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■頑固一徹学校の中で語られた、日本のEV車が世界競争の中での勝負ドコロとは?
●EVのサスペンションなんかなんでもいいだって? バカ言ってんじゃない!
毎週金曜日の午後8時(20時)から、国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』で生配信している「頑固一徹学校」。
これは、「清水和夫の経験に基づく、清水和夫の価値観と考え方」を様々なテーマでフリートークをし、また視聴者からの質問に答えていくというもの。
2023年1月27日(金)の頑固一徹学校では、クリッカーでも紹介した「トヨタ社長交代に関して」や、「氷上を走って思った電子制御の在り方」など、いつにも増して特に濃い内容でした。
今回は、トヨタ新社長にシャシー開発出身の佐藤恒治さんが就任するという話や、ルノー・日産・三菱,の新アライアンスの話(※2月6日の記者発表前に語られています)から、BEVへシフトしていくこの時代に、清水さんが思う「日本のBEVの勝負ドコロ」について語られ、なるほど~!な清水流の想いが大量なので紹介します。
自動車ジャーナリスト、レーシングドライバー、ラリードライバー、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム/自動運転の実用化に向けた実証実験や市民参加イベントの情報など、関連府省庁の動向を伝えていく『SIP-cafe』委員、また神奈川工科大学では、自動車システム開発工学科の特別客員教授も務めるなど、いろんな顔を見せる清水和夫さんのトークは、必聴ですよ!
●日本のBEVにとって、シャシー性能が世界で戦うための競争領域!
私、今、特別客員教授として神奈川工科大学の自動車システム開発工学科で教えているんですけど、BEVってシャシー性能が競争領域になっていくんです。
電気自動車になったら、電気ってもうみんな同じような出力になってしまうので、どこで差別化するのか…?
たとえば、BYDとかヒョンデが出てきて、じゃ日本のEV車はどこで戦うんですか?ってなったとき、コネクトとかエンターテインメントじゃないだろうと。
やっぱりシャシーで勝負する。
BEVの時代になればなるほど、シャシーが差別化の競争領域になる!というのは、私、ずーーーっと言っているんです。
でも、自動車メーカーの上のほうの人で、ちょっと頭の固い人は、「いやコネクト、BEV、自動運転、CASEの時代だから、ハードウェアのサスペンションなんか何でもいいんだよ!」みたいなことを言う人がいる。
いや、そうじゃない!!
ソフトウェア ディファインド ビークル(Software Defined Vehicle/開発工程の中で、まずソフトウェアを定義し、その後にハードウェアを決める車両)と言われるのは、ソフトウェアを考えてハードをしっかり設計すれば、OTA(Over the Air/インターネット経由で自動車のソフトウェアを更新する技術)によってソフトがどんどんアップデートされていくと、ハードの性能がどんどん良くなってくる。
そこの発想が、どうも日本の自動車メーカーのトップにないんです。これはサプライヤーも含めてね。
だから、大学では自動車工学とか機械工学には学生が来なくて、情報工学のほうばっかり人が行くんだけど、そこじゃないだろう、と。ソフトウェアを制覇するには、良いハードをつくらなきゃいけない。
●シャシー性能、シャシーエンジニアリングは「国境なき医師団」!
ソフトを分かっていて良いハードを作るっていうところを、ヨーロッパはちゃんと分かっているんです。
たとえばパワープラント、エンジン、ブレーキ、ボディ、インテリア、パッケージ、サスペンション、ステアリング…、今までいろんな機能によって(開発が)分かれていましたけど、自動車メーカーの組織も分かれている。
だけど、シャシーって言葉が適正じゃないかもだけど、走る気持ち良さとか快適性、安全性予防安全、限界の予知性、またコントロール性とか、全てそれが運動性能だとしたら…相乗性、安定性、快適性っていういい方でもいいんですけど…。
それは、機能の部品を並べたところにシャシーがあるのではなくて、シャシーはもっと上位の概念にいなきゃだめ。ドライバーに近いところの機能というかシステムだし、タイヤと路面に近いところも見ているので、ビークルダイナミクスのシャシーの中に、パワートレーン、ブレーキ、ボディっていうものが入ってくる、っていう風に切り替えないといけないと思うんです。
だから、そういう意味で、私はシャシー性能とかシャシーエンジニアリングは、国境なき医師団!だと思っています。国境はないんですよ。
いろんな部署を横串で貫いて上にいなきゃいけないのに、そこが組織上、まだできていない。どうも部品ベースになっているので、それじゃ世界に負けちゃうよね!
●シャシー性能が良くなってきた日産車。シャシー開発陣に愛ある喝!
日産は昔「901活動」をやっていたように、最近ちょっとシャシーが良くなってきたので、日産の氷上試乗会にいっぱいいたシャシーエンジニアに、「あなたたちが日産の新しい価値を決めなさい!」とハッパをかけました。
今の、ルノーとの株比率のリバランスの話とか、そんな見栄の話なんかどうでもいい! ルノーと対等であろうがなかろうが、ルノーの持っている良いものを、日産は今までの20年間で少しでも盗んだのか!?って言いたいんですよ!
ストラットのアッパーマウントのインシュレーターを見れば、やっぱりアルカナのほうがしっかりとしたマスを持っているし、ルーテシアにしろアルピーヌにしろ、ダンパーインダンパーというKYBヨーロッパの凄い良いサスをルノーは持っています。
ルノーじゃないんだけど、最近シトロエンのDS9に乗ったんだけど、まぁ見事ですね! 乗り心地と運動性能のバランスでは、ピカイチのクルマです。
欧州にはそういうクルマがあるので、日本車はなんでそこで戦わないのかな?と思うんです。日本中にシャシーに関わる人、電動パワステからブレーキ、サスペンションなどに関わっている人はたくさんいる。
あなたたちがその競争領域を作っていくんですよ!
BEVの時代はサスペンション、シャシーが金のなる木を生み出すと私は思っています。そうじゃないと、中国や韓国と戦えないじゃないですか! そんな感じがしますね。
まぁどこもコスト重視っていうのがあるんですけど、じゃあダンパー1本…これは言いにくいけど…多分1g =1円切っていますよね。それじゃダメで、やっぱり良いものを使わないと。
最近、あるOEMの工場見学したら、やたらタクトタイム(Takt Time/ひとつの製品の製造にかける時間)の話ばっかり出てくるんです。でも、高級料理店に入って5分でお料理が出てきたら、ちょっとイヤですよね。「お客さん、美味しいもの作っているんで時間ちょっとかかります!」って言ってくれたほうがいいよね。
●レクサス流BEV、ソニー&ホンダのアレはどうだ?
レクサスもEV(LEXUS RZ450e Prototype)を出しました。レクサスはやっぱり、トヨタとスバルのBEV(bZ4X/ソルテラ)とはちょっと違ったスタンスで、より良いBEVを作るということでやっていました。
でもね結局、ボディを見れば分かるんだけど、BEVを作るんだったら、エンジン車じゃないプラットフォームという意味で、全長に対してホイールベースが65%くらいないと、前後のオーバーハングが小さくなっていかない。
そういう意味で、ソニー/ホンダが出したあのクルマ(新ブランド「AFEELA」)は、全長とホイールベース比が61%くらいなので、まだあれはダミーじゃないかなという気がしています。
BEVに対して、日本メーカーは物凄く慎重になっています。ユーザーの使い勝手よりも、バッテリーでトラブルを起こさないっていうところに気を使っているのかな?という気がしていますけどね。
●おまけの話。ポルシェの脱エンジンはマジだった!
ポルシェが911、ケイマン、ボクスターの受注を止めました。ポルシェは2030年に向けてエンジンのスポーツカーをどんどん減らしていくって言ってますよね。でも、もう2030年までの受注は全部来ちゃったと。それはある意味良心的なんだけど。
2030年頃にポルシェはまずスポーツカーを止め、BEVに切り替えていく。ポルシェがここまで本気になっているっていうことは、ちょっと驚き桃の木山椒の木!(清水 和夫)
頑固一徹学校で語られる清水和夫さんの話は、いつも「へぇ~」や「マジ?」「ソレ言っていいのか!?(笑)」な話が満載です。花金(昭和ですよ、どーせ!)の夜のひと時、クルマ談義をしてみませんか?(毎回、視聴者からの質問、受け付けていますよ!)
(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの)
【関連リンク】
StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX
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