高速道路にはなぜ水たまりができづらいのか?「高機能舗装」の効果を調べてみた

■答えられる? 高速道路に雨水がたまらない理由

たしかに、高速道路に雨水が溜まっているのを見たことない…
たしかに、高速道路に雨水が溜まっているのを見たことない…

友人を乗せて高速道路を走行中、突然視界がきかなくなるほどのゲリラ豪雨に遭遇。ほどなく雨は降り止みましたが、そこで同乗していた友人が一言疑問を投げかけてきました。

「高速道路には、なぜ水たまりができないの?」

友人は筆者が自動車専門のライターを生業としていることを知っているため、サッと答えてくれることを期待したのでしょう。しかし「それは、ええと…」と、口ごもる筆者。

ライターとはいえ、なんでも知っているわけではないよと内心で思いつつ、改めて考えると確かに不思議です。なにより、高速道路に雨水がたまらない理由を即答できなかったのは自動車ライターとして恥ずべきこと。くやしいので高速道路の雨対策について調べてみました。

●高速道路は水たまりができない特殊な舗装

高速道路の路面には、一般的なアスファルト舗装とは異なり、お菓子の「おこし」のように大粒のアスファルトを寄せ集めた「開粒アスファルト」と呼ばれる特殊な舗装が敷かれています。

通常のアスファルトの隙間が5%程度であるのに対し、高速道路などに用いられる開粒アスファルトは20%前後。これにより、雨水は粒の隙間を通って舗装下へと流れ落ち、排水路へと導かれて最終的には路外へと放出されます。

これが高速道路上に雨水が溜まらない理由です。

このような舗装は「排水性舗装」などと呼ばれ、特に高速道路ではこの特殊な構造によりさまざまな効能が得られるため、「高機能舗装」とも呼ばれています。

●高機能舗装は騒音低減や視界確保にも効果あり

一般道では水たまりができることもめずらしくない。
一般道では水たまりができることもめずらしくない。

高機能舗装のもうひとつの大きな特徴は騒音低減効果です。速度を上げるとタイヤから発生する「ヒュー」や「シャー」といった高周波音が気になるという方も多いでしょう。

「パターンノイズ」や「エアポンピングノイズ」と呼ばれるこの音は、タイヤと路面の間の空気が圧縮と膨張を繰り返すことで発生しています。

舗装内に隙間が設けられた高機能舗装は、雨水だけでなくタイヤの接地面で圧縮された空気も隙間から逃がすことで、これらのパターンのノイズを低減。日本道路建設業協会の資料によれば、高機能舗装は通常舗装よりも騒音を約3dBほど低減できるうえ、エンジンノイズ等を吸音する効果もあるとのことです。

そのほかにも、高機能舗装は水はねによる視界悪化防止に加え、濡れた路面によるヘッドライト光反射の緩和、寒冷地でのブラックアイス現象の低減などさまざまな効能を発揮します。この高速道路の用途に最適な効能が「高機能舗装」と呼ばれる所以といえるでしょう。

●高い排水性で危険なハイドロプレーニング現象を低減

高機能舗装に求められるもっとも重要な性能は、安全に関わる排水性です。特に、タイヤと路面の間の水膜によってタイヤが浮いてしまう「ハイドロプレーニング(アクアプレーニング)現象」の発生を抑えられる点が、高速道路に高機能舗装が用いられる大きな理由といえます。

ハイドロプレーニング現象は路面の水量に対してタイヤの排水性が追いつかなくなった場合に発生し、4輪すべてのタイヤで発生すると車は曲がることも止まることもできなくなってしまいます。

おおよそ80km/h以上の高い速度でなければ起こりにくいとされるぶん、ハイドロプレーニング現象でタイヤが滑った際には復帰操作が難しくなるうえ、事故被害も大きくなりがち。NEXCO東日本の調べでは、高機能舗装を採用したことで、雨天時の事故発生件数は多い箇所で約8割も減少したそうです。

●高速道路は雨でも速度が出しやすい! しかし過信は禁物

雨の日は「ハイドロプレーニング現象」が起こりやすい。
雨の日は「ハイドロプレーニング現象」が起こりやすい。

高速道路に雨水がたまらない理由は「安全性を高めるため、舗装内に水はけのよい高機能舗装が用いられているため」ということがわかりました。しかし、雨の高速道路でハイドロプレーニング現象が起こらないわけではありません。

高機能舗装とはいえ性能を維持するためには定期清掃が必要であり、ときおり路面を高圧洗浄機で清掃しているのは、舗装の目詰まりを除去するためでもあります。もちろん、排水が追いつかないほどの豪雨では高機能舗装の効果は得られません。

もしハイドロプレーニング現象が起きてしまったら、発生しない速度まで減速するしか逃れる方法はありません。ハイドロプレーニング現象でタイヤの接地が薄れると浮遊感のような予兆があるため、それ以上は速度を上げないことがなにより大切です。

予兆に気づかずに速度を上げ続けるとすべてのタイヤが浮いた状態に陥り、その状態ではブレーキで減速どころかアクセルを急に戻しただけで車がバランスを崩してスピンする恐れがあります。また、摩耗したタイヤや空気圧不足の状態での高速走行もハイドロプレーニング現象を誘発します。

このようにハイドロプレーニング現象の発生には「路面の水量」「車速」「タイヤの状態」の3つが大きく関わります。

このなかで、走行中のドライバーが唯一コントロールできるのは「車速」だけです。安全な走行に配慮された高速道路とはいえ、雨の日は速度を抑えて走行することの重要性が改めてわかりました。

(鈴木 僚太[ピーコックブルー])

【関連記事】

「コンビニワープ」って何? 住居侵入罪にもなり得る危険な行為は取り締まれるのか調べてみた
https://clicccar.com/2023/10/12/1318617/

高速道路の渋滞時はどこの車線が一番速いの? そもそもなぜ渋滞が発生するのか
https://clicccar.com/2023/10/01/1316243/

高速道路で見かける「アレ」。実は危険を知らせる重要な役割があった!
https://clicccar.com/2023/09/29/1315386/

運転免許証に設定した「2つの暗証番号」って何に使う? 忘れたときは?
https://clicccar.com/2023/09/28/1315967/

すべての乗り物に乗れる「フルビット免許証」は都市伝説? 幻?調べてみた
https://clicccar.com/2023/09/15/1312243/