心地を確保しつつ、コーナリングでのシャープなハンドリングに貢献するのがSTI製ピロボールブッシュ・リヤサスペンションリンク。
ラテラルリンク内側のラバーブッシュをピロボールに変更する事で、リヤサスペンションのフリクションロスを低減させる事で応答性が上がり”良く動く後ろ足”に変身するパーツ。キャンバー剛性向上にも役立つパーツです。
エンジン系はベース車両から手を加えられていませんが、フィーリングに拘ったと言われるSTIスポーツマフラーを装備し、心地よいボクサーサウンドを奏でます。ルックス的にもエクシーガのバンパー形状に合わせスラッシュカットされたマフラーエンドもスポーティな印象です。
エクシーガtSは足回りやボディワークを中心としたチューニングで、ベースモデルでもミニバンとしては動力性能の高い水平対向4気筒、DOHC AVCS インタークーラーターボを搭載している事もありますが、パワーユニットには一切手を加えられていません。
それは無闇にパワーを上げるのではなく、既にあるエクシーガGTのノーマルのポテンシャルを最大限に引出し、7人の乗員が快適に移動できる事を目的とされた為だと思われます。
エクシーガtSはエンジンスペックはそのままに、クルマを運転する事の楽しさや、気持ちよさをミニバンでも諦めない為に”シャシー馬力”を大幅に向上させたスーパーミニバンなのではないかと感じました。
(井元 貴幸)
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