清水和夫が思う「トヨタの社長交代劇」で、佐藤新社長に期待すること【頑固一徹学校】

■頑固一徹学校の中で語られた、「トヨタ社長交代」、その中で清水和夫に見えたものとは?

●トヨタ社長交代のニュースから清水和夫に見えること、思うこと

毎週金曜日の午後8時(20時)から、国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』で生配信している「頑固一徹学校」。

清水和夫
今回の頑固一徹学校は、女神湖からお届け

この頑固一徹学校は、「清水和夫の経験に基づく、清水和夫の価値観と考え方」を、毎週その時にあった様々なテーマでフリートークをし、また視聴者からの質問にどんどん答えていく、というもの。

清水和夫さんと愛犬ココちゃん
清水和夫さんと愛犬ココちゃん

自動車ジャーナリスト、レーシングドライバー、ラリードライバー、溺愛する愛犬ココちゃんのパパ、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム/自動運転の実用化に向けた実証実験や市民参加イベントの情報など、関連府省庁の動向を伝えていく『SIP-cafe』委員、また神奈川工科大学では、自動車システム開発工学科の特別客員教授も務めるなど、いろんな顔を見せる清水和夫さんのトークは、分かりやすく、でも私には難解だったりする回もありますが(涙)、「私の考えを他人に押し付けるつもりは毛頭ないので、皆さんそこはご理解ください」と、自動車業界を中心とした清水和夫流の情報を発信しています。

2023年1月27日(金)の頑固一徹学校では、その前日、1月26日(木)に緊急記者会見で明かされた、トヨタ自動車のトップ人事交代についても語られました。

さて、トヨタの社長交代ニュースの中で、清水さんに見えたことはどんなことだったのでしょうか?


●トヨタ自動車の社長交代を伝える緊急記者会見に「一瞬だけ」ビックリ!

1月26日(木)、大磯で行われた輸入車40台の試乗会に行っていたんですが、夕方にトヨタの緊急記者会見があるっていうのでちょっとのぞいてみました。

トヨタ社長交代
トヨタのトップ人事交代に関するニュースに、一瞬だけビックリ!?

トヨタの豊田章男社長が会長になり、GRとレクサスのプレジデントの佐藤恒治さんがトヨタ自動車の社長になるっていう発表があって、一瞬、驚きましたね。

と同時に、いろんな記者からの問い合わせもあって、「佐藤恒治さんってどういう人?」という質問が多かったです。

新社長となる佐藤さん、元々はシャシー開発の人。だから、経済誌の記者から見ると、佐藤恒治さんという人がどういう人だか分からなかったみたい。

佐藤恒治新社長
東京オートサロン2022 東京国際カスタムカーコンテスト2022 コンセプトカー部門 優秀賞 GR GT3 CONCEPT(TOYOTA GAZOO RACING)受賞でクリッカーに登場した佐藤恒治新社長(撮影:松永和浩)

佐藤さんは、元々レクサスでサスペンション開発をやっていた方。LCのチーフエンジニアをやり、その後レクサスのプレジデントをやり、豊田章男さん=モリゾウさん肝いりの、モータースポーツのGRも統括し…。

コーポレートというトヨタのオーディナリーな部署がありますけど、そこ以外の高級車レクサスと、スポーツのGR、この2つのプレジデントをしていたので、ある意味、モリゾウさんの信頼は非常に厚いというか、順当な人事なのかな?と思ったんです。

そのときに“はた”と思ったんです。なぜこのタイミングなのか?

●プリウス25周年、5代目プリウス誕生で、内山田会長引退のよきタイミング

「カーボンニュートラルをどうするの?」っていう課題は凄く大事で、これは今、水素エンジンとかをモリゾウさんが必死になってやっているわけです。

最近、自工会(一般社団法人 日本自動車工業会)の中に『モビリティ委員会』というのが出来ました。そこに、豊田章男自工会会長が入ってきます(※このトークは1月27日時点のもの)。

もはや、自動車業界だけでは解決できない問題が目白押し。なので、いろんな重工産業とかエネルギー企業との連携がこれから必要。社長業をやっててソッチまで手を伸ばしていくっていうのは、ちょっと厳しい。

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プリウス生みの親であり、今回、代表取締役会長を引退する内山田竹志さん

今までは、1997年に初代プリウスを作ったプリウスの生みの親である内山田竹志さんがトヨタの会長となって、ソコのロビイング(Robbing/ロビー活動/企業が利益団体から自国政府や国際機関に働きかけをすること)をしてたんです。だけど、年齢の件もあり、ちょうどプリウス誕生25周年、四半世紀経って、5代目プリウスが出たので、内山田会長の引き際としては今年、いいタイミングだったのではないかな、というのがひとつ。

●技術屋の佐藤新社長を中心に3本の矢となる?

と、内山田会長に代わって今度、豊田章男会長が自ら、カーボンニュートラルに向けたグローバルなロビイングをしていく。ここも非常にタフなネゴシエーションになるはずなんですね。ですから、そこは豊田章男会長の役割。

トヨタの社長になった佐藤恒治さんは、「レクサスで2040年、全部BEVにする!」って言い切っていた人なので、電気化という意味ではレクサスに新しい風を吹き込もうとしていた張本人。なので、電気自動車は佐藤さんが推し進めていく、みたいなイメージなのかな?と思うんですけどね。

前田昌彦副社長
前田昌彦副社長

引き続き、前田昌彦さんという方がトヨタの副社長で残っていますので、前田さんはそれ以外のハイブリッドなどの技術をしっかりと支えていく。

という意味で、技術ベースでいうと、3本の矢が上手く機能するのかな、と思っているんです。

●章男会長に負けず劣らず『濃いキャラ』な佐藤新社長

豊田章男新会長
豊田章男新会長、もしかしてもっとレースがしたいのか?

皆さんご存じのように、豊田章男さんはキャラが濃いですけど、佐藤さんも凄いキャラ!

聞くところによると、元々「レクサス・マイスターは豊田章男だ!」って自らモリゾウさんが言っていたんですけど、あるときから佐藤さんに、「もうお前に任せるよ!」的な感じがあったと思うんですね。「じゃ電気でいきます!」みたいなメッセージを佐藤さんが出したので、そういう意味では佐藤さんもモリゾウさんに負けず劣らず、強い信念とキャラクターを持っているんじゃないかなと思っています。

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2020年に行われたレクサスLC500試乗会より

今回の人事交代のタイミングはいろんな意味があり、内山田会長が退任するいい花道もできたし、プリウス25周年と5代目プリウスが発表され、これも非常に人気が高い。いろんな意味でベストタイミングだったのかな、っていう気はしますね。

●シャシー専門家の佐藤新社長に『国境なき医師団』的な期待、大!

まぁそんな経済界の大ニュースがありました。

佐藤恒治新社長
シャシー屋さんでもある佐藤恒治新社長、今後のトヨタ車シャシー性能アップに期待!

私が一番気になっているのは、佐藤さんは元々、シャシーの専門家。なので、これからのトヨタはシャシー性能がどんどん良くなっていくということであれば、カーボンニュートラルであろうが電気自動車だろうが、水素燃料電池車だろうが、走る楽しさとか気持ち良さとか安心感とか…、というような領域に、トヨタのクルマをどんどん引き上げていくんじゃないかなっていう風に思っています。

まぁ、あとはモリゾウさんも、会長になれば社長時代よりも余裕が出るのであれば、もっとレースをやりたいんじゃないかな?と思うんですけどね。

レクサスLC500試乗会
2020年に行われたレクサスLC500試乗会より

歴代の自動車メーカー、トップを見ていると、例えばホンダの川本信彦さん(4代目)はエンジニアで、吉野浩行さん(5代目)は二輪かな? その次の福井威夫さん(6代目)も二輪で、伊東孝紳さん(7代目)は車体設計で、八郷隆弘さん(8代目)はブレーキ屋で、三部敏宏さん(9代目)もエンジニア。

ですから、ホンダもシャシー屋さんが社長にはなっていないんですね。

SUBARUもそういう意味では事務系の社長も多いし、マツダの丸本明さんは…?

シャシーってね、悪く言っちゃうと『出世街道』じゃない、みたいなところがあったんです。でも、これからはシャシーが差別化と競争領域を支えていく最重要機能なので、シャシー性能は国境なき医師団!だと思っていていいかなと思います。


●BEVにとってシャシーが最重要機能!

最後に清水さんが話された、「シャシーが差別化と競争領域を支えていく最重要機能」という点については、実はこのトヨタ社長交代の話題の前に語られているんです。このことについては、動画を見ていただくと分かるのですが、この記事とは別に、再度じっくりと読み解いていこうと思います。ちょっと待っててくださいね! 物凄く興味深く、「さすが清水和夫論!」となってもらえますよ♪

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/画像:清水 和夫、松永 和浩、トヨタ自動車/アシスト:永光 やすの

【関連リンク】

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

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この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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