「知らなかった」じゃ済まされない、自転車保険とは。加入は義務? 掛け金はいくら?

■自転車保険とは?

自転車事故の加害者になると、数千万円もの賠償金が命じられる可能性も。
自転車事故の加害者になると、数千万円もの賠償金が命じられる可能性も

日常の移動の足として、老若男女問わず利用されている自転車。しかし、手軽さゆえに、転倒などにより自分や他人をケガさせてしまうリスクや、クルマなど他の人の財物に損害を与えてしまうリスクなどもはらんでいます。

そうした万が一の際の備えとして有効なのが「自転車保険」です。

自転車保険は、その名のとおり自転車に関連する事故やトラブルに対して補償するものです。多くの場合、相手はもちろん自身に対する補償も含まれているため、自己負担を最小限に抑えることが可能です。

具体的には、誤って他人の財物などを傷つけてしまった場合などに生じる法律上の賠償責任をカバーする「個人賠償責任補償」や、自身がケガをした際や死亡した際に適用される「傷害補償」が主に含まれます。

また、保険によっては入院した際に一時金が得られるものや、車両が盗難された際に補償が得られるもの、弁護士による示談交渉サービスなどが含まれるものもあります。

●自転車事故の加害者になると、数千万円の賠償金というケースも

自転車保険が注目されるようになった背景には、2015年に全国で初めて、兵庫県が自転車利用者に対して自転車保険の加入を義務付けたことがあります。その後、多くの自治体が同様の措置をとり、現在ではほとんどの都道府県で自転車保険の加入が義務および努力義務となっています。

クルマやバイクに比べて、大きな事故は起こりにくいイメージのある自転車ですが、実際には死者や重傷者の出る重大な事故も発生しています。

過去に起こった自転車事故のなかには、被害者が死亡したり後遺障害が残ったりした結果、加害者側に5000万円を超える賠償金の支払いが命じられたこともあります。

これほどの金額の賠償金を、保険に頼らず支払える人は決して多くはありません。

●「知らなかった」じゃ済まされない

自転車は身近な乗り物であるだけに遵法精神が低くなってしまいがち。
自転車は身近な乗り物であるだけに遵法精神が低くなってしまいがち。

一瞬の気の緩みが重大な事故につながってしまうという点は、クルマやバイクにも共通している点です。

一方、クルマやバイクは一定年齢以上で、なおかつ運転免許を保有している人のみしか運転することが許されていません。極めて悪質な例を除けば、クルマやバイクはほとんどの人が高い遵法精神をもって運転していると言えます。

しかし、自転車は年齢にかかわらず運転することができ、免許も必要ありません。そのため、そもそも交通ルールを理解していなかったり、道路上で起こりうる危険に気づいていなかったりすることもめずらしくありません。

たとえば、無灯火での運転、酒気帯び状態での運転、飲み物などを持ちながらの片手運転、イヤホンで音楽を聞きながらの運転などは、いずれも道路交通法や各地方自治体の条例で禁止されています。

これらの行為が禁止されていることを知らない人も多いと言われていますが、大きな事故が起こった時に、ルールを知らなかったからと言って罪が軽くなったり、賠償金が少なくなったりするものではありません。

●自転車保険の掛け金はコーヒー2杯程度

コーヒー2杯程度の金額で安心が手に入るなら安いものかも?
コーヒー2杯程度の金額で安心が手に入るなら安いものかも?

自転車に乗る以上、自身が加害者になってしまう可能性は少なからずあります。事故を起こさないように気を付けることはもちろんですが、万が一の際のためにも、自転車保険に加入しておくことは重要です。

かつては限られた保険会社しか提供していなかった自転車保険ですが、現在ではその数も増えつつあります。多くの場合、掛け金は月額数百円もしくは年額数千円程度となっており、家計の負担はそれほど大きくないのが特徴です。

補償内容もさまざまですが、他人をケガさせてしまったり財物に損害を与えたりしてしまった場合は1億円〜3億円程度。自身が死亡したり後遺障害が残ったりした場合には100万円~1000万円程度が補償されることが多いようです。

また、保険によっては入院日数に応じた補償や、手術した際の補償なども設定されています。

●自転車保険を選ぶポイント

自転車保険を選ぶ際のポイントとして挙げられるのは、
・個人賠償責任の補償額
・自身がケガをした時の治療費の補償の有無
・示談交渉サービス、弁護士費用補償の有無
・自転車のロードサービスの有無
の4点です。

基本的には、補償が手厚ければ手厚いほど掛け金も高くなるため、自身にあったバランスを考えることが重要です。

「個人賠償責任の補償額」「自身がケガをした時の治療費の補償の有無」については、できるだけ大きい額までカバーできる内容とするのがベターです。ただ、ほかに加入している保険で補償されている場合には、必要に応じて調整してもよいかもしれません。

「示談交渉サービス、弁護士費用補償の有無」についても、自身で十分な知識があれば必ずしも必要ではありませんが、そうでないなら入っておいたほうが安心です。

「自転車のロードサービスの有無」については、街乗りがメインの場合には不要と言えそうですが、自転車での遠出が趣味の人は必須のサービスのひとつです。

●自動車保険やクレジットカードで対応できる場合も

保険の補償内容をしっかりとチェックし、安心安全な自転車ライフを!
保険の補償内容をしっかりとチェックし、安心安全な自転車ライフを!

自転車保険に加入する以外にも、自動車保険や火災保険などに付帯している個人賠償責任特約を利用することで、自転車による事故やトラブルが補償される場合があります。

個人賠償責任特約は、日常生活における事故やトラブルを補償するもので、多くの場合で自転車によるものも補償範囲内となっています。

また、クレジットカードにも個人賠償責任特約が付帯している場合や、あるいは月額数百円で個人賠償責任保険に加入できる場合があります。

ただし、個人賠償責任特約や個人賠償責任保険では、相手の怪我や財産は補償されるものの、自身の怪我などについては補償範囲外というケースもあります。また、家族は補償範囲内となっていない場合もあります。

自転車は日常的に使うものであるからこそ、自身や家族がどのような保険に入っており、どのような補償内容となっているのかを、しっかりと理解しておくことが重要です。

(鈴木 僚太[ピーコックブルー])

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