自伝的・爺ぃの独り言・06 星島 浩 <軽の次はEVかPHVか>

【MONODAY TALK by 星島浩】 古い話を年代順に書くばかりでは私もしんどいし、読者諸氏にも飽きられる。ちょいちょい最新の話題を採り上げなくっちゃ。

 ところで茨城の隠居小屋へ通うようになって20年。水戸と笠間に接し、常陸大宮に近い人口2万人足らずの城里町だが、栃木県寄りの村を幾つか合併して面積は広い。近所はおよそ兼業農家で、米、野菜、梨、葡萄、リンゴ、栗など産出。隠居小屋は茶畑に囲まれている。

 公共交通機関がないに等しく、小学校は歩いて通えるが、中、高校は自転車通学が増え、大学に入るとバイクや軽乗用車に代わる。鉄道を利用する場合も、最寄り駅までの交通手段が必要だ。

 町のモータリゼーションは20年間でかなり変化した。

 バブル崩壊前は一家にミドルクラスの乗用車かミニバンが1台、軽ワゴンが1台だったらしいのに、今は登録車に代わって軽乗用車を増やす家が目立つ。息子や娘が結婚して敷地内に家屋を建て、孫が免許年齢に達した世帯もあるから、軽自動車4台保有も珍しくない。

 ミニバンが減った理由はファミリードライブを楽しんでいた時期が終わったせいもある。登録車が軽=届出車に代わったのは言うまでもなく、維持費ゆえだ。都心などと違い事実上車庫規制がなく、駐車料金もタダ同然となると、あとは税金、保険料、サービス料金が安く、燃費に優れた車が好まれる。この調子だとまだ増えそうで、今ごろ軽自動車が全国で2世帯に1台普及したと聞いてもピンとこない。

 因みに普及率が最も高いのは鳥取県で100世帯中98世帯が軽自動車を保有。佐賀、島根、長野、山形県が続く。いずれも都市部が小さい、公共交通機関が乏しい、高速道路も少ないことが共通点に挙げられる。一方、東京都を筆頭に、神奈川、大阪、埼玉、千葉など、人口が密集、公共交通機関が発達している都府県では、ほとんど一家に1台に限られるから、軽自動車普及率が低い。

 東京都心では1台保有するのも容易ではない。駐車料金だけで年間50万円支出する例が少なくないし、首都高を含む高速道路通行料も均せば年10万円近いかしら。相対的には税・保険、燃料代の占める割合が低く、世間体を気にすることもあって軽乗用車を選ばない。

 プリウスなどハイブリッド(HV)車が多いのも、燃料代節約より、環境対応性でクルマ選びのインテリジェンスを重視する姿勢の表れだろう。

 ミドルサイズの標準的セダン&ワゴンを年間7000km前後走らせ、ガソリン代を年10万円とし、プリウスαが6万円で済んだとしても差益は年4万円に過ぎない。これにシステムバッテリー交換または劣化対策に年1〜2万円上乗せすると、残る2〜3万円でハイブリッド代をチャラにするには10年以上かかるから、必ずしも経済的に有利と考えてはいまい。

 その分野に詳しい仲間に中古車市場人気を訊いたが、まだ確かなことは言えない段階だと。総じてHV評価はわるくないようだが、年式だけで判断してはいけない。バッテリーの充・放電能力に留意したいし、モデルチェンジの都度、搭載場所やサイズを改めていて、古くなればなるほど部品調達に時日がかかる上、部品価格が高いためだ。

 初代プリウスはほとんど出回らず、大幅改造された2代目との落差が大きいとか。新車で買った人はエコカー減税と購入補助金制度がありがたかったが、中古車に恩恵はない。閑話休題。

 我が町の軽自動車普及率は?—-まず正確に把握するのが難しい。

 一家に軽乗用車4台と言っても1世帯とは限らず。中には勤め先の会社や団体のクルマを利用しているケースもあるらしい。

 なんて考えていたら、つい最近、リーフに興味を示す隣人が隠居小屋にやってきた—-「え? こんな田舎でEVかね」と虚を突かれたが、聞けば「通勤だって往復30kmだからEVでもOK。銀行やスーパーなど家内が使うとしても途中で充電するほど走らない。ならば増築するに当たり「屋内に駐めて、バッテリーを家電用にも使いたい」のだと。最新スマートハウス情報がヒントになったんだろう。

 事実、東関東大震災で多くの家屋が被害を蒙り、屋根の修理に1年半を要した例もある。計画停電実施も経験した。フル充電されたリーフのバッテリーなら、およそ2日分の家庭消費電力が賄える—-。EVを家庭用蓄電池にも利用しようという算段だ。

 そう言われると、このところ(以前から多いと思っていたが)ご近所に太陽光発電装置を備える家が目立ってきた。

 冬が寒く、屋外駐車だと凍結したガラスを拭くのに手間が掛かるので、おおかた屋根付き車庫か、覆いが要る地域である。日産提唱の充・給電設備付きスマートハウスが近所で普及する日は案外早く、つれてEVやPHVユーザーが増える地域なのかもしれないと思い当たる。

 リーフ発売後まもなく日産がセキスイハウスと提携したのが最初だった。遅れてはならじと、トヨタホームもスマートハウスを披露したが、考えたらこれも集合住宅が多い都市部では無理だろう。

 隠居小屋周辺のように土地があり、世代交代しても兼業農家なら相続税に苦しむ心配はない。若夫婦のため、いや孫の代まで使えるスマートハウス新築や増築に投資するには絶好のチャンス到来だった。★