前回取り上げた15インチホイールのWRX STiの登場から約1年後の94年10月にGC/GF型インプレッサは年次改良でC型へ移行。
実は毎年必ずと言っていいほど年次改良を実施するスバル車において、初代インプレッサで唯一アプライドモデル(年改記号)が2年間変わらなかったGC/GF Cタイプですが、実際は95年9月以降のモデルは若干の改良が加えられ、マニアの間ではC2型と呼ばれ、それ以前のモデルはC1型と呼ばれています。
C型にはリトナと呼ばれる2ドアモデルやグラベルエックスという、XVの原型のような、かなりマニアックなタイプが存在していましたが、やはり注目はSTi Versionの登場です。
B型からC1型に進化したインプレッサはエンジンのパワーアップを中心にドアのアウターハンドルのボディ同色化(一部グレードを除く)や、WRXではホイールサイズを15インチから16インチにサイズアップし、ラジオアンテナもパワーアンテナを採用、装備の充実も図られました。
エンジンは初代モデルから引き続きEJ20Gを採用していますが、WRX(セダン)では240psから260psへ20psものパワーアップを果たしつつも、シリンダーブロックはそれまでのクローズドデッキからオープンデッキに改められました。
同時に発売されたSTiは競技モデルのtypeRAをベースとし、専用チューニングのエンジンは、耐久性を重視した為、WRXのようにオープンデッキは採用されず、STiには引き続きクローズドデッキを採用、最高出力275ps、最大トルク32.5kg-mまで引き上げられ、後のSTi Versionの定番アイテムとも言える、ドライバーズコントロールセンターデフ(DCCD)や、ルーフベンチレーター、ゴールドの16インチホイール等も装備されました。
専用パワーステアリングポンプやクイックシフト、機械式LSD、カーボン製ストラットタワーバーの他、C1型STiにだけ着いたと言われるSTi/アールズのステンメッシュブレーキホースなど、走りの装備に関しては徹底的に専用装備が奢られていました。
ベースモデルが競技用のtypeRAという事もあり、パワーウェイトレシオは4.36と当時の国産車ではトップクラスの数値を誇っていましたが、競技用モデルがベースな故に軽量化と言う事でマニュアルエアコンがオプション(約20万円)窓はレギュレーターハンドルの付いている手動式、4ドアでありながら集中ドアロックも無く、オプションで選択する事さえ出来ず、マニュアルエアコンの他にオプションとして選択出来たのは、クイックステアリングギヤボックス(13:1)のみ。
当然ベースモデル同様ボディカラーもフェザーホワイト以外は選択出来ないというストイックさから、競技用の場合を除き、購入するには、かなり勇気のいるクルマでした。
その後C2型に移行した後にSTi VersionⅡが発売。
VerⅡでは、typeRAベースの他、快適装備のWRXセダンとワゴンをベースにしたモデルも登場し、こちらはボディカラーを3色から選択する事が出来るようになった他、セダン500台、ワゴン100台限定で、STi VersionⅡ 555というモデルも存在しました。
VersionⅡ 555は専用ボディカラーのスポーツブルーを纏い、WRXベースでありながらルーフベンチレーターが装備され、なんとオプションでWRCレプリカ仕様に出来るステッカーセットやマッドフラップ、スピードライン製ホイールまで用意されており、全て装着すると、納車された時点でWRC Gr.Aワークスレプリカ(外装のみ)がほぼ完成してると言うスゴイ仕様も存在していました。
C2型のSTi VersionⅡからはブレーキホースもステンメッシュから高耐圧ホースに変更され、トランスミッションの改良の他、インテークマニホールドの赤チヂミ塗装等も採用されました。
さらにこのモデルが発売されていた時点でWRCではインプレッサが3勝しており、セリカ、ランエボと3つ巴の熾烈な戦いが繰り広げられていました。
結局この年のWRCはトヨタ優勢かと思われていましたが、リストリクターと呼ばれる吸気量を制限する装置でレギュレーション違反が見つかり、ポイント剥奪、翌シーズンへの出場停止がFIAより言い渡され、戦線離脱。
王者トヨタの消えたWRCは俄然スバルが有利となり、この年スバル初のマニュファクチャラーチャンピオンと、今は亡きコリン・マクレー氏のドライバーチャンピオンのWタイトルを獲得。
記念モデルとして、WRX typeRA STi VersionⅡ V-Limted(限定555台)とWRX V-Limted(限定1000台)が発売されました。
翌年以降もスバルのWRC快進撃は続き、STi Versionと共に、V-Limtedは恒例の限定車となって行きます。
(井元 貴幸)