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■2位以下をすべて周回遅れにし圧倒的な勝利
バイクファンにとって真夏の祭典といえるのが、通称「鈴鹿8耐」として知られる鈴鹿8時間耐久ロードレース。日本で最も観客が入るイベントとして昔から有名ですが、その鈴鹿8耐が、8月7日(日)にコロナ禍の影響もあり3年ぶりに開催。
「2022 FIM世界耐久選手権コカ·コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース 第43回大会」が、三重県の鈴鹿サーキットで開催され、ホンダ・ワークスチーム「Team HRC」の長島哲太、高橋 巧、イケル・レクオーナ組が見事に優勝。
しかも、予選でポールポジション、決勝では2位以下をすべてを周回遅れにする圧倒的強さをみせ、ホンダにとって、2014年以来8年ぶり、通算28回目となる快挙を達成しました。
●バイクファンにおなじみ、夏の祭典
鈴鹿8耐は、1978年から毎年夏に開催されているバイクの耐久ロードレース。毎年、夏の風物詩として40年以上続く伝統のレースで、最盛期の1990年代初頭には4日間で30万人以上が集まったという、まさにバイクファンにはおなじみのイベントです。
コロナ禍の影響で、2020年以降は開催されませんでしたが、実に3年ぶりに行われたのが今回の大会。市販車をベースに競われる世界最高峰の耐久レース「EWC(FIM世界耐久選手権)」第3戦との併催で行われました。
久々の開催となった鈴鹿8耐で、Team HRCは、ホンダの1000cc・スーパースポーツ「CBR1000RR-R SP」をベースにしたワークスマシンで参戦。
ライダーには、鈴鹿8耐で過去3回の優勝経験がある高橋 巧選手(今回で4回目の優勝)、世界的レースMoto2(世界最高峰レースMotoGPの下位クラス)で活躍した経験を持つ長島哲太選手、そしてMotoGP参戦経験があるスペイン出身の若手イケル・レクオーナ選手を起用。
ちなみに、長島選手とレクオーナ選手は、今回が鈴鹿8耐、初参戦となっています。
●チームの総合力も光るレース
予選でTeam HRCは、長島哲太選手が2分4秒934を記録し、ポールポジションを獲得。伝統のル・マン式スタート(走行ライダーがコース端に止まっているバイクへ向け、反対側から一斉に走って乗り込むスタイル)で始まった決勝では、スタート直後こそはトップを奪われたものの10周目にトップを奪還。
その後は、終始安定した走りで後続との差を広げ、なんと2位以下を周回遅れにするという圧倒的な強さを発揮します。
各ライダーは、いずれも周回タイムが2分6〜9秒台と、安定して速かったこともありますが、ピット作業の速さにも驚きました。
8時間の長丁場を走るこのレースでは、1時間程度の走行後に、タイヤなどの交換やガソリン給油のためにピットに入りますが、Team HRCはほとんどのピットインで12秒〜13秒程度の超速ピット作業をこなしていました。
チームによっては、15秒を超える場合もあったようですから、ライダーの実力だけでなく、チームの総合力も優れていたことが勝因でしょうね。
そして、ヘッドライトを点灯しての夜間走行となる終盤も、危なげない走りをキープして、19時32分に見事トップでゴール。全214周を走り切り、ポール トゥ ウィンでの優勝となりました。
●メモリアルイヤーに快挙を達成
ちなみに、レースのベース車両となったCBR1000RR-R SPは、2020年にフルモデルチェンジを受けて登場した、ホンダが誇るスーパースポーツ。ノーマルでも218psものハイパワーを発揮する999cc 直列4気筒エンジンを搭載。
各部に世界最高峰2輪レースMotoGP参戦のノウハウを投入することで、高い戦闘力を誇るマシンです。
一説によれば、ホンダは、市販車ベースの世界的レース、EWCやWSBK(スーパーバイク世界選手権)、そして、日本のファンが多く集まる鈴鹿8耐などで勝つためにこのマシンを発売したのでは?とも言われています。
ところが、鈴鹿8耐は、前述の通り、コロナ禍で2020年から2年間開催されませんでした。つまり、3年越しでようやくそのポテンシャルを、多くの日本ファンに披露できたのが今回の鈴鹿8耐だといえます。
また、舞台となった鈴鹿サーキットは、1962年にホンダが作った国際サーキットで、2022年で60周年となります。加えて、ワークスチームの母体で、ホンダの4輪/2輪両方におけるレース活動を行うHRC(ホンダレーシング)も、2022年で創立40周年を迎えています。
さまざまなメモリアルが重なった記念すべき年に、今回の快挙。そう考えると、まさに今回の鈴鹿8耐は、ホンダにとって「いいこと尽くし」だったといえますね。
(文:平塚 直樹)