〈MONDAY TALK星島浩/自伝的・爺ぃの独り言21〉 イヤーカー選びは第一次投票でベスト6を決める—-20数年来の慣習だ。私が今年ピックアップしたのはトヨタ・アクア、三菱ミラージュ、ホンダNボックス、日産ノート、マツダCX5、スズキ・ワゴンR。スバルBRZ&トヨタ86は迷わず、次点とした。
アクアは海外版にガソリンエンジン車があると聞くが、国内向けはハイブリッドに限られる。プリウスの陰に隠れて目立たないが、じわじわ評価が高まってベストセラー上位に定着しつつあり、来春、私の運転免許更新が叶えば我が家の次期買い替え候補にしている。
当初はPHV追加を待つつもりだったが、茨城の隠居小屋へ通う回数がとみに減っているので、現在のアクアで良しとする。東京の集合住宅で過ごすのにプラグインは要らないからだ。
値打ちが現行3代目プリウスに敵わないとしても、車両サイズや居住空間、使い勝手は2代目を凌ぐ。実用でリッター20㎞を超える燃費も、12年間愛用し続けた初代インサイトに優るとも劣らず。因みに来年3月の免許更新で私は81歳を数える。
三菱ミラージュについては去る10月1日に当「独り言」で採り上げたばかり。今年の日本車では傑作に数えている。唯一、切ったハンドルの戻りがわるい点が気懸かりなのだが、グリップ性能に優れたタイヤを履かせれば解決に向かうのではないか?—-初代インサイトを買った際にも似たような経験がある。グリップ性能重視でタイヤを交換したら、発進・加速・制動・旋回ばかりか実用燃費まで好転したっけ。
台上試験と異なり、一般路では必ずしもエコタイヤが実用燃費に優れるとは限らないし、制動・旋回はグリップの良いタイヤのほうが望ましいと思う。
新型ミラージュはタイ製。低価格と低燃費を「売り」にしているとはいえ、外装はVW up!(LUPOの中2文字とはシャレてる)に引け目を感じなかったし、軽乗用車並みの値段で買えるなんて素晴らしい。
Nボックスでインパクトを受けたのは、これも「独り言」で話したとおり、車両コンセプトだ。初代ワゴンRほどの衝撃ではなかったが、そのワゴンRに追随したムーヴ以下、ハイトワゴン勢が挙って後席フロアの広さと居住空間の大きさを競ってきた流れに対し「これが軽か」と目を見張らせるラゲッジスペースを実現した発想転換が画期的。
ホイールベースを思い切り前方に延ばした新プラットフォームで大向こうを唸らせた。パワー&ドライブプラントの前後寸法を詰めた設計はフェンダーがバンパー位置から立ち上がっていることで解る。
ためにボンネットとベルトラインが高め。特異なインナーミラーを備えて左下側を確認させるなど苦労の跡もある。
私の推奨機種はターボ四駆。オールマイティの実用性が魅力。いずれにせよ、久しぶり、ホンダの挑戦姿勢に打たれた。
挑戦的と言えば、日産ノートのインパクトも大きい。
スタイリングフォルムはフィットと一脈通じるものあり。ただしディテールにはキメ細かく手が入っていて、Cピラーからリヤクォーター裾に至る面構成に新鮮な美しさを感じる。空力効果が高そうだ。
エンジンはマーチなどと同じ1200cc 3気筒直噴をベースにスーパーチャージャーと組み合わせた。ターボを嫌ったのは、ミラーサイクルゆえに不足しがちな低速トルクを確保したかったのだろう。が、実際に運転すると、3000rpm近い回転域から力強さを実感する。エンジン音が静かで振動を覚えない点も特筆ものだ。
タイヤは14インチがベストサイズ。サスペンション・ブッシュに手を加えたら、よりソフトな乗り心地が得られるのではないか?
もっとも、私が受けた最大のインパクトは、新型ノートの開発主査が女性だったこと。知る限り、日本初。ということは世界でも初めての女性開発主査だ。日産は空力エンジニアにも優れた女性がいるのを知っている。工場と違って厚木の研究所は託児所など保育施設を完備し、女性従業員を厚遇していることで知られる。
それにしても新型車の開発主査に女性が選ばれたのは、男性では得難い資質の持ち主に違いなく、クルマの出来以上に評価したい。
マツダCX5はオールニューのクロスオーバーSUVであるほか、長らく途絶えていた実用ディーゼル車として興味を抱いた。以前はミニバンだって大半がディーゼルで買われていた。
マツダCX-5。久々のディーゼル本格投入の先陣を切る。
初めて走らせたのは木更津に近いレーシングコースだが、箱根試乗会の後にも都内&近郊を違和感なく楽しんだ。
すでに多くが方振られているとおり、早朝や深夜に始動すると「ディーゼルと分かるものの、走り始めると、ちょっと元気なガソリン車より静かだし、特有の振動も感じない。
後処理にカネをかけない代わり、動力性能と燃費に不満がないと言えばウソになるが、低速トルクの力強さとアクセルワークに追随する走り味はガソリン車で得難く、8割がディーゼルで売れるのも当然で、このエンジンがアテンザに積まれるとき、ハイブリッド勢とどちらが受けるか、今からワクワクする。
モデルチェンジしたワゴンRも意欲作だ。
Nボックスの追い上げが気になるとはいえ、新時代に備え、多くの手持ち技術をつぎ込んできた。
エンジンと副変速機付きCVTこそ改良版の域を出ないが、減速エネルギー回収を徹底したほか、アイドリングストップと再始動の機能を高め、小さいながらリチウムイオン電池をサブに加えている。
サブバッテリーは専ら室内用の各種電気を賄うそうで、アイドリングストップ中もエアコンファンを回して快適性を保つ。
私が注目したのは、それら新技術がレンジ・エクステンダー的ハイブリッド車に流用できることだ。
むろんリチウムイオン電池はより大きくなろうが、エンジンは660ccのままでも、800ccでもよかろう、専ら充電用とする。分類は電気自動車ながら、充電インフラ整備を待つことなく余に送り出す。現存EVと比べて遙かに安い「電気自動車」が出たとき、市場がどう反応するか。大いに期待したい。
今回の「独り言」もずいぶん長話になって、ゴメン。★