AT車の「N(ニュートラル)」はいつ使う? 間違った使い方で車が壊れることも!?

■ATのNレンジはなんのためにあるの?

Nレンジってなんのためにあるの?
Nレンジってなんのためにあるの?

AT(オートマチックトランスミッション)には、必ず「P」「D」「R」「N」の4つのシフトポジションが存在します。

このなかでNレンジだけは極端に使う機会が少なく、中にはまったく使ったことがないという人も多いでしょう。

では、Nレンジは何のために備わっているのでしょうか。AT車のNレンジの使い方や使うべきシーンを調べてみました。

●AT車のニュートラルとは?

「Nレンジ」の「N」は、「ニュートラル(中立)」を意味していて、エンジンの動力がタイヤに伝わらないシフトポジションを指します。

駆動力が伝わらないのは停車時に使うPレンジも同じですが、車が動かないように変速機内部でパーキングロックされるPレンジに対して、Nレンジはロックがかからない特徴があります。

つまり、AT車がNレンジの状態にあるときは、外部から力がかかると車が動いてしまう危険な状態とも言えます。なので、AT車でNレンジを使うのは特殊な状況に限られます。

具体的には以下のような状況でNレンジが意図的に使われます。

【使用状況 1.】路上で立ち往生したとき

外部から力を加えて車を動かす際にNレンジを使う
外部から力を加えて車を動かす際にNレンジを使う

踏切や路上で急にエンジンが停止して再始動ができなくなったときなど、外部から力を加えて車を動かす際にNレンジを使います。

パーキングロックがかかるPレンジでは、そもそも車を押しても動かすことができません。また、エンジンを停止していたとしてもDレンジでは抵抗が大きくなるので、車を押す際にもそれだけ大きな力が必要になります。

Nレンジの状態なら、楽にとは言えませんが人の力でも車を動かせます。ただし傾斜地では、重力にしたがって車が勝手に動いてしまう点には注意が必要です。

【使用状況 2.】牽引されるとき

レッカー車などを用いた牽引時にもNレンジを使います。AT車は牽引すると変速機に負担がかかって壊れると言われていますが、30km/h以下の低速かつ短距離であれば問題ありません。

けん引可能距離はメーカーや車種によって30〜80km程度に設定されているものの、変速機の保護のためにはなるべく短距離に留めるようにしたいところです。

ただし、四輪すべてを持ち上げて牽引する場合や、FF車の前輪またはFR車の後輪などの駆動輪を持ち上げて牽引する場合は、変速機へ負担はかからないので距離に制限はありません。

●ハイブリッド車の牽引は注意が必要

ハイブリッド車は駆動輪を接地させたまま牽引すると、Nレンジに入れていてもハイブリッドシステムの故障や発火が起こる可能性があります。

ハイブリッド車の牽引は、4輪ないし2輪を持ち上げられるレッカー車に乗せるまでの極短距離移動に留め、長い距離の牽引はできる限り避けなければいけません。

場合によっては、特殊な作業や操作が必要になるので、ハイブリッド車のけん引は専門業者に任せるのが理想です。

【使用状況 3.】アクセルペダルが戻らない時

アクセルペダルが戻らないときにNレンジを活用する方法もある
アクセルペダルが戻らないときにNレンジを活用する方法もある

走行中に、エンジン出力を制御しているスロットルバルブが閉じなくなった場合や、アクセルペダルが戻らないときにもNレンジが使えます。

驚いてエンジンを停止させてしまうと確実にブレーキが効きづらくなるうえ、ハイブリッド車の場合は牽引しているときと同じ状態になるので、ハイブリッドシステムが故障する恐れがあります。

Nレンジの状態ならエンジンがかかっていても駆動力だけが切り離されるので、車はそれ以上加速しません。ブレーキは効きづらい状態になっているものの、力を込めて踏みつければ車は減速してくれます。

走行中にアクセルのコントロールが効かなくなったら落ち着いてNレンジにシフトし、惰性で走行する車をブレーキとハンドルを使って安全な場所まで誘導しなくてはいけません。

●Nレンジで燃費改善? その使い方は間違いかも

Nレンジの誤った使い方も知っておきましょう。代表的なのは、燃費改善のために下り坂でNレンジに入れる行為です。

Nレンジではエンジンブレーキが使えないので、急な下り坂でブレーキを使いすぎると過熱して止まれなくなる「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が起こりやすくなります。

また、エンジンがアイドリング回転を維持するNレンジでは、エンジンブレーキ使用時よりも燃料消費量が増えてしまうので、下り坂をNレンジで走行するのは、危険なうえ燃費にとっても逆効果です。

燃費改善のために信号待ちなどでNレンジへシフトする行為も、今では誤った使い方と言えるでしょう。

ATが登場した初期の車は、Nレンジに入れることで多少の燃費改善は期待できましたが、現在の車ではほとんど影響しないようです。

加えて、アイドリングストップ車では、停車中にNレンジへシフトするとアイドリングストップ機能が無効になるうえ、一部のハイブリッド車はNレンジの状態になると駆動用電池への充電をストップします。

足の疲労防止や、追突されたときに車が暴走状態に陥るのを防ぐために、信号待ちでその都度Nレンジに入れる使い方もありますが、ブレーキホールド機能が搭載された車ならそれも必要とは言えなくなりました。

AT車のNレンジは緊急時のためにあります。最新の車では普段の運転でNレンジを使う機会がまったくありませんが、いざというときのために緊急時の使い方だけは覚えておくとよいですね。

(鈴木 僚太[ピーコックブルー])