メルセデス・ベンツ SクラスのADASを清水和夫が徹底チェック「このちょっとの制御の緻密さは宇宙一!」

■レベル2での手放しは危険! それがメルセデス・ベンツの考え

●代わりのアクティブレーンチェンジングアシストは、手を添えていれば自動で車線変更が可能

メルセデス・ベンツSクラス400d
清水和夫がメルセデス・ベンツSクラス400dでメルセデス流ADASをチェック!

免許取得50周年!という、国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが、動画でクルマのアレコレを解説してくれるYouTubeチャンネル「StartYourEnginesX(スタートユアエンジン)」。

今回はメルセデス・ベンツSクラス400d(超静かな高性能ディーゼル)に乗り、「宇宙一!」(←あ、でも今回は発していない迷言)のADAS(Advanced Driver-Assistance Systems/先進運転支援システム)のテストを決行!

まずは動画で、その「これみよがし」ではない、ちょっとの制御をするメルセデス・ベンツ流ADASシステムを、清水チェック!

●3L 直6ディーゼルは超静かでトルキー

メルセデス・ベンツSクラス400d
高速道路にて、メルセデス流ADASの味付けを堪能してみた

Sクラスの前に市販化されているEクラスやEQA、EQCなど、最近のメルセデス・ベンツのADASは本当に使いやすいです。多分、単品の技術的なセンサーなどは日本メーカーも同じようなものを使っていると思いますが。

リアルワールドにおけるクルマのチューニングの仕方は、ほとんどの領域をソフトウエアが支配していると思います。

そういう意味で、メルセデス・ベンツのソフトウエアの完成度の高さといったらないですね。この前、箱根のターンパイクへ行ったらけっこう霧が出ていたんですが、そんな状況でも綺麗に車線を見ていきます。

メルセデス・ベンツSクラス400d
メルセデス・ベンツSクラス400dのディーゼルエンジンは、EVのように静かでトルキー

今乗っているメルセデス・ベンツS 400dは、3L直6ディーゼルエンジン。700Nmもあるんですが、EVに乗っているかのように、静かでトルキー。

このクルマはレベル2なのでライダーは付いていません。が、いくつか複眼のカメラを持っていて、クルマの周辺をかなりしっかり認識していますね。

しかし、カメラ中心で見ているかと思えば、天気が悪かったり夜になればミリ波レーダーが威力を発揮するわけです。カメラとミリ波レーダーのフュージョンで周辺を認識しています。

●2022年、ドイツでメルセデス・ベンツの自動運転レベル3が市販化か?

メルセデス・ベンツSクラス400d
メルセデス・ベンツSクラス400dのフロントシート
メルセデス・ベンツSクラス400d
メルセデス・ベンツSクラス400dのリヤシート

ヨーロッパ、特にドイツでは、新型メルセデス・ベンツSクラスに自動運転レベル3を実現する先進安全運転技術も搭載され、今年2022年の夏ごろにドイツで市販化されるだろう…と言われています。そのクルマにはぜひ乗りたいですね。

ドイツも国際法の車両運送法でレベル3を規定しました。まぁ日本と同じく60km/h以下なんですけど。ただそれはドイツのみで、日本には入ってきません。とはいえ、今のこのレベル2であれ、運転支援がきめ細かくできています。

●手放し運転NGの代わりの、アクティブレーンチェンジングアシスト

メルセデス・ベンツSクラス400d
ココでセット

ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)をセットします。

ヘッドアップディスプレイには、規制速度、設定速度、実走速度と、3つの数字が出ています。このハンドルの画は車線逸脱防止と車線の真ん中を走るガイド。

メルセデス・ベンツは、最近流行りのハンズオフはまだ認定していません。それは、まだレベル2では危険だという風に彼らは判断しているのだと思います。

その代わりにこのクルマには、アクティブレーンチェンジングアシストが備わっています。

作動速度範囲は、約80~180km/hの直線路であれば、斜め後ろにクルマが来ていない場合に限って、自動的に車線変更してくれます。しかし、ハンズオフは認めていないので、ハンドルに手を添えるような状態であれば車線変更が可能です。

メルセデス・ベンツSクラス400d
リア・アクスルステアリングが効いています

このコの優れものは、たとえば73km/hに設定すると、ワンクリックで10km/h台の数値に戻り、70、80、90、100km/hと変化できます。それ以外の細かい単位は、親指の腹でスライドさせるだけで1km/h単位で設定できます。

●高速移動のお助けシステム セッティングは、さすがメルセデス・ベンツ!

この加減速のスムーズさ、ブレーキのスムーズさ、これは誠によくできているなと思います。このくらいきめ細かくドライバーにストレスを感じさせないで高度運転支援が実現していれば、高速移動は本当に楽です。

メルセデス・ベンツSクラス400d
伝統あるSクラスもデジタル感満載!

しかも、全部がデジタルメーターなので、伝統的なSクラスが強烈な新しいデジタルカーに変化している感じ。

混在交通の中でこれだけ使いやすいクルマって、今まで出会ったことが無いな。

車線逸脱時などのステアリングの反力も、BMWほど強くないけど、今までのメルセデス・ベンツよりはちょっとボールドになったかな。でもこの反力が、いやらしい感じはしません。

メルセデス・ベンツSクラス400d
「ちょっと」の制御が絶妙

たとえば、左の車線を逸脱しそうになると、電動パワステでちょっと右に切るんだけど、その切り方がいきなりポンと切るのではなく、ジワッと戻すので、人間の感覚に合っています。

ブレーキの「ちょっと」つまんで減速するところや、加速も「少し」加速するところ、ステアリングも「少し」操舵するところ。この「ちょっと」「少し」のところの制御がものすごく良くできています。

この「ちょっと」を制御するというところは、ソフトウエアとハードウエアの関係においては難しいと思うんですね。

もちろん、ハードウエアのほうの応答性も上げないといけないので、きめ細かい認知判断をしたときに、操作のほうでアクチュエーターがきめ細かく動いてくれるかどうか…。ソフトウエアの緻密さだけではなく、その緻密なソフトウエアに、ハードウエアのほうもよく対応しているなというのが印象。

メルセデス・ベンツSクラス400d
メルセデス流ADAS、こんなに使いやすく安全性の高いレベル2は他では無いね

ソフトウエア・ファーストの時代だと言いますが、やっぱりハードウエアも、しっかりとそのソフトウエアの要求に応じられるような順応性やフレキシビリティを持っていないとダメだと思います。

(試乗インプレッション:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの

メルセデス・ベンツSクラス400d
メルセデス・ベンツSクラス400dの主なスペック

【SPECIFICATIONS】
車名:メルセデス・ベンツ S 400 d 4MATIC
全長×全幅×全高:5180×1920×1505mm
ホイールベース:3105mm
トレッド(前/後):1645/1675mm
車両車重:2090kg
最小回転半径:5.4m
エンジン:OM656/DOHC直列6気筒ターボチャージャー付(ディーゼル)
エンジン排気量:2924cc
ボア×ストローク:82.0×92.3mm
圧縮比:15.5(欧州参考値)
最高出力:243kW(330ps)/3600~4200rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1200〜3200rpm
燃料:76L/軽油
燃料消費量(WLTCモード):12.4km/L
駆動方式:4WD
トランスミッション:電子制御9速AT
ブレーキ (前/後共):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ (前/後共):255/50R18
価格(税込):13,380,000円

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【関連リンク】

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

メルセデス・ベンツSクラス スペシャルサイト
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/special/2020/s-class/saloon.html

この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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