新型シビックの1.5L直噴VTECターボは、CVTもMTモデルもスポーツカーのような痛快な加速が楽しめる

■ホンダらしいスポーティさはタイプRでなくても十分に伝わってくる

11代目を数えるホンダシビックは、先代と同様に若い層からの支持も多く集めているようです。

以前お伝えしたように、初期受注の約1ヵ月で20代の購入層は23.9%と、22.2%の50代を若干上回っています。また、6MTの比率は、35.1%。最近の国産車の中でもかなり高く、しかもタイプRのようなスポーツグレードでないにも関わらず、比較的多くの人がMTを選択しています。

ホンダ シビック
新型ホンダ・シビックの走行シーン

試乗したのは、6速MTとCVTの両トランスミッション。現時点でのエンジンは、1.5Lガソリンターボのみで、最高出力182PS/6000rpm・最大トルク240Nm/1700-4500rpmというスペック。ホンダは、2.4LのNAエンジン並の低速トルクを誇るとしています。なお、CVTはCVT容量の拡大により、先代よりも20Nm増強されています。

ホンダ・シビック
こちらは6MTモデル

実際の走りは、期待を裏切らないトルクフルな発進加速が可能。パーシャル域からの分厚いトルクに加えて、過給が始まるとスポーティモデルと表現できる伸びやかな加速も披露してくれます。

シビック6MT
意外にも他車に比べてマニュアル比率が高いというシビック
シビックCVT
シビックに搭載される技ありのCVT

CVTには、全開加速ステップアップシフトが盛り込まれ、ストレスの少ない加速を引き出せるのはもちろん、ブレーキング時には、ステップダウンシフト制御によりエンジン回転を保ったまま段階的にシフトチェンジがされます。

さらに、コーナーでは横Gを検知することで、エンジン回転を高く保ったままコーナー出口で素早い加速ができるなど、ドライバーの意図に沿ったリズミカルな加減速が堪能できます。

CVTには「SPORT」「NORMAL」、省燃費モードの「ECON」の走行モードが設定されていて、ストップ&ゴーの多い街中であれば「ECON」でも必要十分。「SPORT」にすれば、山岳路や高速道路の合流時、追い越し時でさらにストレスフリーな加速フィールが得られます。

ホンダ・シビック
上級グレードの「EX(MT)」の走行シーン

また、ショートストローク化された6MTは、カチッとしたシフトフィールが美点で、MT派を満足させる感触といえるでしょう。クラッチペダルは重すぎず、毎日の足としても躊躇なく使える相棒になるはず。いずれのトランスミッションにしても速さは想像以上に実感できます。

シビックのエンジン
シビックに搭載される1.5L VTECターボエンジンのパワー&トルクは182ps/240Nm

新型シビックには、ほかにも高い静粛性という美点もあります。

内燃機関仕様の大きな音・振動の原因であるエンジンの静粛性が向上したことに加えて、エンジンマウントやトルクロッドマウントなどに手を入れたことで、エンジンコンパートメント由来の共振音を抑制した効果も感じられます。

さらに、ボディパネルの振動抑制や吸音材、遮音材(スプレー式発泡ウレタンフォームや遮音型フロアカーペットなど)の最適配置により、ロードノイズが低減され、音・振動面では不利な後席でも比較的静かなのが印象的。

シビックのコクピット
シビックのコクピット

逆に少し気になったのは、硬めの乗り心地。とくに荒れた路面では、左右に揺すぶられる感覚が速度域を問わず顔を出すのと、大きめの段差を踏み越えた際の後席は、大きな上下振動を伴います。

個体差もあるかと思われますが、MT仕様よりもCVT仕様の方がそうした傾向が強く、CVTと比べるとMTの方がよりフラットライドな乗り味であったのは少し意外でした。

ホンダ シビック
新型ホンダ・シビックの走行シーン

ボディ自体の剛性感はかなり高いように伝わってくるので、タイヤも含めた足まわりの熟成がさらに進めば、乗り味の面では文句なしといえそうです。また、全長4550×全幅1800×全高1415mmというボディサイズは、マンションなどの幅に制限のある駐車場でも入庫できるのは大歓迎という方も多いはず。しっかり日本市場に配慮されているのが伝わってきます。

シビックのタイヤ&ホイール
235/40R18サイズのタイヤを履く

一方で、ホンダの開発陣がベンチマークにしたという、現行フォルクスワーゲン・ゴルフ(ゴルフ8)のサイズは、全長4295×全幅1790×全高1475mm。全長はじつに255mmも新型シビックの方が長くなっています。

シビックは、CセグメントというよりもC/Dセグメントという長さで、驚くほど広いリヤシートやラゲッジスペースを享受できます。その分、小回り性能はもう少しという印象で、最小回転半径はゴルフの5.1mに対して、シビックは5.7mとかなり大きくなっています。

実際に、狭い道を曲がったり、Uターンしたりする際は、訴求ポイントである前方視界の良さを実感できる一方で、「見えているのに、曲がらない」と感じることも少しありました。

ホンダ・シビック
CVTモデルの走行イメージ

こうした点はあるものの、ホンダらしい爽快なパワーフィール、スポーツカーのようなフットワーク、そして高い静粛性など、世界で戦うグローバルモデルとして一級品といえる素質を備えているのは、間違いありません。

【SPECIFICATIONS】
車名:HONDA シビック LX/EX
ボディサイズ:全長4550mm×全幅1800mm×全高1415mm
ホイールベース:2735mm
トレッド:F1535mm/R1565mm
最低地上高:0.135m
車両重量:1360kg(LX/CVT)/1330kg(LX/6MT) /1370kg(EX/CVT)/1340kg(EX/6MT)
エンジン:L15C 水冷直列4気筒 横置 VTEC TURBO
エンジン排気量:1496cc
ボア×ストローク:73.0mm×98.4mm
圧縮比:10.3
最高出力:134kW(182ps)/6000rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1700-4500rpm
トランスミッション:CVT/6MT
駆動方式:FF
乗車定員:5名
サスペンション F/R:マクファーソン式/マルチリンク式
ブレーキ F/R:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ F/R共:235/40R18 95Y
燃料消費率 WLTCモード:16.3km/L
車両本体価格(税込):3,190,000円(LX CVT/6MT)/3,539,800円(EX CVT/6MT)

(文:塚田 勝弘/写真:前田 惠介・小林 和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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