ホンダの旗艦「レジェンド」を公道試乗。価格680万円の走り味とは?

 

プラグイン(外部充電)を持たないハイブリッドカーですから、バッテリーは減速回生により充電する仕組みですが、モーターはアシストではなく、積極的にEVモードで走ろうとします。つまり、リチウムイオン電池が十分に充電されている状態であれば、発進時はリアのモーターだけで動き出します。 

後輪駆動、しかも高レスポンスで振動知らずのモーターですから、その発進マナーはプレステージカーにふさわしいもの。この感覚は内燃機関をメインとした高級車では味わえません。速度が出てくると、後輪駆動モーター周りからのノイズも少々室内に入ってきますが、タウンスピードであれば、 圧倒的な高級感が味わえます。

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本来、SH-AWDとはスーパーハンドリングに由来する名前ですし、左右独立駆動モーターによるトルクベクタリングがヨーを自在にコントロールすることで実現する異次元のコーナリング性能や安定性を実現するための最新テクノロジーです。

しかし、レジェンドを運転するときに、そうした黒子の部分を引き出すような走らせ方は似合いません。あくまでも知らぬ間にサポートしてくれているというくらいでドライビングすることがレジェンドらしさを引き出せるといえそうです。

ヘッドアップディスプレイにSH-AWDが作動する様子を写していると、交差点を曲がるくらいの速度域でもリヤ外輪を駆動、内輪でエネルギー回生するといった具合に、常にドライビング・アシストをしている様子は確認できますが、あくまでも裏方として、それによる挙動変化を感じさせない味付けとなっています。

3.5リッターエンジンと3つのモーターによるシステム最高出力は281kW(382PS)もありますから、あえてSH-AWDの効果がわかりやすいように動かそうとすると、すぐに法定速度を超えてしまいますし、2t近い車重からいっても、振り回して楽しむというのは現実的ではないといえそう。

日常域で、ハイテクを意識せずに乗っている中で、ステアリングに対してクルマがオン・ザ・レール感覚で曲がっていくなど、知らぬ間にSH-AWDの恩恵を受けているといったスタイルが、適切なレジェンドの味わい方といえそうです。 

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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