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■清水和夫がトラコン制御はどうあるべきか考えた
毎週金曜日の午後8時(20時)から、国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』で生配信している「頑固一徹学校」。
この頑固一徹学校は、「清水和夫の経験に基づく、清水和夫の価値観と考え方」を、軽快で奥深いトークで繰り広げられています。
今回紹介するのは、2023年1月27日(金)に生配信された頑固一徹学校の中で語っている、日産「エクストレイル」や「フェアレディZ」で女神湖(長野県北佐久郡)の氷上を走って、そして思ったこと。
ラリードライバーでもある清水さん、雪上や氷上走行は技ありのドライビングでいっつも楽しんでいます。こんなに走れたら雪上&氷上も楽しそうです♪
●トラコンはどう制御させるのがいいのか?
今日は、女神湖からお届けします。この辺りはアイスバーンでツルッツル! 愛車のレンジローバーも雪だるまになってます。
女神湖では毎年恒例、日産の電動車両乗り比べ会が行われていて、今年はEVやシリーズハイブリッド、ノート・オーラニスモとか、FFもモーター四駆のe-4ORCEもいろいろあって楽しめました。
また、フェアレディZやGT-Rもあり、でもFRのZは難儀するかな?と思ったけど、サイドブレーキが付いていたり、それなりに運転のワザをいろいろ入れると走りやすいんです。
今はトラコン(トラクションコントロール)、横滑り防止装置があるけど、ポルシェはGT3とかGT2は横滑り防止装置、ブレーキ制御でのアンチスピンのヤツと、タイヤの縦のスリップは別系統になっています。なので、横滑り防止装置をオフにして、トラクションコントローラーだけをONにした状態で走ることができる。
日本車はみんなVDC(Vehicle Dynamics Control)とかESC(Electronic Stability Control)とか一緒くたにして、横滑りとタイヤの縦のスリップを一緒に制御しちゃう。どうもそこが、きめ細かさが足りない。
●タイヤの縦方向のスリップを制御せよ!
それはどういうことかっていうと、ブレーキをつまんで横滑りのスピンを止める装置をカットすると、ポルシェみたいに2系統に分かれていないから、タイヤの縦のスリップ率のトラコンも切れちゃう。なので、3速でもちょっとアクセル踏むとバビーン!とホイールスピンが始まっちゃう。
じゃ、横滑り防止装置を切ったら危ないじゃね~か!って話もある。
でも、何でスライドするかっていうことをよ~く考えると、タイヤの縦のスリップ率が上がると横力がドーンと落ちる、というタイヤの特性があるんです。
これは、スリップ率とタイヤのμ(ミュー)の特性。スリップ率はちょっとあったほうがピークで高いんだけど、それ以降はドーンと横力が落ちる。だから、タイヤの縦のスリップを上手く制御すれば、そんなにドヒャッとオーバーステアになってスピンすることはない。
ポルシェはそれを分かっているので、GT3とGT2に限っては、横と縦を別々に2系統にしています。ただ、縦を切って横だけをONっていうのはないのかな。2つ全部ONか、横滑り防止装置だけOFFというのがモードにあります。
今日は、その教訓通りに後輩ジャーナリストにドライビングを教えました。
●技ありの左足ブレーキで、FRのフェアレディZを氷上で走らせる!
まずZのトラコンを切ります。切ったことによって、横滑り防止装置のブレーキつまみがない。これがあるとハイサイドみたいなのが起きてしまう。雪だと所詮、お尻の流れは止められない。止めるのはやっぱり、タイヤの縦のスリップなので、トラコンを切って、VDCを切って、横力のアンチスピン制御は要らない状態なんだけど、でも、タイヤの縦のスリップ率が出ちゃう。
マニュアル3ペダルのZは、走り出したら3速に入れっぱなしにして、左足で真ん中のブレーキを強く踏むのではなくて、チョンチョンチョンと、本当にチョンチョンチョンと軽くつまむ。
なぜかっていうと、タイヤとホイールの重量が20kg以上あるので、低μ路では1回ホイールスピンをしちゃうと、イナーシャ(慣性)で回り続けちゃう。だから、ドライバーはアクセルを戻したからトラコンが上手くいっているんだろうと思うんだけど、実は回っているので、左足ブレーキでソイツをチョンチョンチョンと止めていくと、Zのお尻がパーって流れていくんですけど、それを左足でタイヤの縦のスリップを止めると、スリップ率とμ特性がもう一回、摩擦力の大きいところに上がっていきますから、リヤの流れは意外に止められる。
そういう技を、ちょっと高度な技なんですけど、同業者の後輩に教えました。
●エクストレイルの電子制御は普通じゃなかった
そこから見えるのは、日本のスポーツカーなどの制御がまだまだ甘くて、もっときめ細かくいろんなことをやると、もっと走りやすくて楽しいことができると思う。そんなことを、今日は日産の制御担当の方と話していました。
今回、エクストレイルとアリアがあって、エクストレイルはシリーズハイブリッド、VCターボがあって、アリアはバッテリーで重量も重いんだけど、雪道で走るとエクストレイルのほうが乗りやすい。
アリアは重量が重いからっていうことを簡単に言ってしまうんですけど、こういう雪道ではむしろ、重量が重くて接地圧が上がったほうが走りは悪くはないので、ソコじゃないだろう。
つまり、発売された順番でいうと、アリアよりエクストレイルのほうが新しいので、e-4ORCEの制御がアリアよりちょっと進化している。
アリアもエクストレイルも走行モードのスノーモードを持っているんだけど、一般的にスノーモードっていうと、出力を落として、なんかすごくコンサバティブに走るようなイメージ。だから『根性無しのスノーモード』みたいな感じ。
だけど、エクストレイルは制御がモーターなのでかなりきめ細かくできている。
エンジニアに話を聞いたら、Gの小さい雪道やアイスバーンであっても、四輪の荷重を計算していると。その横Gで大体ロールとか荷重移動が計算できる。
そこで、計算上の『タイヤに対する垂直の接地荷重』を、コンピューターで計算値を持っていて、それに対して、むしろフロントの内輪の荷重が抜け気味のところの制御をどういう風にしていくのか…、というのが大事だそう。
本当はLSDがあれば解決策はもっとあるんですけど、メカニカルLSDがまだないので、モーターのフロントの制御をそういう風にしながら、前足で前輪の内側のタイヤで引っ張れるように。外側のタイヤを使っちゃうと、スリップしたら一発でアウト!
あと、変にリヤのモーターのトルクを上げちゃうと、後ろから押しちゃうので、プッシングアンダーみたいになってしまいます。ですから、フロントの内側の接地荷重と、そこに対する駆動トルクを計算して、それに見合った分のリヤのトルクを出していく、みたいな。
なんか説明を聞いていて、分かったのか分かんないような感じなんですけど(笑)。
結果的に言うと、普通のスノーモードじゃなかったですね。
普通のスノーモードっていうのは、出力を落としているだけなんだけど、今回は、「アイ・スノーモード」とか「インテリジェント・スノーモード」っていう言い方をしないといけない。今までICE(インターナル・コンバッション・エンジン/内燃エンジン)のスノーモードはたくさんあったので、それと混乱してしまいます。
だから、そういう減算する制御じゃなくて、4つのタイヤの接地圧と、モータートルクを上手くハーモナイズして、最新のエクストレイルには細心のスノーモードが備わっていました。
結果的に、凄く乗りやすい。ただ、エクストレイルに関しては、Gの高いところ、ウェットくらいになると、リヤサスがちょっとストロークしにくくて、どうしてもリヤの内輪が浮き気味になってしまう。その辺がイマイチ。まぁアリアもそうなんだけど。
氷上、雪上での走らせ方、電子制御の進化具合を体感した清水和夫さん。
この頑固一徹学校動画では前回紹介した「清水和夫が思う「トヨタの社長交代劇」で、佐藤新社長に期待すること【頑固一徹学校】」も含まれていますので、見逃した方もぜひフルでご視聴を♪
(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの)
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【関連リンク】
StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX
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