チューブレスを生み出し、スタッドレスやランフラットを先駆けたグッドイヤーが125周年! 126年目の2024年登場新タイヤに試乗してみた

■新しいウルトラハイパフォーマンスタイヤとオフロードタイヤが日本上陸間近

●マレーシアで125周年記念イベントを盛大に開催!

1898年にアメリカ・オハイオ州で創業され、今年で創業125周年を迎えたグッドイヤー。

それを記念し、アジア・パシフィック地域を対象に「グッドイヤー125年の歩み」と題したイベントがマレーシア・クアラルンプールで開催されました。その模様をお届けします。

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イベントはマレーシアの首都、クアラルンプールで開催されました

グッドイヤーは創業からわずか数週間後に馬車と自転車用タイヤの生産を開始。その1年後には、自動車用タイヤも手がけるようになります。それ以来、常に革新的な技術を次々に送り出してきました。

そう、グッドイヤーの125年は、挑戦に彩られた歴史でもあるのです。

たとえば、1903年には初めてチューブレスタイヤの特許を取得し、34年にはスタッドレスタイヤ、38年にはランフラットタイヤの先駆けとも言える安全タイヤを発表。モータリゼーションの発展に伴い、自動車の足元を支え続けてきました。

カーボンフリーの実現のため、タイヤの素材をサステナブルなものに置換中。その割合を90%まで高めたデモタイヤがこちら。
カーボンフリーの実現のため、タイヤの素材をサステナブルなものに置換中。その割合を90%まで高めたデモタイヤがこちら

そんなグッドイヤーが最近、力を入れているのが「未来のモビリティ社会」の実現です。

「Better Future(ベターフューチャー)」、つまりより良い未来をコミットメントとして掲げ、そのためにさまざまな技術開発を行っています。

そうした取り組みの一環として、グッドイヤーは2030年までに100%サステナブルな素材でメンテナンスフリーのタイヤを実現することを宣言。今回のイベントでは90%サステナブル素材で作られたというデモタイヤが展示され、着々と目標に向けた開発が進んでいる様子が伺えました。

そんなグッドイヤーにとって、アジア・パシフィック地域は重要なマーケットになっているようです。我が日本市場はもちろんのことですが、成長著しい中国/インド市場を抱えているからです。同地域を統括するナサニエル・マダラン社長はステージに登壇し、約300人の関係者と約100人の報道関係者を前にして次のように語りました。

グッドイヤーのアジア・パシフィック地域社長のナサニエル・マダラン氏。
グッドイヤーのアジア・パシフィック地域社長のナサニエル・マダラン氏。

「アジア・パシフィック地域は、世界最大の自動車市場の一つとして台頭してきており、まだまだ成長の可能性を秘めています。グッドイヤーの革新的精神と卓越性への異様により、グッドイヤーはモビリティ革新の中心に身を置き、お客様やイノベーターと密接に協力しながら、輸送業界を変革していきます」

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アジア・パシフィック地域に投入される4本の新タイヤ。そのうち2本が日本でも発売予定

マダラン社長のスピーチの後は、同地域に投入される新しいタイヤが4種類も発表されました。UHP(ウルトラハイパフォーマンス)系タイヤの「イーグルF1アシメトリック6」、プレミアム4×4オフロードタイヤの「ラングラー デュラトラックRT」、EV(電気自動車)向けの「エレクトリックドライブ」、ミッドパッセンジャー向けのコンフォートタイヤ「アシュアランスマックスガード」です。

そのうち、アシメトリック6とデュラトラックRTは、2024年の日本発売が決定しているとのこと。記念イベントに引き続いて開催された試乗会でテストすることができたので、その印象もご報告したいと思います。

●グリップ&レスポンスが増した「イーグルF1アシメトリック6」

グッドイヤーはモータースポーツとの関わりも古く、創業から3年後にはデトロイトで開催されたレースにかのヘンリー・フォードが参戦した際、タイヤを供給して初勝利を達成。それ以来、世界のレースで活躍を続け、特にF1グランプリでは368勝というダントツの勝利数を挙げており、その記録はいまだに破られていません。

そうしたモータースポーツ活動で培った技術も投入された、グッドイヤーのハイパフォーマンス系タイヤのブランドが「イーグルF1」です。

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イーグルF1アシメトリック6

イーグルF1には現在、4種類のタイヤがラインナップしています。ポルシェ・カイエンなどハイパフォーマンスSUV向けの「アシメトリック3 SUV」、気軽に走りを楽しみたいエントリーユーザー向けの「スポーツ」、ハードなサーキット走行にも対応するフラッグシップ「スーパースポーツ」、そしてグリップ性能と快適性を高次元で両立した「アシメトリック5」です。

今回ご紹介するアシメトリック6は、その名前からもおわかりのとおり、アシメトリック5の後継モデルとなります。

アシメトリック6の進化のポイントは主に3つ。ひとつめは「ハンドリング性能の向上」で、ドライ・コンタクト・プラス・テクノロジーの投入により、急舵角でも高いグリップとレスポンスが得られるようになりました。

ふたつめは「ブレーキ性能の向上」で、新コンパウンドの採用によってウェット路面での制動距離が大幅に短縮されました。そしてみっつめが「静粛性の向上」で、トレッドパターンの最適化によりロードノイズが低減しました。

負荷の変動に応じて、接地形状を変える技術でドライグリップを向上
負荷の変動に応じて、接地形状を変える技術でドライグリップを向上
面取りされた溝は静粛性を高める効果があります
面取りされた溝は静粛性を高める効果があります

さぁ、試乗です。コースは、かつてF1やスーパーGTも開催されたことのあるセパンサーキット。思いっきり走るぞ!と意気込んでみたものの、助手席には監視役(?)のインストラクターが同乗し、厳しい速度制限も課されたため、アシメトリック6がもっているポテンシャルを存分に試す…というわけにはいきませんでした(そもそも、筆者にはそんな運転技術もありませんが…)。

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大きく回り込むようなコーナーでは、ステアリングの切り始めのレスポンスの良さが感じられました

そんな状況でも実感できたのが、進化ポイントとして挙げられていた「急舵角でのレスポンスの良さ」。ストレート後の急なコーナーでハンドルを切った際も、タイヤはカチッとした反応を見せてくれるのが印象的でした。

よりハイグリップを求めるユーザーのためにはスーパースポーツも用意されていますが、ウェット性能や静粛性も含めたトータルバランスの良さを考えると、アシメトリック6はより多くのユーザーから受け入れられるはずの1本。日本で発売された際には、ぜひ一般道でも試乗してみたいと思いました。

●ゴツゴツなパターンが悪路で頼もしい「ラングラー デュラトラックRT」

ラングラー デュラトラックRT
ラングラー デュラトラックRT

もう1本のニュータイヤ、「ラングラー デュラトラックRT」の試乗の舞台は、一転して特設オフロードコースとなりました。

前モデルのデュラトラックからトレッドパターンが一新されたことにより、走破性能が大幅に向上したとのことですが、その効果が如実に感じられたのがヒルクライムです。

運転席からはまるで直角にそそり立った壁のように見える急坂(実際は30度くらい?)を登るのですが、ゆっくりと、しかし着実にタイヤが路面をとらえているのを感じながらクリアすることができたのには驚きました。

ショルダー部までゴツゴツしたブロックが回り込んだデザインはファッション性も高く、ドレスアップ効果も高そうな1本です。

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一新されたトレッドパターンにより、ダート路面でのトラクション性能がアップ
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アゲ系のクルマに履かせると、デュラトラックRTのタフな見た目がベストマッチ

イーグルF1アシメトリック6とラングラー デュラトラックRT、どちらも2024年初頭という日本発売が楽しみになってきました。


●日本発売未定というのが残念!な2本もご紹介

日本での発売は未定ですが、「アシュアランスマックスガード」にも試乗することができました。

アシュアランス マックスガード
アシュアランス マックスガード

新コンパウンドを配合した「アクティブグリップ・テクノロジー」によるウェットブレーキ性能の向上、2層構造(デュラガード・テクノロジー)の採用による路面からの耐衝撃性能の向上がポイントとなっています。

実際に濡れた路面で急ブレーキを試してみましたが、挙動を乱すことなくギュギュッと安定してクルマを止めることができました。

ウェット路面でのブレーキテストでは、安定したグリップを発揮
ウェット路面でのブレーキテストでは、安定したグリップを発揮

このアシュアランスマックスガードはコンフォートタイヤのカテゴリーに属するのですが、日本では同じカテゴリーに「エフィシエントグリップ」シリーズがすでに存在するということもあり、日本発売は未定とのことです。

●EV専用タイヤ「エレクトリックドライブ」は車重の重さに対応

エレクトリックドライブ
エレクトリックドライブ

「エレクトリックドライブ」は、車重が重いEVに対応する設計が施されています。それだけでなく、EVで重要となる静粛性能を高めるべく、トレッドパターンの最適化によりロードノイズを低減。

また、特にウェットでのグリップ性能を高めているほか、松ヤニを用いたコンパウンドの採用によってトラクション性能も向上してます。ユニークなのは、空力性能も考慮されていること。サイドウォールのデザインがツルっとして見えるのは空気抵抗低減のためで、EVの航続距離を少しでも伸ばすための工夫というわけです。

サイドウォールには、充電スタンドのマークも入っています
サイドウォールには、充電スタンドのマークも入っています

最近、日本でもEVのラインナップが徐々に充実してきており、いよいよEV普及前夜といった印象があります。そんな状況ですから、エレクトリックドライブの日本発売にもぜひ期待したいところです。

(文:長野達郎)