【自動車用語辞典:点火と電装部品「スターター」】モーターの力でエンジンを回して目覚めさせる仕組み

■フリクションに打ち勝つ大トルクが求められる

●アイドルストップの普及により高性能化が進む

エンジンは自力で始動できないので、まずはスターターの力でクランキングします。同時に適正な燃料と点火を供給することによって、シリンダー内で燃焼が始まり、エンジンが起動します。

始動時にエンジンをクランキングさせるスターターの構造や機能について、解説していきます。

●スターターの役割

イグニッションキーを回す(あるいは始動ボタンを押す)と、スターター先端のピニオンギヤが飛び出して、フライホイール外周部のリングギヤと噛み合いクランキングを始めます。クランキングと同時に、適正な燃料と点火を供給するので、通常は1秒も経たないうちにエンジンは起動します。キーを戻すと、ピニオンギヤは引っ込んでスターターの回転も止まります。

エンジンをクランキングする時には、クランクやカムシャフト、ピストンなど摺動部に大きなフリクション(摩擦)が働くため、スターターには大きなトルクが要求されます。例え専用の工具を使っても、人間の力では簡単には回せません。

特にエンジン油温が低い時には、フリクションが大きくなるのでスターターにはより大きなトルクが要求されます。

●極寒時のクランキング

極寒時には、クランキング時間が長くなり、最悪の場合は始動できないということがあります。その要因は、クランキング回転数の低下と着火性の悪化です。

クランキング回転の低下は、エンジン油温の低下、オイル粘度の上昇によるフリクション増大と、バッテリ温度の低下による放電電圧の低下に起因します。また燃料の蒸発性の悪化によって、燃料が着火しづらくなり、クランキング時間が長期化します。

クランキング回転は通常100rpm(回転/分)以上あり、瞬時にエンジンは駆動しますが、上記のような低温時やバッテリが劣化した場合は、50rpmを下回ることもあり、始動に時間がかかります。

●スターターの構造

スターターは、バッテリ電圧12Vで駆動する直流モーターです。駆動時には100Aもの大電流が流れ、大きなトルクが発生します。その構造は、3つの機構から構成されます。

・アーマチュアやフィールドコイルなどのモーター部
・ピニオンギヤや遊星歯車減速機構、オーバーランニングクラッチなどの動力伝達部
・ピニオンを摺動させてリングギヤへのかみ合わせを制御する部分

イグニッションキーを回すと、バッテリからの電流がホールディングコイルとプルインコイルに流れて、発生した磁力によってプランジャーがピニオンをリングギヤに噛み合わせる方向に移動します。
ピニオンがリングギヤと噛み合うと同時に、プランジャーがメイン接点を閉じるため、モーターは直接バッテリと接続され大電流が流れてクランキングを開始します。

スタータースイッチON時の回路構成
スタータースイッチがONの時の回路構成

●オーバーランニングクラッチ

エンジンが始動すると回転は一気にアイドル回転(600rpm以上)まで上昇するので、エンジンの始動と同時にスターターはリングギヤから切り離す必要があります。この切り離しを行うのが、オーバーランニングクラッチです。

オーバーランニングクラッチは、スターターモーターと連動して回転するアウターレースと、スプラグ式のワンウェイクラッチ機構を介して連結するインナーレース(ピニオンギヤ)で構成されています。

モーターがリングギヤを回すクランキング時は、アウターレースとインナーレースが締結状態で、モーターの回転がリングギヤに伝わります。

エンジン起動後は、回転が上がりアウターレースとピニオンの連結が解除されるので、ピニオンが空転してスターター側に回転が伝わることはありません。

オーバーランニングクラッチの動作
オーバーランニングクラッチの動作

最近採用が増えたアイドルストップ搭載車用のスターターには、従来品よりも高い性能が求められます。

例えば、始動頻度が標準車に比べて5倍以上増えるので、その分耐久信頼性を向上させています。その他にも、交差点などでの再始動を想定すると、安全のためにより迅速な再始動ができる工夫や対策をしています。

(Mr.ソラン)

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