実用や機能性の高さを備えながら、最新の空力ボディに挑戦した上級セダン「VW パサート(3代目)」【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80〜90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第16回は、庶民の足として質実剛健を踏まえながら、空力を追求した最新ボディに挑戦した上級セダン・ワゴンに太鼓判です。

■高い居住性に空力ボディをセット

passat・ワゴン
機能性と実用性を追求したセダン・ワゴンボディと、80年代らしいリアパネル

2代目ゴルフやジェッタなど、販売的には安定しながらも商品性としての現代化に遅れをとっていたVW。1988年、サンタナとの統合など、同社の最上級セダンとしてまったく新しいスタートを切ったのが、3代目のパサートです。

本格的に空力を意識したボディは徹底したフラッシュサーフェス化を図り、ビッグキャビンを載せながらも、0.29という高いCd値を獲得。ショートノーズが際立つウエッジシェイプにより、トランク容量も群を抜く広さを実現しました。

特徴的なグリルレスのフロントフェイスにより、その空力ボディは面一化がより強調され、全身張りのあるパネルは高い質感を生み出します。また、そこに引かれる細いキャラクターラインが上質な緊張感となっているのも見事。

passat・メイン
空力を意識したウエッジシェイプにフラッシュサーフェス化が徹底されたボディ

前後バンパーに備わる大型のプロテクターと同じ太さのサイドモールがボディを1周することで、大きなボディに凝縮感を表現。ブラックガーニッシュと一体になったリアランプは80年代の定番ですが、最上級車としてパーツの質の高さも光ります。

大きなキャビンをストレートに生かした「ヴァリアント」は、奇をてらうことなく広大なガラスエリアを持つワゴンボディとし、合理性と機能性の高さの見本となります。それが、冷徹にならず、清潔感のある美しさに結びついているのが見所。

■VWデザインの転換期

passat・サイド
80年代後半を迎えいよいよ力を付けてきた社内デザインセンターによる新しいスタイル

インテリアでは、メーター部分とセンターコンソールを一体化するやり方もまた定番ですが、より緻密で高質な見せ方が上級車たるところ。縦型のパッドで構成されたステアリングホイールが、当時の先進感を表現します。

大衆車メーカーとして、合理性とコスト管理の狭間にあったVWが、スタイリングや質感においても他社を先行しようという意志を初めて見せたのが、この3代目パサートだと筆者には思えます。

ジウジアーロなどによるヒット作を経た80年代後半、いよいよ力を発揮し始めた社内デザインセンター。大胆な造形を示した3代目パサートは、しかしそれでもどこかに「庶民のためのクルマ」としての落ち着きが感じられるのが出色です。

●主要諸元 VW パサートセダン 1.8T (5AT)
全長4680mm×全幅1740mm×全高1460mm
車両重量 1410kg
ホイールベース 2705mm
エンジン 1780cc 直列4気筒DOHC 5バルブターボ
出力 150ps/5700rpm 21.4kg-m/1750rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし

すぎもと たかよし 近影
東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。