ミニバンでその恩恵が大きい! テインの減衰力コントローラー「EDFC5」、新型モデルを体感

■サスペンションメーカー「TEIN(テイン)」が発売している減衰力コントローラー「EDFC」とは?

TEIN_EDFC5
TEINの新型「EDFC5」

Gセンサー(加速度センサー)は、重力や動き、振動、衝撃を測定し、そのデータを信号に変え指示を出します。

衝撃で言えば、エアバックのスイッチになったり、ドライブレコーダーの撮影スイッチになったり、もっと身近なところではスマートフォンをタップしてアプリを起動することもそうです。またスマートフォンを傾けると画面の縦横が回転してみやすくしてくれることもGセンサーが関与しています。

このように、Gセンサーは人の活動に合わせて反応し、より快適な生活をサポートしてくれています。

クルマは加速や減速、コーナリング時にG(重力加速度)が発生します。それを検知してサスペンションを制御しながらロールを抑え操縦安定性を高めたり乗り心地をよくする電子制御サスペンションが、高級スポーツカーやハイエンドSUVには装備されています。

NOAH_TEIN
EDFC5はミニバンでその効果を体感しやすい

世界で活躍するサスペンションメーカーのテインでは、よりシャープなハンドリングとソフトな乗り心地を求める様々な車種に乗るオーナーのために、2002年から自社のショックアブソーバーに組み合わせる減衰力コントローラー「EDFC」を発売しています。

車内で減衰力調整ができるこのEDFCは、走りをもっと楽しみたいオーナーに支持され、すでに累計10万台を超える人気製品となっています。

2014年に第4世代となった「EDFC Active Pro」からは車速や加減速G、旋回Gのセンサーが搭載され、クルマの姿勢やトラクションをドライビングしやすい状態にするべく、サスペンションの減衰力を自動調整するという画期的なコントローラーとなりました。

GR86_TEIN
コントローラーユニットをGR86に装着

そのEDFCシリーズが9年ぶりとなるバージョンアップを図り、第5世代となる「EDFC5」が2023年1月に発売されました。新たに躍度(やくど=ジャーク)感応を取り入れた製品を発売前に試乗できる機会をいただきました。

●最新型「EDFC5」をチェック! 車速、加減速G、旋回Gに新たにジャーク感応が加わった

GR86_TEIN
トヨタ・GR86にEDFC5とRX1を組み込む

スポーツ走行をしたいなら、ショックアブソーバーは純正より減衰力を高めて、コーナリングでフロントのアウト側を踏ん張るようにしてステアリングの応答性をよくして曲がりたい。しかし、そのままだと高速道路などの直線ではゴツゴツして乗り心地がよくない。

直線では細かなギャップも吸収するしなやかさが欲しく、コーナーではシャープなハンドリングが欲しい。相反するものを両立してくれるのが、減衰力コントローラーのEDFCです。

GR86_TEIN
RX1を装着したGR86のフロントサスペンション

新型のEDFC5は、車速、加減速G、旋回Gに新たにジャーク感応が加わり、より細かな減衰力調整を自動でしてくれます。GセンサーはGが加わる方向性を感知し、加速時にはリヤの減衰力を高め、減速時はフロントを高めます。コーナリング時はアウト側を高めていき、これらが複合的に作用します。

新たに加わった躍度は、Gがかかる方向性や力をさらに細かく感知し、減衰力を自動調整してくれます。

今回、テインは芝浦工業大学と産学共同プロジェクトとして、システム理工学部の渡邉大教授の協力のもと、EDFC5を作り上げました。

●GR86はよりコントローラブルに

このEDFC5を搭載したGR86とノアに試乗しました。

GR86_TEIN
ロールを抑えながらフロントアウトの接地感が高くドライビングしやすい
GR86_TEIN
コーナーの立ち上がりはリヤアウト側がしなやかに動いて旋回性が高い

GR86ですが、まずは、マニュアルモードで純正より若干高めにして乗り出してコーナーに入ると、これだけでもアウト側がしっかり踏ん張ってくれて走りやすさが感じられます。

ただし、ステアリングをラフに回してしまうとアウト側から押し戻されるフィーリングですので、ステアリングにはスムーズな操作が必要です。

次に、加減速Gや旋回Gによって減衰力を自動調整してくれるモードで走ると、4本それぞれの減衰力を自動調整してくれるので、ロールを抑えながら走れます。

さらに、ジャーク感応を加えたモードで走ると、この自動調整のレスポンスが速くなるということの成果が感じられたのです。

ひとつのコーナーを抜けるときには大きな差こそ感じられませんでしたが、S字コーナーでは荷重移動したときの姿勢変化が少なく、ドライバーの視線が一定で走れ、それぞれのコーナーでアクセルを踏み込むタイミングが早くとれるので気持ちよく走れます。

●ノアはよりスムーズに

NOAH_TEIN
EDFC5とRX1を組み込んだトヨタ・ノアと私

ノアは重心が高いので、ロールを抑えられる恩恵がすぐ体感できます。

NOAH_TEIN
ワインディングも姿勢を崩さずリズミカルに走れる

コーナリング時にフロントアウト側が踏ん張り、リヤアウト側はトラクションを逃がさないよう柔軟な感じでグリップ感が高く、クルマをコーナー出口へ向けて押し出してくれます。

TEIN_RX1
RX1はツインチューブで全長調整式。フルバンプ時の突き上げがしにくいハイドロ・バンプ・ストッパー(H.B.S.)採用

ロールがしっかり抑えられているので、セカンドシートにも乗ってみましたが不快感がなく、これなら車酔いしにくいと思います。

そして2台ともコーナーを抜けてストレートを走ると減衰力を下げ、乗り心地がいい。こうして、走るルートや路面状況に瞬時に自動調整してくれるEDFC5は、スポーツ走行時の安全性を高め、ドライブの快適性を高めてくれるパーツです。

●モータースポーツで追求した反応性の速さから安全・快適をゲット

私が全日本ラリーに参戦していたときですが、最上位クラスで走り、30年以上テインのサスペンションを使用し、開発にも関わっている鎌田卓麻選手にこのEDFC5のことを伺ってみると…。

鎌田卓麻選手
テインのサスペンション開発に関わり、全日本ラリー選手権や全日本ダートトライアル選手権で活躍する鎌田卓麻選手のマシン

「EDFCのよさは、路面コンディションを選ばない順応性ですね。ハイスピード、ロースピードでサスペンションに求められる性能は変わってきますが、どちらかに決め打ちせずプログラムできるので、難しいコンディションであればあるほどメリットがありますね。以前のモデルとEDFC5の違いは、反応スピードが早くなっていることがいちばんの違いだと思ってます」と語ってくださいました。

2023年シーズンにはEDFC5を搭載予定とのことなので、その走りにも期待ですが、EDFC5が全日本ラリーや全日本ダートトライアルなど、モータースポーツの現場でさらに鍛え上げられるのも楽しみです。

鎌田選手は、「何より気に入っているのは、テインのエンジニアの熱意がスゴイところ。モータースポーツの現場で一緒に戦いながら、もっといいサスペンションにしようと挑んでくれているので、テイン以外考えられないほど信頼しています」と太鼓判を押します。

数値や理論はもちろんのこと、エンジニアの思いがこもったEDFC5。ぜひその走りのよさを体感していただきたいですね。

(寺田 昌弘)

この記事の著者

寺田 昌弘 近影

寺田 昌弘

1968年東京生まれ。獨協大学外国語学部卒業後、DNP(大日本印刷)入社。営業表彰を受け独立し、NPO医療支援活動のためサハラ砂漠へ。ダカールラリー6回参戦をはじめ、北米大陸横断、南米大陸縦断、オーストラリア大陸縦断など5大陸を走り、太平洋、インド洋などヨットで航海。
その現場で撮影、体感したことを執筆。都市から砂漠、南国の島々まで世界52ヶ国を旅し、世界の道をよく知る。愛車はランドクルーザー。日本スポーツプレス協会会員。
続きを見る
閉じる