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■東京・お台場で行われている自動運転の実証実験。その車両に同乗してみた
最先端の自動運転はどこまで進んでいるのか? それを知るために、自動運転の実験車両に乗りに行ってきました。
実は、東京・お台場は自動車メーカーやサプライヤーの自動運転車両が多く走っているスポット。なぜなら、内閣府の旗振りのもとに戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)という国家プロジェクトがあり、その一環として東京臨海部(いわゆるお台場地区)周辺を舞台に自動運転車両の実証実験が行われているからです。
そのため、たとえばお台場地区の信号機には信号の情報(赤や青もしくは黄といった色のほか、あと何秒で信号が切り替わるという情報)を車両へ送る発信機が取り付けられています。実験車両はその信号を受け取ることで、一般道での自動運転には欠かせない信号の判断などをおこなうサポートとするわけです。
実際に市販されているセンサーだけを搭載して自動運転を成立させる車両があったり、タクシーとしての利用を想定して利用者がスマホで出発地と目的地を設定して自動運転で運ぶ車両もあったりと、自動運転実験車両のコンセプトはさまざま。
しかし、どれも基本的にはドライバーのサポートなしに、自らアクセル/ブレーキやハンドルを操作して危なげなく走り抜ける様子は未来感に満ち溢れたものでした。
ドライバーがハンドルを操作しないのに自分で車線変更し、交差点を曲がり、赤信号では止まって青になって安全を確認すると走りだす
…こうして文章にすると簡単なように感じるかもしれませんが、ドライバーが介入せずにおこなうのはとても難しいこと。
それを同乗して体感できるとは、まさに今そこにある未来、と言った様相です。リアルに感動しました。
●日本は自動運転最先端国
ところで、自動運転が世界でもっとも現実に近いところに来ている国はどこだかご存じでしょうか。
実は日本です。
クルマ好きなら、2018年に発売されたアウディ「A8」が特定の条件下で自動運転レベル3を可能にするハードウェアを搭載していながらも、法律の整備(自動運転を公道で走らせる認可)が得られずに、自動運転を断念したことを覚えている人もいるかもしれません。
その時は、世界のどこの国でも自動運転車の公道走行を認める法律がありませんでした。そんななか、世界で初めて自動運転車の公道走行を認める法律を整備したのが日本。
その結果、「Honda SENSING Elite」搭載のホンダ「レジェンド」が世界初の自動運転車両として発売されたのです。
●自動運転の分野で日本は遅れている、は誤解
自動運転の分野で日本は遅れている…そう思っている人は多いかもしれませんね。でもそれは誤解。日本はそのあたりの法整備で世界の先を走っていて、いま進めている自動運転に関する国際基準の制定でもリーダーを務めるほどです。
では、ここでクエスチョンです。
自動運転にはレベル1からレベル5までありますが、今回同乗することができた実証実験車両は、果たしてレベルいくつでしょうか? 参考までに「レベル3」以上が自動運転車両とされ、レジェンドは「レベル3」です。
実は、実験車両は「レベル2」。「レベル2」って普通のクルマの運転支援と同じ“レベル”なのでは?と感じた人もいるかもしれませんが、現段階での実験車両はレベル2なのです。
その理由は、走行に関してドライバーの「監視」が必要だから。
基本的にドライバーの操作が必要なくても、勝手に走って自ら交差点を曲がっても、ドライバーの監視が必要なうちは「レベル3」には上がれないのです。
ちなみにレベル3になるとドライバーの監視が必要なくなるので、レジェンドでは走行中にテレビやDVDを見たりスマホを操作しても違反にならないというわけ(レベル2でやると違法。また、ホンダではスマホ操作は推奨していない)。そのかわり、自動運転中の事故はドライバーではなく自動車メーカーの責任となります。
自動運転は「レベル3以上」と規定されているので、厳密に言うとオペレーターが監視している自動運転の実証実験車両は「自動運転」ではありません。
いっぽう、自動運転と呼べる車両は何を隠そう、現時点では世界で1台だけ。レジェンドは、公道で自動運転をおこなえる世界で唯一の車両なのです。
それを知ると「日本は自動運転で遅れている」なんていう人はいないでしょう。そもそも、自動運転車が公道を走っていいとされているのは日本だけなのですから。
●自動運転の車両が普及するのはいつ頃?
さて、今後どうなるのでしょう?
車両でいえば、レジェンドに続く国産の自動運転車両はしばらく出てこないかもしれません。ただし、ドイツ勢がさらに上を狙ってくるという噂もあります。
具体的には、レジェンドでは高速道路渋滞だけを対象として上限50km/hまでしか自動運転をおこなえませんが、作動範囲をさらに上へと広げてくると予想されます。だって、レジェンドと同じ水準の自動運転を実現しても、2番手では大々的にアピールできませんからね。
また、オーナーカーではなくタクシーなどで考えると、完全に自立というよりは、運転手は乗っていないけれど遠隔地でオペレーターが監視を行っていて、何かあった際にはクルマからオペレーターへ操作をバトンタッチするというのが近未来の現実的な線かもしれませんね。
ドライバーが運転席で寝ていてもクルマが目的地まで連れて行ってくれる。そんなクルマがオーナーカーとして手に入るのは、残念ながらまだまだ先の話となりそう。もしかすると私たちが生きている間に実現することはないかもしれません。
しかし、高速道路を走っている間、もしくは人が歩くより遅いほどの渋滞ならドライバーはテレビを見ていてもOK…そんな市販車の登場は、夢の話ではないかもしれません。
(文:工藤 貴宏/写真:小林 和久、SIP cafe)
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