えっ博物館なのに?「トワイライトエクスプレス」の電源車が京都鉄博での展示を終了

■展示終了前に特別な車内公開も実施

京都鉄道博物館は開館以来展示されていた「トワイライトエクスプレス」の電源車・カニ24形12号車の展示を終了すると発表しました。

京都鉄道博物館での展示終了が発表された「トワイライトエクスプレス」の電源車カニ24 12
京都鉄道博物館での展示終了が発表された「トワイライトエクスプレス」の電源車カニ24 12

「トワイライトエクスプレス」は、1989年〜2015年まで大阪〜札幌間を結んでいた豪華寝台列車です。

客車は個室寝台と食堂車、サロンカーで構成。車体カラーは、ヨーロッパの豪華夜行列車「オリエント急行」をモチーフとした濃緑と金帯としていました。

現役時代の「トワイライトエクスプレス」。大阪〜札幌間を結ぶ豪華寝台列車でした
現役時代の「トワイライトエクスプレス」。大阪〜札幌間を結ぶ豪華寝台列車でした

2015年3月で定期運行を終了後、A寝台は2015年5月〜2016年3月までJR西日本エリアを走る「特別なトワイライトエクスプレス」を運行しましたが、現在は全車両引退しています。

このうち4両を京都鉄道博物館に収蔵。スロネフ25 501「スイート」・スシ24 1食堂車「ダイナープレヤデス」は「トワイライトプラザ」に展示。オハ25 551サロンカー「サロンデュノール」と電源車カニ24 12は「車両工場」に展示されました。

スロネフ25 501「スイート」は「トワイライトプラザ」に展示されています
スロネフ25 501「スイート」は「トワイライトプラザ」に展示されています
スシ24 1食堂車「ダイナープレヤデス」も「トワイライトプラザ」に展示
スシ24 1食堂車「ダイナープレヤデス」も「トワイライトプラザ」に展示
オハ25 551サロンカー「サロンデュノール」は「車両工場」で展示されました
オハ25 551サロンカー「サロンデュノール」は「車両工場」で展示されました


「車両工場」は度々、現役車両の特別展示を行っていて、その度にカニ24 12とオハ25 551は屋外に出されていました。京都鉄道博物館のプレスリリースでは、車体の老朽化や部品類の経年劣化により、車両工場と屋外の間を移動する入換作業が難しくなったため、展示を終了するとのことです。

展示終了に際して5月25日〜6月13日・6月15日〜27日は「車両工場」で展示するほか、6月16〜18・23〜25日に特別な車内公開も実施します。特別な車内公開は時間指定制で、アソビュー!電子チケットで販売します。

●実は希少な電源車

24系の原型は、1970年代に全国的なブームとなった寝台特急ブルートレインです。

ブルートレインには、電源車が編成全体に電力を供給する集中電源方式を採用した20系・24系と、寝台車の一部に発電セットを搭載した分散電源方式を採用した14系がありました。

集中電源方式の20系・24系の電源車は、車内に大容量のディーゼル発電セットを搭載しているので、外観もかなり独特でした。

1958年に登場した20系は集中電源方式を採用。電源車を連結していました
1958年に登場した20系は集中電源方式を採用。電源車を連結していました
1971年に登場した14系は分散電源方式を採用。寝台車の床下に発電セットを搭載していました
1971年に登場した14系は分散電源方式を採用。寝台車の床下に発電セットを搭載していました
1973年に24系は再び集中電源方式となり。電源車が復活しました
1973年に24系は再び集中電源方式となり。電源車が復活しました


引退したブルートレインの保存車両は全国各地にありますが、そのほとんどは寝台車や食堂車です。電源車は、京都鉄道博物館のカニ24 12と、秋田県の小坂鉄道レールパークで保存されているカニ24 511の2両だけです。

小坂鉄道レールパークで保存されているカニ24 511。現在も発電することが可能です
小坂鉄道レールパークで保存されているカニ24 511。現在も発電することが可能です

小坂鉄道レールパークのカニ24 511は、冬季はトンネル内で保管するため、見ることができる期間は春〜秋に限られます。その点、京都鉄道博物館のカニ24 12は通年見ることができただけに、今回の展示終了は残念です。

●博物館だからって永久保存されるわけではない?

博物館での展示が終了した車両はほかにもあります。

愛知県のリニア・鉄道館では2011年3月14日の開館の際に展示された車両のうち、300系新幹線323-20が700系新幹線723-9001と入れ替わりに展示を終了。

また、381系電車のクロ381-11、117系電車のクハ116-209・モハ117-59の3両は、新幹線N700系9000番代3両と入れ替わる形で展示を終了。その後、解体されました。

300系は試作車と量産車の2両が展示されていましたが、量産車の323-20は2013年12月27日で展示を終了しました
300系は試作車と量産車の2両が展示されていましたが、量産車の323-20は2013年12月27日で展示を終了しました
381系は2両展示されましたがクロ381-11は2019年6月7日で展示を終了し解体。クハ381-1は引き続き展示されています
381系は2両展示されましたがクロ381-11は2019年6月7日で展示を終了し解体。クハ381-1は引き続き展示されています
117系は3両が展示されましたがクハ116-209とモハ117-59は展示を終了して解体。残ったクハ117-30が屋内で展示されています
117系は3両が展示されましたがクハ116-209とモハ117-59は展示を終了して解体。残ったクハ117-30が屋内で展示されています


JR東海は、リニア・鉄道館を開館する前の1991年〜2009年まで、静岡県に佐久間レールパークを開設していて、ここにはカットボディを含めて19両が展示されていました。佐久間レールパークの閉館後、リニア・鉄道館に移設した10両と、東急車両製造(現・総合車両製作所)に譲渡された1両を除いた8両は解体されています。

佐久間レールパークで展示されていたクモハ12054は、リニア・鉄道館に移設されなかった車両のうちの1両。現地で解体されました
佐久間レールパークで展示されていたクモハ12054は、リニア・鉄道館に移設されなかった車両のうちの1両。現地で解体されました

そのほか、27両の車両を保存していた京都府の加悦SL広場が、2020年3月31日に閉園。閉園後に19両が新たな譲渡・保存先を見つけましたが、残る車両については譲渡先が決まらなければ解体される可能性があります。

2020年3月31日に閉園した加悦SL広場
2020年3月31日に閉園した加悦SL広場に保存されていた車両

この他にも保存車両が解体・撤去された例は意外と多く、その中には希少車も含まれています。つまり、保存されたからといって未来永劫安泰なわけではないのです。

京都鉄道博物館のカニ24 12は展示終了後も当面の間は屋外に留置する予定ですが、できれば別の場所で保存してもらいたいものです。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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