600キロ走ってわかった!グッドイヤー・アイスナビ8は冬のあらゆる路面で安定した性能を発揮【GOOD YEAR ICE NAVI8試乗】

■ドライの高速道路から雪のワインディングまで安定した性能を発揮

冬の足音が聞こえるようになると、自動車メディアのなかでウインターカーライフの記事のボリュームがグッと増えてきます。そのなかでも大きなボリュームを占めるのが、ウインタータイヤの記事です。

走り
グッドイヤー初の左右非対称パターンデザインを採用したアイス・ナビ8はウインタータイヤとしての総合性能が高かった

ここ数年のウインタータイヤの記事で注目を浴びているのが、1年を通して使うことができるオールシーズンタイヤでしょう。このオールシーズンタイヤブームの火付け役となったのが、グッドイヤーの「ベクター4シーズンズハイブリッド」です。2017年に日本で発売が開始された「ベクター4シーズンズハイブリッド(当初の商品名はベクター4シーズンズ)」は、その使い勝手のよさからオールシーズンタイヤを代表する製品として認識されました。

一方、オールシーズンタイヤと並んで重要なモデルとなるのが、ウインタータイヤの本命となるスタッドレスタイヤです。

ちょっと考えればわかることなのですが、オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤのどちらもの性能を合わせ持つモデル、ということは、どちらのタイプのタイヤも作れる技術があってこそ開発できるタイヤです。ならばその技術をウインター寄りに舵を切ったスタッドレスタイヤの性能を確かめるべきだろう……。

ということで2021年2月、発売を同年夏に控えた新作スタッドレスタイヤ「ICE NAVI 8(アイス・ナビ・エイト)」を履いたプリウスで都内を出発、一路、志賀高原を目指しました。

●高速での腰砕け感は感じず、グリップ感もあり快適!

アイス・ナビ8 ドライ走り
ドライ路面でもしっかりとした手応えを持つアイス・ナビ8

一般道からすぐに首都高に入りました。試乗日が休日だったこともあり、道路はかなり空いていて順調なペースで走れます。首都高速はペースも速く、流れに乗って走るとそれなりにコーナーも速めの速度で進入することになるのですが、とくに腰砕けを感じるようなこともありません。正直、「今日の試乗はベクター4シーズンズハイブリッドだったっけ?」と思うくらいに、しっかりしたグリップを披露してくれます。

驚きのドライフィールを確かめるために、こぶし1つ分左右に素早く切ってみると、トレッド表面の柔らかさの感覚がわずかながら伝わってきます。この手応えは間違いなくスタッドレスタイヤのものですが、転舵速度を落とす(ゆっくりしたハンドルの動きにする)とその感触もなくなります。

高速道路を巡航していると、意外なほどに静粛性が高いことに気付かされます。スタッドレスタイヤは「ブーン」や「ビーン」といったノイズが耳につくことが多いのですが、「アイス・ナビ8」はあまりそうした音も気になりませんでした。

●2層のトレッド構造を持つからこそ発揮できるオンロード&ウインター性能

アイス・ナビ8 トレッド説明
トレッド各部にはさまざまな役割を持たせたデザインが採用されている

アイス・ナビ8」は、さまざまな技術を織り込んで設計されている新型スタッドレスタイヤですが、そのなかでオンロードの性能に大きく寄与しているのは、2層トレッドを採用した専用の構造プロファイル、ピッチ数の最適化などです。

タイヤのトレッドは何層かに分かれた構造をしていて、それぞれの層が異なった役目を持ち、それが複雑に関係し合っています。「アイス・ナビ8」のトレッド断面構造で注目したいのは、トレッド表面に使われているエキストラ・コンタクト・コンパウンド・プラスと高剛性ベースコンパウンドです。

このうちエキストラ・コンタクト・コンパウンド・プラスが雪や氷でのグリップ確保に大きな役割を担当。高剛性ベースコンパウンドがオンロードでのしっかり感を担当しています。

表層に使われるエキストラ・コンタクト・コンパウンド・プラスのように、柔らかいコンパウンドだけでトレッドを構成してしまえば、しっかり感に乏しいドライフィールとなりますし、高剛性ベースコンパウンドのように、しっかりした剛性を持つコンパウンドでは、ウインター性能を確保できません。

この部分を2層構造とすることで、スタッドレス性能を確保しつつ、オンロードでのしっかり感を実現しているのです。

また、タイヤはコンパウンドが動き発熱することでグリップを生み出しますが、過度な発熱は摩耗を促進し、燃費も悪化させます。「アイス・ナビ8」はそうした面でも進化し、従来型(アイス・ナビ7)に比べ耐摩耗性で3%、燃費に大きく影響する転がり抵抗で2%の向上が図れています。また、ブロックのピッチ数を従来の56から68に変更し、ノイズ低減に役立っています。

アイス・ナビ8トレッド断面
トレッドのコンパウンドは2層構造と、雪道グリップと剛性を確保
アイス・ナビ8面圧分布
トレッドに掛かる圧力を分散させることで、長持ち性能も向上

長野県内に入ってから高速道路を降りましたが、雪は降っておらず路面もドライです。

長野県内のクルマならば冬季はスタッドレスタイヤを履いているのが当たり前でしょう。しかし、東京からやってくると「なんだ降っていなんだ。だったら夏タイヤでもよかったな」と思う人もいるでしょう。

しかし、それは間違いです。なぜなら気温(路面温度)が低いからです。サマータイヤは冬の低温時にはコンパウンドが固くなり、十分な性能が出ないのです。一般に気温が7度を切ったら、夏タイヤよりもスタッドレスタイヤのほうがドライ性能も高いといわれています。試乗時は0度付近だったと思いますが、低温での十分なドライ性能も確認できました。

●雪をグッとつかむ感覚のブレーキ性能

アイス・ナビ8 雪 走り
雪道でのグリップにも満足。安全性の高さを実感できた

注目のスノー性能は、志賀高原周辺の雪道で行いました。通常ならばスキー客の自家用車はもちろん、スキーバスなども多く通行し路面が荒れるところですが、新型コロナウイルス蔓延の影響もあり、道路はどこもきれいな圧雪路面で、テストフィールドとしてはかなりベストな条件です。

スタッドレスタイヤについて期待する性能をアンケート調査すると、必ず上位に挙げられるのがブレーキ性能。テストコースではないので、何km/hで何mで停止した…といった数値は得られていませんが、急ブレーキからの完全停止では、最初のブレーキフィールが非常にいい感触で、グッと雪をつかんでノーズが沈み込むような減速感があります。

この最初の減速感がないとブレーキが効いている実感が湧かず不安感がありますが、しっかりと減速してくれるので安心してブレーキングできます。ABS領域に入ってからも減速感は失われず、最終的にギュッと停止してくれます。速度を調整するためのブレーキングでも、調整はしやすく安易にABS領域に入ってしまうようなことも起きずに運転しやすい印象でした。

北海道に見られるようなテカテカツルツルのアイスバーンこそありませんが、コーナーなどはそれなりに磨かれた感じの路面です。そうした厳しい条件であってもグリップ感がつねに保たれていました。

アイス・ナビ8ブレーキ
停止するような強いブレーキから、減速のためのブレーキまで扱い安い減速性能を発揮

●左右非対称パターン「アシメトリックNAVIパターン」を採用

今回試乗した「アイス・ナビ8」は、グッドイヤーのスタッドレスタイヤとしては初の左右非対称パターン「アシメトリックNAVIパターン」を採用しています。トレッドのアウト側は剛性の高いパターンとすることで、コーナリング時の操縦安定性を向上。

トレッド面において溝やサイプなど以外の部位をランド(陸地の意味)と呼びますが、「アイス・ナビ8」ではこのランド部分を従来型のアイス・ナビ7よりも2%アップし、グリップ向上をねらっています。

また、多方向にラグ溝やスロットを配置し氷上でのひっかき効果を発揮する「マルチ・ディレクショナル・エッジ」、ジグザグラグ溝による雪柱せん断力を発揮する「バイティング・スノーデザイン」、4本のストレートグルーブによる排水性を向上した「アクア・スプラッシュ・グルーブ」、エッジ効果を高め装着初期から氷上性能を確保する「イニシャル・エッジ・デザイン」、氷上でのブロックの倒れ込みを防止する「ウルトラNAVIブレード」、新品時からエッジ効果を発揮する「エフィシェントホール」などが採用されています。

新たに採用されたコンパウンド(トレッドゴム)は、極小分散シリカや柔軟性能を持続させる軟化剤を用いた「エキストラ・コンタクト・コンパウンド・プラス」と呼ばれるもので、路面への密着性を向上しています。

ウルトラNAVIブレード
ウルトラNAVIブレードと呼ばれるサイプ構造を採用することでブロックの倒れ込みを防止しながらエッジ成分を確保
エキストラ・コンタクト・コンパウンド・プラス
シリカのサイズを極小化するとともに軟化剤の採用で、氷上路面への密着性を向上

発進では特に気を使う必要はありません。もちろん、アクセルを急に踏み込むような発進の仕方をすれば、TRC(トラクションコントロール)が介入してきますが、普通に発進するぶんには、夏タイヤと同じようにブレーキペダルを離し、クリープでクルマが動き出してからアクセルを踏む込めばなにごともなかったように発進します。クリープでは前進できない少し登り勾配になっているような場所でもTRCを機能させずに発進できました。

アイス・ナビ8 サイドウォール
最近のグッドイヤータイヤのサイドウォールデザインは、商品名よりも「GOOD YEAR」のブランド名を強調するタイプに変更されてきている

流すように走っている限り、コーナリングに関しては特に不安感はありません。ワインディングでの安定感は十分に高いもので、先代となるアイス・ナビ7に比べてよりしっかりした手応えがあるものでした。もちろん速度を上げていくとアウト側に膨らんで行きますが、アクセルを戻せばスムーズにラインを戻します。

VSC(車両安定性制御)&TRCをオフにして下りのコーナーでブレーキを強めに踏み、荷重をフロントタイヤに移動させてからステアリングを切り込んでいきます。リヤの荷重が減少しているのでリヤタイヤは滑りやすい状況となっていますが、グリップが失われることはなくコーナリングできます。

さらに条件を厳しくしていくとリヤタイヤが滑るような動きになりますが、滑り出しは素直でその感覚もつかみやすいものです。サマータイヤ、スタッドレスタイヤに限らず、低ミュー時に苦手なのは舵角の大きなコーナリングですが、Uターンをするような状況でもかなりしっかりしたグリップ感があります。フル転舵に近い状態からアクセルを踏んでいっても必要十分なトラクションを発揮しつつ、クルマが向きを変えてくれます。

アイス・ナビ8 雪 走り2
コーナリング時のグリップ感も十分。無理に滑らせテストしたが、滑り出しもわかりやすい

志賀高原での試乗を終え、高速道路に向かう途中の一般道では除雪された雪が解けて流れ出し、ウエット路面となっている区間も存在しましたが、ウエット時も安心して走れる感覚です。排水性の良さなどは、轍に水が溜まっているような場所でないと確認はしづらいですが、通常の雨ならば十分な性能を確保しているといえるでしょう。

アイス・ナビ8 ウエット走り
深いウエットではないが、ウエット路面でも不安感は一切ない走りを披露してくれた

●アイス・ナビ8はオールマイティなスタッドレスタイヤ

全行程600kmを超える試乗で感じたのは、「アイス・ナビ8」はじつにオールマイティで守備範囲の広いタイヤであるということです。降雪地帯で雪道や凍結路面を安心して走りたい人はもちろん、非降雪地帯に居住し、ウインタースポーツを楽しむためにスキー場などに出かけるなど、さまざまな路面で高い性能が欲しい人にとっても、満足できる完成度を持つタイヤだといえます。

アイス・ナビ8 外観
アイス・ナビシリーズの第8弾として2021年から発売が開始されたICE NAVI8

(文:諸星 陽一/写真:小林 和久)

≪アイス・ナビ8の詳細についてはこちら≫
グッドイヤーICE NAVI8公式ページ

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この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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