清水和夫が吠えた!「なんで日本のメーカーは『アルピーヌA110R』のような車が作れないんだ!?」

■1550万円でもコスパ良すぎなアルピーヌ「A110R」に清水和夫がヤラレタ!

●足のダンピングの良さが絶品! ゾクゾクするゼ!!

いや~アルピーヌA110R、痺れるぜ!
いや~アルピーヌA110R、痺れるぜ!

実は、クリッカー・清水和夫番(お世話係)である私も、このアルピーヌA110が今、一番気になる車。

以前、広報車を横浜→都内→筑波サーキット(元F1レーサー:井出有治さん試乗)→都内→横浜と、3日間楽しませて(!)もらったときから、R32 GT-Rとはまた違う、ヒュンヒュン軽やかに走るA110に「いいわぁ~♪」と惚れたのです。

で、今回、国際モータージャーナリスト・清水和夫さんのYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』から紹介する試乗動画は、現・A110の頂点、A110Rです。

リヤウインドウも、ルームミラーさえも無い超軽量化されたA110Rは、どんな清水評価を得たでしょうか? では、さっそくドーゾ!

●カーボン多用で徹底的な軽量化、リヤガラスやルームミラーは無い、しかも6点式シートベルトが標準!!

アルピーヌA110R×清水和夫
アルピーヌA110R×清水和夫

いや~、アルピーヌA110R、なんか久しぶりにゾクゾクするね~。ポルシェのGT3(2628万円~)と違って値段も安いし(といっても1550万円ですけど)。

オリジナル(A110)も良かったんだけど、このA110Rはカーボンのバケットシート、6点式シートベルト…これ、ちゃんと認可を獲れるベルトですね。それと、アルカンターラのステアリングホイール…、もうここだけでやられちゃいます。

アルピーヌA110Rのコクピット。シンプルです
アルピーヌA110Rのコクピット。シンプルです

ベース車に対して、かなり軽量化をしています(A110Sに対してマイナス34kg[欧州仕様])。ボンネットがカーボン製、リヤガラスを取り外してあります。バックギヤに入れたときだけモニターに映し出される。で、バック(ルーム)ミラーが無い! 両サイドのバックミラーで認可が取れるんですねぇ。

なんとビックリ!な、6点式レーシングハーネスを装備したSABELT®製カーボンモノコックレーシングシート
なんとビックリ!な、6点式レーシングハーネスを装備したSABELT®製カーボンモノコックレーシングシート

バックミラーがないっていうのはね、昔JTCC(清水さんが乗ったのはシビック・フェリオ)のレースで、鈴鹿のスタート1分前にバックミラーが落っこちたことがあったねぇ。足で手繰り寄せてオフィシャルに「持ってって!」って言ったんだけど。バックミラーが無いとレースはイヤだったね。後ろがどうなるか分からないから。そんなことを思い出しました。

エンジンの出力はほとんどベースと変わらないんだけど(A110GT、Sと同じ300ps/6300rpm/参考値)、まぁ途中のスロットルレスポンスなんかを制御でいじったと思う。

フロントスプリッター、ボンネット、サイドスカート、リアスポイラー、ディフューザー、リアフード、専用ホイールなど、あらゆるパーツにF1®カーボンを採用し、A110Sに対しマイナス34kgの軽量化が可能に
フロントスプリッター、ボンネット、サイドスカート、リアスポイラー、ディフューザー、リアフード、専用ホイールなど、あらゆるパーツにF1®カーボンを採用し、A110Sに対しマイナス34kgの軽量化が可能に

ブレーキはクーリングをやっている。フロントは特に熱くなるからね、空気の流れ方でローター&キャリパーの熱を冷やす。2割くらい冷却性能が上がったと言っていました。それがハードウェア的な話。

あと、ボディが軽くなったことと、サスペンションが見直されて、ZFの可変ダンパーが付いています。車高調ダンパーなので車高も10mmくらい変えられます。でもあんまり車高って変えちゃうと、キャンバーとかジオメトリーが狂いますから、せいぜい10mmって言われています。

ただ、ダンパーが可変なので、伸びと縮み合わせて20段階の調整ができます。これ、別タンク式なので、ZFだから多分…ビルシュタイン? ザックス? ちょっと分からないけど、ダンパーも非常にこだわっています。

リヤガラスは…ない!
リヤガラスは…ない!

そうそう、あとスタビライザーは10%くらいバネ調整を上げて、前と後ろで若干違いますけど、前後のロール剛性配分を気にしながらスタビライザーが太くなっています。ということで、結果的にステアリングに対する動きもいい。

でもバックミラーが無いと高速道路で覆面に捕まっちゃいそうな気がするけど(笑)。まぁスピード違反をしなければいい話ですけどねw。

●ステアリングがキュッキュッする♪ 魂が宿ってるよ

あ、このへんいいな! ステアリングがなんかキュッキュッしてます。

イェ~イ♪ 楽しいぜ(清水和夫)
イェ~イ♪ 楽しいぜ(清水和夫)

やっぱりね、イタリアの車もそうだし、フランスのアルピーヌも、イギリスのミニもそうなんだけど、やっぱりステアリングに魂が宿っていますね。ちょっと舵を切っただけで、ノーズがキュッキュッと動く感じが超気持ちイイ♪

しかも、意外とロードノイズが静か。路面のつなぎ目の段差もダンピングがいいので、一発で収まります。だから、路面がフラットなところを走ると、舐めるような走りの気持ち良さがあって、路面がデコボコしているところもダンピングがいい。

もうポルシェだな、これ
もうポルシェだな、これ

これはポルシェだね! ケイマンGT4ほど過激じゃないけど、かなり近い。

今、ポルシェ911、ケイマン、ボクスターが受注停止しているから、欲しくても買えない。なので、その人たちはアルピーヌにいけばいいのかなと思いますけど。

そうそう、8月に抽選でル・マン100周年記念の限定モデル『A110 R LE MANS』が出るんだけど、全世界で100台、日本の割り当てが6台。これは凄い抽選になるでしょうね。オレも申し込んでおこうかな~。

●日本はスポーツカーを継続的に育てることができない。喝!!

アルピーヌA110Rのフロントビュー
アルピーヌA110Rのフロントビュー

今日乗ったのは、アルピーヌA110R。Rはレーシングではなく「ラディカル」と言っていました。これはフランス人的には多分「アヴァンギャルド」という意味なのかなという気がしますね。つまり「革新的」という意味。

アルピーヌA110Rのリヤビュー
アルピーヌA110Rのリヤビュー

A110Rはいろいろと軽量化したり、サスペンション変えたり。ということで、もちろん速くなっている。

これ乗って思い出したのは、30年前のNSX。エンジンV6横置きでボディはアルミで、ミッドシップにしたスポーツカー。で、ノーマルのNSXが出てその後、1992年にタイプRが出たのが、ちょうどこのA110とA110Rの関係じゃないかなと思います。

ブレーキ用クーリングダクトも
ブレーキ用クーリングダクトも

A110Rの走行性能は、期待以上に完成度が高くて気持ちがイイんだけど、こういう良いスポーツカーに出会うといつも頭にくるのが、『なんで日本メーカーはこういうのが作れないんだよ(怒)!』ということ。

ポルシェGT3やフェラーリみたいな車は作れるとは思いませんが(!)、A110Rはエンジン1.8L 横置きトランスアクスルですから、FFが作れればミッドシップも作れるというのは、トヨタのMR2が最初に示したんです。その後ホンダがやって、でも上手く続かない。

NSXは2002年に2代目タイプR(NSX-R)が出て、2005年に生産中止になりましたけど。日本は『スポーツカーを継続的に作り続けて育てる』っていうことがなかなかできない。売れないからってよく言うんだけど、それは売れる仕掛けが出来ていないんだよ。

●1550万円でこのパフォーマンスなら、絶対に買い!

【A110シリーズ 値段・価格(税込)】
A110:8,750,000円
A110GT:9,650,000円
A110S:9,750,000円
A110R:15,500,000円

A110はベースも900万円くらいで買えるんですけど、コッチのRは1550万円。

この手があったのか!と思ったのは、リヤウインドウが無い。だから、後ろを見るのは走行中はドアミラーだけで良いということ。バックギヤに入れるとモニターに映し出されて後ろが見える。これで国内法規に通っていますから、なんだ、いろんなことができるんだなっていうのが分かったんですね。

ミシュラン パイロットスポーツ カップ2(F215/40R18/R245/40R18)にA110R専用カーボン製ホイールを履く
ミシュラン パイロットスポーツ カップ2(F215/40R18/R245/40R18)にA110R専用カーボン製ホイールを履く

足がまた絶妙で、軽量化してバネとロール剛性上げたりしているんですけど、タイヤもミシュランのパイロットスポーツ カップ2。とにかくステアリングが締まっていて、ちょっと動くとシュッシュッて感じ。

ビックリしたのは、乗り心地の良さ。路面が良いところはどんな“ヘボサス”でも問題は出ないんだけど、サスペンションって路面がデコボコしたときに、いかにストロークを使ってバネ上のボディをピシャーン!とフラットにするか?っていうところが大事。これはそれが見事にできていて、段差みたいなつなぎ目のところでバーン!って1発でダンピングを上げて振動を抑える、みたいな。

そのへんの乗り味はポルシェ。だから、アルピーヌ・スポルトの中にはポルシェエンジニアが潜んでいるんじゃないかな?って疑いたくなるようなところもありました。

いずれにしてもこの車、このパッケージで、カーボンのフルバケットシートと、合法的な6点式シートベルトも付いていて1550万円というのは、かなり安いんじゃないかなと思います。

ちょっと欲しくなった。買っちゃおっかな~(清水)
ちょっと欲しくなった。買っちゃおっかな~(清水)

NSXは今、古い車でも中古がバカみたいに高いですから、そろそろNSXユーザーも乗り換えるんだったらこの辺は視野に入るかなと。

ポルシェが今、911、ボクスター、ケイマンが受注中止になっている状態なので、そういう意味ではポルシェユーザーもNSXユーザーも、あるいはトヨタのスポーツカーユーザーも、このアルピーヌには少しロックオンしといたほうがいいでしょうね。

私はかなりヤラレタので、この車1550万円なんですけど、どうしようかなぁ~♪と今、考えています。


お! 清水さんの次期愛車候補がまた1台、生まれたようですね!!

とにかく、このA110R(素のA110も)は一度乗るとホントに「欲しい!」と思わせる車です。試乗する機会があったら、皆さまもぜひ。全ての清水和夫さんインプレッションは動画で!

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの

アルピーヌA110Rの主なスペック
アルピーヌA110Rの主なスペック

【SPECIFICATIONS】
車名:ALPINE A110R
全長×全幅×全高:4255×1800×1240mm
ホイールベース:2420mm
トレッド(前/後):1555/1550mm
カタログ重量:1090kg
最小回転半径:5.8m
乗車定員:2名
エンジン型式/種類:M5P/直列4気筒DOHCターボ
内径×行程:79.7×90.1mm
総排気量:1798cc
エンジン最高出力:221kW(300ps)/6300rpm
エンジン最大トルク:340Nm(34.6kgm)/2400rpm
燃料タンク容量:45L/無鉛プレミアム
駆動方式:後輪駆動
トランスミッション:7速AT
サスペンション形式(前/後共):ダブルウイッシュボーン
ブレーキ(前/後共):Brembo製 ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前/後)215/40R18/245/40R18
最高速度:285km/h(サーキットにて)
0-100km/h加速:3.9秒
0-1000m発進加速:21.9秒
車両本体価格(税込):15,500,000円

【関連記事】

この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
続きを見る
閉じる