【自動車用語辞典:点火と電装部品「概説」】燃料に着火してエンジンを回す内燃機関の重要装備

■ディストリビューターからプラグ、鉛電池まで

●クルマ全体への電力供給も担う

ガソリンエンジンは、スターターでクランキングして、火花点火を飛ばすことによって、はじめて自力で駆動します。エネルギー源は燃料ですが、それを引き出しているのは点火系と電装部品です。

点火プラグなどの点火系システムと電装部品について、解説していきます。

●接点式ディストリビューターの点火システム

ガソリンエンジンでは、シリンダー内の混合気を効率良く燃焼させるために、適切なタイミングで点火プラグに火花を飛ばします。火花を飛ばすためには、点火プラグの電極間に数万Vの高電圧を印加する必要があり、それが点火システムの役目です。

バッテリ電圧12Vを数万Vまで昇圧するのは、点火コイルの自己誘導作用と相互誘導作用です。

・自己誘導作用
鉄芯にコイルを巻いた状態で電源回路のスイッチをONからOFFにすると、瞬間的に高電圧が発生する現象です。
・相互誘導作用
同じ鉄芯に2次コイルを巻いて、1次コイルの電流をONからOFFすると、2次コイルに巻き数比に対応した高電圧が誘起される現象です。

接点式ディストリビューターでは、1次電流の遮断はディストリビューター内ローターの接点(ポイント)で行います。エンジンのカムシャフトに連動したローターに気筒数のカム山が設けられ、カム山に乗り上げてポイントが開くことで、1次コイルの電流が遮断される仕組みです。

●フルトラ式点火およびダイレクト点火システムへの進化

接点式のディストリビューターでは、高精度に点火時期が制御できず、またポイントの摩耗などの課題がありました。課題解決のため、1990年頃からトランジスターのスイッチング機能を使ったフルトランジスター式へと徐々に置き換わりました。

フルトラ式は、接点機構をなくしてマグネット式回転センサーの信号をトリガーとして、トランジスターのスイッチング機能で1次電流の遮断を行います。ディストリビューター内にイグナイター(トランジスターを使った1次電流の制御回路)を内蔵したフルトラ式は、ダイレクト点火システムが登場するまで主流でした。

ダイレクト点火システムは、各気筒の点火プラグの上に独立した小型の点火コイルとイグナイター装着した電子制御点火システムです。カム位置を検出するディストリビューターがないので、回転位置を検出するために、カム角センサーやクランク角センサーを装着します。

接点式ディストリビューターとフルトラ式ディストリビューター
接点式ディストリビューターとフルトラ式ディストリビューターの構成
ダイレクション点火システムの構成
ダイレクション点火システムの構成

●点火プラグ

点火プラグの性能を表す指標として、熱価があります。熱価は、電極から燃焼室壁面への放熱能力を示し、通常6番を基準として、番数が低いほど放熱性が低く、電極温度が上がりやすいホットタイプです。放熱面積を大きくして放熱性を上げたものは、高熱価のコールドタイプです。

低出力エンジンで比較的低負荷運転を多用する場合は、熱価の低いホットタイプでプラグ電極温度を維持します。一方、高出力エンジンでは温度が上がり過ぎないように熱価の高いコールドタイプを使います。

点火プラグの熱価
点火プラグの熱価

●オルタネーター

ベルトを介してエンジンで駆動するオルターネーター(発電機)は、エンジンの点火システムや噴射システム、車体のライト、オーディオなどに電力を供給し、同時に余剰の電力でバッテリを充電します。電力を供給するための発電と、バッテリの充電という2つの重要な役目を担っています。

電動化の大きな流れの中で、オルタネーターは単に発電するだけでなく、燃費向上のために活用されています。オルタネーターを大出力化したマイルドHEVのように、より積極的に減速回生を行うなどの手法が代表例です。


エンジンを起動し駆動させるための点火系システム、エンジンのみならずクルマ全体に安定した電力を供給するエンジン電装部品、いずれも重要な役目を担っており、クルマの生命線と言えます。

本章では、点火系システムと電装部品について、詳細に解説します。

(Mr.ソラン)

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この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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