スズキ・アルトがフルモデルチェンジ。時代に即した進化を遂げるも鈴木社長が「満足しない」わけ【週刊クルマのミライ】

■マイルドハイブリッド初採用でWLTCモード燃費は27.7km/Lを実現

●ハイブリッドの価格は約110万円~

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9代目となった新型アルトは基本4グレード。それぞれFFと4WDを用意する

スズキの軽自動車ラインナップにおけるベーシックであり、文字通りに礎を築いたモデルが「アルト」です。国内累計526万台という伝統のモデルが9代目にフルモデルチェンジを果たしました。

最大のトピックスは、マイルドハイブリッド仕様を用意したことでしょう。

システム自体はワゴンRやスペーシアでおなじみのものですが、車両重量700kg台と軽量なアルトに搭載することで、WLTCモード燃費で27.7km/L(FF車)という驚異的な燃費性能を実現しています。トランスミッションは全車CVTとなっていますが、これはハイブリッドの採用を考慮した結論ということです。

ホワイトルーフの2トーンボディカラーを用意するなどベーシックモデルでありながら、ユーザーの選択肢を増やしているのも新型アルトの特徴です。

結果的に、ガソリン車のスターティングプライスは94万3800円と従来並みですが、ハイブリッドでは109万7800円という価格になっています。アルトとしては少々高くなったという印象を受けます。

●カメラを使った先進安全性能も充実した

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マイルドハイブリッドはインテグレーテッドスタータージェネレーター(ISG)と12Vのリチウムイオン電池を使ったシステム

価格帯上昇の理由はハイブリッドを採用したことだけではありません。今回のフルモデルチェンジにあたり、全車にステレオカメラを軸とした先進安全機能「スズキセーフティサポート」を標準装備としています。夜間の歩行者までも検知する衝突被害軽減ブレーキ、踏み間違い防止機能など十分以上の性能といえます。

さらに、前席サイドエアバッグ、カーテンエアバッグを含めた6つのSRSエアバッグを、これまた全車に標準装備しています。安全意識も高いのが新型アルトというわけです。

オプションの全方位モニターを装着すれば、狭い道を走行中にすれ違うときなど自動的に左前方の様子をディスプレイに映し出す「すれ違い支援機能」や左右からの接近車両や歩行者を検知してブザーなどで知らせる「左右確認サポート機能(前後)」も備わります。

ビギナードライバーに選ばれることが多いベーシックモデルだからこその運転支援を搭載しているのです。

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インパネシフトなど基本骨格は従来を踏襲。トランスミッションは全車CVTとなる

そうした運転のしやすさには視界の広さやドライビングポジションの適正化といった要素も欠かせませんが、新型アルトは運転しやすい環境を考慮したコクピットになっているのもユーザーニーズに応えるものです。

その上で、500mlの紙パック飲料に対応したインパネドリンクホルダー、ティッシュボックスが収まるフロアコンソールトレーなど収納スペースについても最新のニーズに合わせてアップデートされています。

このように、軽自動車のベーシックモデルとして、確実に進化したのが新型アルトといえます。

●かつての47万円は現在の94万円に相当する

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ザ・ベーシックといった先代モデルから楕円をモチーフとした親しみやすいスタイリングへ変身した

マイルドハイブリッド仕様では新型R06D型エンジンを積むなどメカニズムも最新仕様として完成度を上げてきた新型アルトですが、装備の充実や環境性能の向上など時代ニーズに合わせるために価格が上昇していることは、スズキとしては良しとはしていません。

オンラインで開催された発表会では、同社の鈴木俊宏社長が初代モデルの「47万円アルト」というインパクトに対して「現在のアルトはまだまだやるべきことがある」と発言をしていたのが印象的です。

一方、かつての47万円アルトに近い仕様、つまりエアコンもパワーウインドウも、まして安全装備のないプリミティブな軽自動車を作るのであれば70万円くらいで可能かもしれないが、現代のニーズに合わせると94万円という価格になってしまうとも発言。

新型アルトはけっして高価になったたのではなく、初代の精神を守りつつ、先進安全装備など必要な機能をつけたときの最低価格のターゲットは維持しているというわけです。

電動化時代において製造から廃棄までのCO2排出量を考えると、マイルドハイブリッドの軽自動車というのは現時点での最適解ともいえます。

とはいえ、次世代アルトではEV化も視野に入れているはずです。はたして、完全電動化時代にふさわしいアルト像とは、どのようなものになるのでしょうか。最低限のバッテリー搭載量に留めた近距離専用EVといったクルマになっていくのかもしれません。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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