最新ホンダN-BOXのホンダセンシング、ACCが渋滞追従機能付きに進化してどう変わった?【新車リアル試乗3-2 ホンダN-BOX Honda SENSING編】

■人気軽自動車の安全デバイスのほどは?

N-BOXのリアル試乗2回目。

本「リアル試乗」で軽自動車を採り上げるのは初めてですが、軽自動車の現代的安全先進デバイスの機能はどんなものぞと気にかけている人も少なくないのではないでしょうか。

今回は現行N-BOXのHonda SENSINGを見ていきます。

●ホンダの軽初搭載だったHonda SENSING、N-BOX最新版では渋滞追従機能付ACCに

初代N-BOXの2011年12月発売時は、現代的な自動ブレーキ関連の安全デバイスは一切なく、せいぜいモデルライフ途中の2013年12月に、カーテン&前席シートサイドエアバッグとシティブレーキアクティブシステムをまとめた「あんしんパッケージ」をオプション設定していたにとどまります。

N-BOXにHonda SENSINGが搭載されたのは2017年12月に現行になってからで、ホンダの軽乗用車としては初採用にして一挙全車標準化。

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昨年2021年のN-BOX一部改良時、Honda SENSINGのACCに、渋滞時走行にも対応する渋滞追従機能が追加された

登場以降、N-BOXは毎年何らかの改良、変更を受けていますが、こと直近3年の改良はHonda SENSINGも毎年ブラッシュアップされており、2019年10月に衝突軽減ブレーキ&リヤワイドカメラの性能向上、2020年12月にパーキングセンサーシステム機能の追加、そして昨年2021年12月には、それ以前のN-BOXオーナーが悔しがったと思われる、パーキングブレーキの電動化とアダプティブクルーズコントロールの渋滞追従機能が追加されていまに至ります。

N-BOXのHonda SENSINGの内容には機種ごとの差異がなく、この機能はこの機種にあってこちらの機種にはないというものはありません。どのN-BOXを買ってもHonda SENSINGが包含する機能がもれなくついてきます。

取扱説明書上では、Honda SENSINGの機能を、作動のためのスイッチ操作の要不要に分けてわかりやすく記載されています。

【作動のためのスイッチ操作が不要な機能】
1.衝突軽減ブレーキ(CMBS)
2.誤発進抑制機能
3.後方誤発進抑制機能
4.歩行者事故低減ステアリング
5.路外逸脱抑制機能
6.先行車発進お知らせ機能
7.標識認識機能
8.オートハイビーム

【作動させるためにスイッチ操作が必要な機能】
9.渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロールシステム(ACC)
10.車線維持支援システム(LKAS)

他にHonda SENSINGに属さない安全デバイスとして、バック時に障害物と自車との距離をブザー&マルチインフォメーションディスプレイで知らせるパーキングセンサーシステムも全車標準で備えられています。

ではひとつひとつについて述べていきましょう。

1.衝突軽減ブレーキ(CMBS:Collision Mitigation Braking System)

honda sensing 1 cmbs
ホンダセンシング・衝突軽減ブレーキ(CMBS)

前方車両にほぼ真後ろからや、対向車への正面衝突、歩行者やひとが乗っている移動中の自転車に衝突する恐れが生じたとき、運転者のブレーキ操作を支援し、衝突の回避もしくは被害の低減を図るものです。

2.誤発進抑制機能

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ホンダセンシング・誤発進抑制機能

フロントバンパー右裏に仕込まれたレーダーセンサー、フロントガラス上部のカメラにより、停車時や約10km/h以下での走行時、自車のほぼ真正面の近距離に車両などの障害物があるにもかかわらずアクセルペダルを踏み込んだ場合、エンジン出力を抑えて急発進を防止すると同時に、音と表示で誤発進を知らせる機能。シフトレバーがP、R、Nで作動しないのはもちろんですが、急な坂道では作動(=抑制)しないことを頭に叩き込んで置かなければいけません。


3.後方誤発進抑制機能

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ホンダセンシング・後方誤発進抑制機能

シフトがRのとき用の誤発進抑制機能。内容、作動条件は上記誤発進抑制機能と同じで、認識する障害物が前か後ろかだけ。ただしセンシングはリヤバンパーに備えられたソナーセンサーで行います。当然、シフトがR以外では作動しないのと、誤発進抑制機能と同様、急坂では作動しません。

4.歩行者事故低減ステアリング

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ホンダセンシング・歩行者事故低減ステアリング

レーダーとカメラで歩行者や白線(黄線)を認識し、ステアリング操作を支援して運転者の衝突回避操作を促します。

5.路外逸脱抑制機能

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ホンダセンシング・路外逸脱抑制機能

システムが車両の車線逸脱の可能性を検知すると、車線逸脱を回避するように運転を支援すると同時に警告してドライバーに知らせます。

6.先行車発進お知らせ機能

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ホンダセンシング・先行車発進お知らせ機能

信号待ちなどで先行車が発進したことに気づかず、停車を続けた場合に、音と表示で知らせるシステムです。

7.標識認識機能

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ホンダセンシング・標識認識機能

走行中に認識した道路標識をマルチインフォメーションディスプレイに表示し、ドライバーに知らせる機能。

8.オートハイビーム

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ホンダセンシング・オートハイビーム

カメラで前方車両のライトや街灯の光を検知、ヘッドランプのロー/ハイを状況によって自動で切りかえるシステムです。

9.渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)

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ホンダセンシング・渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)

レーダーセンサーとカメラを駆使し、先行車との車間距離を測定、ドライバーのアクセルやブレーキ操作なしで、渋滞時も含めて状況に応じた車速を維持しながら走行するもの。

10.車線維持支援システム(LKAS)

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ホンダセンシング・車線維持支援システム(LKAS)

カメラで左右の白線(黄線)を捉え、システムが電動パワーステアリングを操作してレーン内走行をアシストします。

本「新車リアル試乗」は、クルマを買ったユーザーと同じステージにて試乗するため(だから「リアル試乗」と名付けた)、街乗りで信号待ちのクルマに突っ込んで自動ブレーキを試すなどという芸当を演ずるわけにはいきません。

というわけで、上記Honda SENSING10の機能のうち、6~10までを試してみました。

順序を変え、Honda SENSINGのメインどころから述べていきましょう。

●渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)/車線維持支援システム(LKAS)

honda sensing sensor 1 front wt
Honda SENSINGに使用するフロント側センサーは2種
honda sensing sensor 2 rear wt
いっぽう、リヤはバンパーに備えられたソナーセンサーのみとなる

Honda SENSINGの作動に必要なセンサーは3種類。

フロントガラス上部に設けられたフロントセンサーカメラがひとつ、フロントバンパーのナンバープレート右裏のレーダーセンサー、そしてリヤバンパーに備えられたソナーセンサー4つです。

【渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)】

筆者は、ただのクルーズコントロールすら「すげえ!」と思っていたクチで、90年代後半に車間距離を維持して走るクルーズコントロールを初めて見たときは「ここまで進化したか!」と驚愕したのですが、あれから約20年余経つと軽自動車に全車標準化になるとは! ただし、これら標準化に伴ってクルマのお値段のほうもずいぶん高くなりました。

steering switch 2 acc wt
Honda SENSINGのACC、およびLKAS関連のスイッチ。ハンドル右スポークに備えられる

N-BOXの渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(以下ACC)の操作法は他のクルマ同様で、ハンドル右スポークにあるメーンスイッチを押した後に「SET-」をチョン押しすると、そのときの車速を上限にしてACCが作動、前走車との間隔を維持して定速走行に移行します。

設定車速を上げ下げしたければ、「RES+」「SET-」のチョンチョン押しで1km/h刻みで上がり下がりし、長押しすると10km/h単位で上下…このへん、いまのところ多くのメーカーと同じなので、デバイスを理解しているひとなら戸惑うことなく使えるでしょう。

acc 2 lamp acc and lkas at catch front car wt
先行車捕獲中はこのようになる
acc 1 lamp acc and lkas at before catch front car wt
LKAS作動時のマルチインフォメーションディスプレイ表示

先行車をレーダーがキャッチするとメーター左のマルチインフォメーションディスプレイに先行車マークを表示。先行車不在のときはクルマのマークが点線で描かれます。

車間距離の調整はディスタンススイッチで行い、最長・長・中・短の4段階に調節可能ですが、この4種の長短も車速によって変わり、例えば同じ最長でも80km/hと100km/hとでは距離が変わります。ACCの解除はブレーキペダルを踏むか、キャンセルボタンひと押しで。

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渋滞中の停止時は、このように表示される

最新N-BOXで追加された渋滞追従機能は、止まったりにじり出たりという交通の流れにも対応するというもので、これは首都高で試しましたが、先行車が停止するとこちらも停止、先行車が発進するとこちらも自動発進…ではなく、Honda SENSINGの場合、発進操作はドライバーに委ねられており、アクセルペダルのチョイ踏みか「RES+」のチョン押しで再スタートします。

先行車の検知距離は120m。先行車が自車から120m圏内に入るとシステムがその存在をキャッチ、メーター左のマルチインフォメーションディスプレイに先行車マークを表示します。逆にいうと、この「120m」という数字を覚えておきさえすれば、表示されていないときは、いまは少なくとも120m以上の車間距離にあることがわかるわけです。

【車線維持支援システム(LKAS)】

そのLKASですが、機能はふたつ持ち合わせ、自車をレーン中央に維持する「車線維持支援機能」と、左右どちらかの白線(黄線)からはみ出しそうになると音とディスプレイ表示で警告する「車線逸脱警報機能」があります。

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車線からはみ出そうになったときのLKASの警告表示

カメラで白線(黄線)を捉えるわけですが、昼夜問わずきちんとラインを把握し、レーン内走行やはみ出し警告などを不自然感なく行ってくれました。

lkas warning 2 ws
おこられました

車線維持は、関越自動車道ていどのカーブならきちんと追従し、ハンドルを握っているとハンドルが固くなり、システムがハンドル奥の方でシャフトをジリジリと動かしているのがわかります。ハンドルを手放し気味にしていると警告しますが、たまたま直線が続き、しっかとハンドルを握っていても入力しないでいると警告してくるのはご愛嬌。

このへんの働きはドライバーに何の違和感も抱かせないもので、何も書くことがないほど自然に働いてくれます。

●先行車発進お知らせ機能/標識認識機能

【先行車発進お知らせ機能】

先行車発進お知らせは、筆者がACCよりもほしいと思っている機能で、シフトがNのときならブレーキ制動中、またはオートマチックブレーキホールドのブレーキ保持作動中に、シフトがD、Sのときならこれらの状態に加えてACCによる停車中に作動します。自車と先行車との距離が約10m以内で相互しばらく停止している時点で先行車をじっと見つめ、その先行車が発進後も自車が停止し続けると、マルチインフォメーションディスプレイへの「先行車の発進を検知しました」と表示と音で発進を促します。

現行フィットで最新版になったHonda SENSINGでも持っていない、青信号や矢印信号の告知はトヨタが実現していますが、Honda SENSINGでもいずれ備わるでしょう。

【標識認識機能】

標識認識機能が把握する道路標識は次の4つ。

・最高速度
・はみ出し通行禁止
・一時停止
・車両進入禁止

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いったん大きく表示してから…
function of inform of road sign 2 ws
時計の下に小さく常時表示される

標識を捉えるや、まずは大きく標識マークを表示してドライバーに知らせ、その後はACC表示下に小さく常時表示します。

標識は数多(あまた)あるのに、なぜこの4つに限定しているのは日常的に頻繁に見かけるのと、時間帯などの補助標識に左右されにくいからでしょうか。いっそ規制標識のすべてを報知してほしいと思っていますが、いずれそのようになるかも知れません。でもやかましいか。

さて、N-BOXでこれらHonda SENSINGの機能を試してみて「いいな」と思ったのは、表示のシンプルさでした。

最新版Honda SENSINGを持つ現行フィットの表示は凝っていて、メーター全体が高精細液晶であることを活かし、ACC使用時なら自車マークがフィット、先行車マークはたぶん同社のレジェンドのイラスト表示であったのに対し、こちらN-BOXは自車マークは省かれ、先行車マークもただの線画になっています。先行車マークの下には車間距離を示すプロットと設定車速を表示し、標識を認識すれば、平常時は控えめに表示…シンプルであるばかりでなく、ACC関連でも標識表示でも、走っている間にドライバーが意識しなければならない情報がメーターパネル内のあちらこちらに散らばっているのではなく、時計下の広くもせまくもない1か所に、控えめに表示されているところに好感を抱いたのです。凝りに凝るのもいいのですが、シンプルな表示のほうが現状の把握がしやすく、「表示なんてこの程度で充分じゃないか」と思うものでした。

いくつか注文をつけるとすれば、自車マークだけはほしいこと、そして停車中は自車マークのストップランプやターンシグナルを点灯させてほしいこと、さらにはACC表示部とその左の広いエリアを分ける区画線があるとなお見やすくなると思いましたが、登場から5年も経ったクルマにいまさら改良レベルで採り入れられることはないでしょう。次期N-BOXで現行フィット並みのHonda SENSINGにまで進化したとき、この願いが実現するに違いありません。

オートハイビームは次回まわしにすることにし、今回はここまでとします。

ではまた次回!

(文・写真:山口尚志(身長176cm) モデル:海野ユキ(156cm))

【試乗車主要諸元】

■ホンダN-BOX L ターボ コーディネートスタイル(6BA-JF3型・2022(令和4)年型・2WD・CVT・プレミアムアイボリー・パールⅡ&ブラウン)

●全長×全幅×全高:3395×1475×1790mm ●ホイールベース:2520mm ●トレッド 前/後:1305/1305mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:920kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:S07B(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:658cc ●圧縮比:9.8 ●最高出力:64ps/6000rpm ●最大トルク:10.6kgm/2600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(ホンダPGM-FI) ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):20.2/17.4/21.7/20.7km/L ●JC08燃料消費率:25.6km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格190万9600円(消費税込み・除くディーラーオプション)