WRCで戦う為に生まれてきたスバルインプレッサ。それまでWRCを戦っていたレガシィに変わり92年に登場し、今年で生誕20周年。人間で言えば成人に当たる20年の間にインプレッサは数々の進化を遂げてきました。
そんな中、今でも人気の高い初代GC型STiバージョンは最終的にバージョンⅥまで進化を遂げました。
その進化の裏側には永遠のライバルとも言われる三菱ランサーエボリューションの存在があり、両車は切磋琢磨しながら共に進化してきました。
1992年9月にランサーエボリューションが発売、遅れる事2か月後にインプレッサが登場。
250ps/6000rpm・31.5kg-m/3000rpmを誇る初代エボに対し、GC8A型インプレッサWRXは240ps/6000rpm・31.0kg-m/5000rpmと、カタログスペックは若干劣っていました。
この10psと、0.5kg-mの差を埋めるべくスバルが投入したのが、1994年1月に受注生産と言うカタチで発売されたインプレッサ WRX STi。
インプレッサを知る人であれば、このWRX STiの存在を知っている方は多いと思いますが、それ以外の方ですと、初代STIと言えば、94年11月に発売されたWRX typeRA STi Versionを思い浮かべる方が多いと思います。
グレード名も94年11月発売の方はSTi Versionで、後にSTi VersionⅡ、Ⅲ、Ⅳと続いて行くモデルの元祖です。しかしながら、こちらのモデルは94年9月に年次改良を受けた後のモデルとなるので、GC8C(C1)型。
今回紹介するWRX STiは1月発売のモデルはGC8B/GF8B型、ベースがWRXでありながら無塗装のドアハンドルやAピラーに装着されている手動のラジオアンテナが特徴です。
名称もWRX STiと言う名で、その後のSTi Versionと比較するとSTiの代名詞とも言えるフォグランプカバーやゴールドのホイールは採用されておらず、2ピースのホイール(オプション)や巨大なリヤウィング、フジツボ製マフラーなど、メーカーチューンと言うよりはWRXオーナーが個人的にチューニングしたようなエクステリアでした。
専用ECUや鍛造ピストン等を採用したWRX STiはセダン、ワゴン合わせて月産100台の受注生産車で、WRCのホモロゲーションを獲得する為に生まれたSTi Versionとは違い、改造車扱いとなるためにJAFのモータースポーツイベント(ナンバー付車両クラス)には参加する事ができませんでした。
ベース車両も競技用モデルのWRX typeRAではなく、セダンワゴンともに5MTのWRXがベースとなる為、パワーウインドウやオートエアコンも装備されていました。
専用装備は大型のリヤスポイラーを初め、エクセーヌ生地を使用したドアトリムやシート、レッドステッチの入ったナルディのステアリング、ショートタイプのシフトノブ、WRX typeRAにも装備されたブリジストン エクスペディアなど。
メカニズム系では鍛造ピストン、軽量ハイドロリックアジャスター、専用ECU、強化インタークーラーダクト、インタークーラーウォータースプレー&專用ノズル、シルバー塗装インタークーラー、STiフロントスタラットタワーバー、高性能フロントブレーキパッド、STiフジツボ製大口径マフラー。ほかにもオプションでSTiエレクトラR 16インチ2ピースホイール、STiリヤ機械式LSDも用意されていました。
注目なのはタイヤで、これがなんと15インチ(205/55R15)。後に発売になるWRXtypeRA STi Version以降のGC/GF STiモデルは16インチが標準でした。
GC型は92年11月から2000年8月までの実に8年間の長きにわたり生産されていたモデルなだけに、数々の特別仕様車や限定車が存在していましたが、このWRX STiはインプレッサシリーズ初の記念すべき特別限定車、時代を感じるホイールサイズである15インチのSTiが存在した事にもちょっと驚きですね。
(井元 貴幸)