気づいた! FL660案を執筆中、関係者との確認の際、復活できるイベントがありそう

〈Mondaytalk星島浩/自伝的・爺ぃの独り言52(最終回)〉 FL500に限らず、以前は随分いろいろなイベントを企画し、実行した。

 TBS(東京放送)で仕事をしていた頃<東急サンデースポーツ>なる番組で自動車部門を担当。レースに偏らず、ジムカーナやタイムトライアル、モトクロスなど幅広く採りあげ、底辺層拡大と普及促進を図った。

 

 ジムカーナは亀戸に近い運転免許教習所の休日に開催。木更津近くの埋め立て地でダートトライアル。鋸山でヒルクライムを催したこともある。

 

 八王子近くや市原の山中ではモトクロスを実施。当時モトクロスはモーターサイクリスト誌系のMCFAJが主導していた。が、埒外にあったMFJ=日本モーターサイクルスポーツ協会にもモトクロス機運が高まりつつあったのを幸い、ワークス系チームから有望選手を招いてTV番組に仕立てた。

 

 番組名が<東急サンデースポーツ>である。

 スポンサーが<東急>なら協賛が得られるのでは? と企画したのが<箱根ヒルクライム>—-トヨタ、日産、三菱などメーカーに頼んで有名選手を招き、下町クラブが開催。フェアレディZを駆る高橋国光が優勝した。

 

 当時、箱根ターンパイクは東急が保有。有料道路だが、供用時間は朝8時~夜8時。早朝や夜間はメーカーが借り切ってテストしていたので、準備を含めても3~4時間で終わる早朝のヒルクライムイベントに支障はなかった。

 

 ほとんどを公認競技で開催—-非公認競技に参加するとライセンスにキズが付くためだ。ただし1時間弱のTV放送に配慮、公募ではなく招待競技とした。

 

 モータリゼーション育成期である。成熟期に入った今では考えられず、TV放送をアテにもできまいが、例えば箱根ターンパイクは現在トーヨータイヤ所有。TVでなくてもスマートフォンを媒体にする手があるかもしれぬ。

 

 スポーツに限らない。バイクやクルマを採り上げる新たな催しの立案者がもっと出てきてほしい。イベントをレポートするだけじゃなくモータースポーツの「新しい流れ」を創り出すのもジャーナリストの責務だと思う。

 

 

 と、ここまで。

 投稿を始めて満1年。キリのいいところで「爺ぃの独り言」を閉じる。

 

 もっとニューモデルを採り上げたら、と、ご希望を頂戴したが「自伝的」タイトルでもお判りだろう。不肖、自らの足跡と考え方を披露したかった。

 

 試乗記露出が遅いのは理由がある。試乗印象は、その日の内にメモ。原稿も直ぐ書いて編集部に送るケースが多いのに、掲載は4~5週間先に延ばしてもらう—-いきなりワル口で同業各氏の評価に水を差してはいけない、と考えた。

 

                          20130715

 

 今後ますます自動車社会は動きが活発化する。

 

 先々週は多種多様な日本のHVシステムに言及したが、ディーゼルエンジンだって今秋辺りに変革期が訪れる。高出力と低燃費を目指せば当然NOx浄化が求められる道理で、結局、尿素水を補給しながら走らざるを得まい。

 ブルーベンツみたいに高価ではなく、いかにコストを下げるかに注目。むろんディーゼルエンジンはHVにも広く展開するだろう。

 ただし軽油価格が高止まりしているので、乗用車はともかく、商用車は燃料代が頭痛の種だネ。漁船用重油だって半年間で25%も値上がりしたんでしょ? 

 

 軽乗用車も競争激化。燃費と衝突安全性を高めつつ、居住空間拡大と快適性向上。国内販売の半数を占めるだろう。全幅1600㎜までの規格が加われば、輸出の花形にもなろうが、自動車税のあり方が問われるやもしれぬ。

 

 一方、貧富の格差が大きくなるにつれ、ステータスシンボルとしての高級乗用車が売れ行きを増し、中間に位置するクルマは、HVかディーゼル。あるいは、よほど個性的魅力がないと存在意義を失う。

 

 他方、燃料電池車が実用段階に入る。試作車にはオフレコ試乗経験があり、燃料電池スクーターも型式認証済みだ。水素インフラ整備も進む。既に茨城県城里で行われていた水素バッグ耐圧試験は、おおかた終わったらしい。次はテストではなく、実用試乗だが、残念ながらもう爺ぃにチャンスはなかろう。

 

 21歳から60年間。ひと月も休まずクルマに試乗、記事を書き、図なども描いた。たぶん現役ジャーナリスト稼業で「最長不倒距離」だろう—-自慢話が多くてゴメン。失敗談を増やすべきだったと今ごろ悔やんでいる。

 

 クリッカーMondaytalk閉幕決意は3月。運転免許更新時に視力低下を痛感。運転することを仕事にしてきた身は、潔く「消え去るべし」と。

 

 幸い公道では無事故。ただし多違反。ゴールド免許を頂戴したのは、たった一度。それも70歳を過ぎていたため、5年有効ではなく3年だった。

 

 さて。フリーゆえ引退宣言なんて不相応だし、機会があれば新型車に触れたり、仲間とのミーティングやレース観戦にも出かける。が、クリッカーMondaytalkは今回で終了する。所詮、爺ぃの「戯言」だもの。毎回、長ったらしいとか、前置き不要とのご意見など戴いたが、同じテーマを2回、3回に分けて書く気になれず、前置きも削りたくなかった。

 

 1冊にまとめたら? とのお話は辞退。これまでも単行本企画はお断りしてきた。理由は「残る」ことが恥ずかしい。全て無責任な「言いっぱなし」ゆえだ。

 

 閉幕決意のキッカケが、もう一つある。

 実はクリッカーへの投稿数回分を微笑みながら読んでくれていたカミさんが、昨年8月末に脳梗塞&心不全で急逝。ほどなく一周忌を迎える。奇しくも最終回掲載の7月15日がクルマ好きだったカミさんの新盆に当たる。

 

 85歳を迎えるまでに夫婦で京都の老人ホーム入居を予定していた。でも、独りで入るのは躊躇。足腰が丈夫な内は、二人にとって縁深い浅草に納骨したカミさんの供養を続けつつ、独自技法による「油絵もどき」で余生を過ごす。

 

 京都の老人ホームは、知人がオーナー・理事長を務める福祉法人施設—-第1回鈴鹿8耐で親しくなったのだから、交友関係は大事にしたいもの。

 

 メーカー勤務を卒えた販売関係者や帰郷なさった方々。レース関係者。生まれ育った関西には「独り言」の読後感など寄越した友人も少なくない。

 

 足手まといの爺ぃに1年間お付き合いいただき、誠にありがとうございました。★

 

【挿絵について】 挿絵は星島氏がすべて直筆で描かれたもので、今回は最終となる52作目です。実は今回の作品は、連載が始まるまえにイメージを検討するために描かれたなかの1作。ところが、作画をあまりに具体化すると長期掲載には向かない、とご自身が判断され、やや抽象的なものへとコンセプトを変更されたという経緯がありました。これまでの掲載作品については「まぁ、読者に『これは何だろう?』と考えてもらえばいいんだょ」と言って舌を出された、いつもの星島スマイルとともに受け取ったものです。(編集部注)