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■Citroën AMIの駆動系はヴァレオ製
2022年5月25日(木)、パシフィコ横浜において「人とくるまのテクノロジー展2022 YOKOHAMA(主催:公益社団法人 自動車技術会)」が開幕しました。
コロナ禍においてオンライン開催が続いていた同イベントとしては、3年ぶりのリアル開催となります。
今回もオンラインとの併催となっていますが、やはり最新の部品や車両を目前にすると気分があがるのは正直なところ。
十分な感染対策をしながらではありますが、初日の会場を覗いてみると大いに盛り上がっていることが感じられました。
そんな中で目が留まったのが、フランスに本拠を置くメガサプライヤー「Valeo(ヴァレオ)」です。そのブース中央には、小さくてかわいいクルマが置かれています。
『48V ライトeシティカー』と名付けられたデモカーの正体とは? そして、日本では販売されるのでしょうか?
結論からいえば、このデモカーはシトロエンが欧州で販売しているAMIという小型の電気自動車です。パワートレインにヴァレオ製の「48V eAccess」が採用されていることから日本に持ち込まれ、初公開されたというわけです。
●マイルドハイブリッドと共通パーツを利用
シトロエン AMIは、国によっては14歳から運転することができるというコミューターで、クワッドサイクル(四輪バイク)と呼ばれることもあるカテゴリーの乗り物です。
厳密にいえば四輪車とは異なるカテゴリーで、どちらかというと二輪車に近いため、衝突安全性能などが緩くなっているのが特徴といえます。
日本で売られているカテゴリーとしては50cc相当のミニカーと、新設された超小型モビリティの中間的なイメージと捉えればわかりやすいかもしれません。
そんなAMIに採用されている「48V eAccess」の特徴は、名前からもわかるように比較的低電圧の48Vシステムとなっていることにあります。
駆動モーターには欧州車に多い48Vマイルドハイブリッドで使われている48V ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)が流用されています。
人とくるまのテクノロジー展にて展示されているユニットを見れば、ISGの構造そのままに、ベルトドライブでアクスルに駆動力が伝達されているのがわかります。ある意味、汎用的なISGを利用することでコストダウンにもつながっているソリューションなのです。
●最高出力13.5kW、最高速度100km/h
モーターのパフォーマンスは、定格出力9kW・最高出力13.5kWというもの。内燃機関でいうと水冷125ccエンジンと同程度といえるでしょうか。
それでも車両としては最高速度100km/hに達するといいますから、市街地で十分に流れに乗れそう。
航続距離については100kmとアナウンスされています。性能バランスからすると日本でも”使える”モビリティとなりそうですが、前述したように車両規格の関係から正規で導入されることはおそらくないでしょう。
このデモカーは、ヴァレオが小型電動車両向けのオールインワン電動ユニットをアピールすることが目的ですが、ひとりのクルマ好きとして見ると、シトロエンAMIという、欧州が考えている電動コミューターの実車を見るという貴重な機会ともいえます。
人とくるまのテクノロジー展2022 YOKOHAMAは5月27日(金)まで開催されています。入場には事前登録が必要ですが、会場に足を運んで実際に確認してほしいとも思います。
●電動化時代はサプライヤーのビッグチャンス
ところで、電動化時代にヴァレオが提供するソリューションは、48Vの低出力パワートレインだけではありません。
ヴァレオのブースでは、最高出力60kW級のモーターにインバーターやギヤボックス(変速機)を一体化した「スマートeDrive」も日本初公開されていますし、電動車両に適応したエアコン用電動コンプレッサーも展示されていました。
最新の電動コンプレッサーは800V仕様にも適応するもので、従来モデルより容量をアップした45ccタイプとなっています。こうしてコンプレッサーの性能を上げているのは、電動車両においてはエアコンは室内を冷やすだけでなく、バッテリーの温度管理にも活用されるからです。
電動化時代には部品点数が少なくなるといわれますが、メガサプライヤーであるヴァレオは2021年から2025年にかけての年平均成長率を13%と見積もっています。電動化時代は力のあるサプライヤーにはチャンスであるというわけです。
人とくるまのテクノロジー展の会場に足を運べば、業界全体の勢いやトレンドを感じることができることでしょう。