【クルマはデザインだ!】SUVの実用性と流麗なクーペスタイルのいいとこ取り? アウディQ5 Sportbackのグッドルッキングなデザインとは?

■検証・クーペスタイルSUVのデザイン魅力

Q5・メイン
グリルやバンパーなどが専用になったスタイリング

定番のミッドサイズSUVである「Q5」のクーペ版として、7月の発売とともに高い人気を得ているアウディ「Q5 Sportback」。そのデザインの魅力はどこにあるのか、じっくり見てみましょう。

●ベース車の魅力を引き上げる

アウディは、セダンをはじめとして積極的にSportbackシリーズを展開していますが、同車もSUVとしてすでに3番目のSportbackとなります。いずれのシリーズも、例外なくスタイリッシュと評判なのは周知のとおりです。

セダンやSUVのルーフを下げてクーペ風にすればカッコよくなるに決まってる、と思われそうですが、それは半分正解で半分は早合点かもしれません。当然ですが、基本的なスタイルが優れていることがその前提だからです。

Q5・サイド
サイドビューがSportbackの最大の見所

たとえば、より幅広くフラットになった八角形のシングルフレーム。専用のドットタイプのグリルを真横から見ると、アウディのエンブレムがいちばん前に突き出ていて、そのフラットさがよく分かります。この押し出し感がSUVらしさのひとつの要素です。

また、「5」シリーズ特有の緩いカーブを描いたキャラクターラインも健在で、ボンネットの開口ラインに沿わせることで無理なく始まり、リアランプの上端まで実に自然に流れています。もちろん、その中で前後フェンダーの豊かな張りを巧妙に取り込んでいるのも秀逸。

よく見ると、わずかにネガ面を入れた広いショルダー面も凝っていますが、やはりキャラクターライン下の深い「彫り」が見どころ。もっとも深いところでは30mmはあろうかという段差を見ると、そのプレス技術への執念すら感じるところです。

Q5・サイド
カーブを描くキャラクターラインの堀の深さに注目

ショルダー面からスムーズにつながるリアハッチや一体型スポイラーも実に滑らか。また、ライセンスプレートランプやカメラを収めるため、上下2段構成としたリアパネルも合理的で、非常にスッキリしています。

●単純な公式があるわけではない

で、そうしたベースがあってのいよいよのクーペ化です。結果、Q5 Sportbackも、他のシリーズ同様、ある種のエレガントさや軽快さを手に入れており、人気の高さにも納得です。ただ1点、クーペ化については気になる点もあります。

それはサイドウインドウの形状で、後端の絞り方にホンの少しだけ「急な」印象があるのです。

ウインドウ上端はルーフに沿って自然に下りてきますが、ウインドウ下端もリアに向けて少しだけ持ち上がっています。そこが軽快感を得る要(かなめ)なのですが、若干尻つぼみ感があるのです。Q5のどっしりした安定感に対し、どこか不安定さが漂うような……。

Q5・リア
リアパネルの2段構成は機能性も反映する

これは、もしかしたらサイズに理由があるのかもしれません。A5などセダン系はともかく、背の高いSUVでは、たとえば「e-tron Sportback」のように全長が4900mmもあれば伸びやかさが勝るし、一方で「Q3 Sportback」では逆にコンパクトカーらしいまとまりがあります。

その点、Q5から15mm延ばしたとはいえ、4695mmのボディは微妙なサイズ感なのかも? もちろん、これは見る角度によっても印象が異なりますし、デザイン的に破綻しているわけでもありません。

それよりも、同じSpotrbackでも、ベース車によってその表現にはかなりの幅がある点が興味深いところです。単に「公式」を当てはめれば完成ということではなく、車種ごとの調整しろにカーデザインの奥行きがあるということです。

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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