使い方を変えれば劣化は防げる。クルマを長持ちさせる「7つの方法」とは?

■ちょっと意識するだけでいい、クルマにやさしい日常使用法

クルマは数万点の部品から構成される機械ですから、技術が進歩したとはいえ、何かしらの不具合から逃れることはできません。その不具合も原因は様々で、ユニットの純粋な故障、経時変化による消耗or劣化、ふだん乱暴に扱っているがゆえの疲労蓄積など……

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普段づかいの中でクルマにできることとは?

クルマは、というよりも機械は故障を起こさず、故障の修理費用を払うことなく使い終わるのが理想ですが、なかなかそうもいきません。しかし、そのリスクを少しでも抑える方法があります。

一般ユーザーが日常的にできる気の配り方について見ていきましょう。

1. 毎日乗る

garage
車庫に置きっぱなしなのはよくない。

筆者の経験上、クルマはできるだけ毎日走らせ、年平均1万、2万kmを超えるくらいのほうが故障を起こさず、長持ちするように思います。

クルマを買ったときに添付されている整備手帳(メンテナンスノート)を見てみると、年間走行距離が2万km以上のクルマの使い方は「シビアコンディション」に区分けされる(他にも条件がある)のですが、むしろシビアに使うくらいのほうがクルマにはちょうどいいのではないかと思います。

2週間動かさず、たまたま2~3日連続で乗ってまた1週間ほったらかし…。このような頻度の使い方をされるクルマは、やはり何かしらの不具合を起こす確率が高いようです。

temp meter 2
50m先のコンビニエンスで買いものをして帰るくらいなら、いっそまわり道して10km走り、水温がこれくらいになってから車庫に収まるほうがエンジンにとってはいいのだ。
temp meter 1
近くのコンビニエンスに行って帰るまで、エンジン水温がこの程度のままというのはクルマによろしくない。

もっとも、ただ毎日走らせればいいというものではありません。エンジンをかけて切るまでの間の距離なり時間はできるだけ長いほうがクルマのためにはいいとされています。

厳密にいえば、エンジンの各パーツは、暖まって膨張することで隙間が埋まり、本来の性能を発揮するようにできています。内部に残っている水分は熱で蒸発するわけですが、暖まりきらないうちにエンジンを切る…。

つまり短距離走行の繰り返しというのは、各パーツが膨張しきらないうちにまた収縮、水分はまた結露して内部に残るということになり、すぐ故障に直結とはいいませんが、長期的に見てエンジンにとって健康的な扱い方にはならないということはできるでしょう。

ここではたまたまエンジンを引き合いに出しましたが、トランスミッションやサスペンションなども同様です。これらはフルードが必須のユニットですが、動かさない、または動かす量や頻度が少ないというのは、全体的には固着する方向に進むことです。人間が運動をしないでいると身体がなまり、犬に散歩させないでいるとストレスが溜まるのと同じです。

これらを存分に動かしてクルマにストレスを与えないことがクルマを長持ちさせる筆頭のように思います。

2. 動かせるものは乗るたびに動かす

前項1はクルマ全体の話でしたが、この項で述べる「動かす」とは、運転席から操作するもの全般についてです。

power window
動かせるものは動かせ! パワーウインドウ。

パワーウインドウの昇降、ドアミラーの鏡面調整&電動格納、ワイパー&ウォッシャー、サンルーフ、空調、そのほか各電装品…。これらはエンジンやトランスミッションのように、オイルやフルードを使ってはいませんが、やはり乗るたびに動かすほうがいいと思います。

wiper and washer
動かせるものは動かせ! ウォッシャー&ワイパー。
outer view mirror
動かせるものは動かせ! ドアミラー調整&格納機構。

たとえばドアミラー鏡面は、バックのときは下に向ける、乗降のたびに格納&復帰、ワイパーなら雨の日はもちろんのこと、晴れのときでも汚れていたら、まずウォッシャー液を噴霧させてから動かす、ドアガラスやサンルーフは換気のために上げ下げするなどです。

air conditioner
動かせるものは動かせ! 空調。

これからクーラーの使用頻度が下がるひとも多いと思いますが、つねに車内の空気を入れかえるため、A/C ONでなくとも、ファンをまわすことを推奨します。ガラスのくもりを防ぐこと、ファンそのものも動かしたいためです。

いっぽうで、「1回触ると消耗するほうに進むわけだから、できるだけ触らないほうがいい」という考え方もありますが、あまり動かさない時間が長いと、ひさしぶりにスイッチを入れたときに動かないことがあることも添えておきます。

筆者が使っていたクルマを家族に譲ったあと、乗る機会があってウォッシャーのスイッチを入れたら液が出なくなったということがありました。ワイパーは使ってもウォッシャーはほとんど使っていなかったようで、モーターが固着したか何かで動かなくなってしまっていたのです。動かないばかりか、ウォッシャータンクからのホースも外れていました。

「どれだけ使わないでいたんだ」と思いましたが、ウォッシャーひとつとっても日常的に動かしていなければならないことがわかります。

3. 据え切りをしない

steering at the same point 1
クルマの鼻っ先に壁が迫るような場所では据え切りをしてしまいがちだが、本当はクルマのためにはよくない行為だ。

同じ場所で前輪だけを転舵する光景をときどき見かけます。ことにいまはどのクルマもパワーステアリング付きですから、まわし放題にまわすひとがいますが、これはクルマにとってもタイヤにとってもよろしくないことがわかると思います。

だいたい、パワーステアリングというものは、重いハンドルを軽々とまわせるように考えられたもので、サスペンションやタイヤが楽になるわけではありません。いや、楽にまわされるようになったぶん、むしろパワステ付きのサスペンション、タイヤのほうが受ける負担は大きいでしょう。

steering at the same point 2
いまのクルマのハンドルはパワーステアリング付きで、ぬれた小指でまわるほど軽いから、安易にまわしがちだが・・・

前輪タイヤはサスペンションを介してエンジンの重みがのしかかり、硬いアスファルト面に押し付けられています。つまりタイヤからすると上からも下からも大きな力ではさみ打ちにされているわけで、重量がかかった1点接地の状態でタイヤをじりじり転舵されたら、サスペンションもタイヤもたまったものではありません。

狭い駐車場での切り返すにしても、例え秒速1cmでもいいですから、転がしながらハンドル操作をすることが、サスペンション、タイヤのほか、ステアリング機構へのいたわりとなります。

ただ、ときにはどうしても据え切りしなければならない場合があるでしょう。そのときは、後ろめたさを存分に抱きながらハンドルをまわしてください。ここで後ろめたさを抱くことのできるひとは正常で、次からは狭いスペースに入り込んでも、据え切りをしなくてすむような駐車操作を心がけるようになると思います。

4. タイヤへの気づかいを忘れずに

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このクルマはFRベースの4WDだが、いまの世の中でいちばん多いFFは、操舵と駆動を引き受ける前輪のほうが減りは早い。

いまのクルマは安全運転支援デバイスがてんこ盛りで、「ナントカブレーキシステム」「ナントカスタビリティコントロール」などが全盛、中には義務付けされているものがありますが、クルマはタイヤで走るもの。安全デバイスのどれもこれもが正常に機能するのは、タイヤが正常な状態であってこそです。

タイヤはクルマに指定されたサイズのものを選ぶこと! そして空気圧を適正にすること! キーキー鳴らすような走りや急ブレーキはしないこと! 3に付随しますが、据え切りも避けること! これらがタイヤを長持ちさせるポイントです。

タイヤはクルマを動かしていなくても、そしてタイヤに穴があいていなくとも空気が抜けています。どこからかというと、タイヤの表面から抜けているのです。だから定期的に空気圧の確認が必須です。

ばらつきはありますが、筆者はだいたい給油4回から6回、距離にして1000kmから2000kmに1回、給油のときに空気圧を確認しています。

ただし実のところ、これくらいの走行距離で空気圧が目に見えるほど低下していたことはありません。さきに述べたように、筆者はクルマをほぼ毎日動かしていますが、タイヤに常に弾性変形を与えることで空気は抜けにくくなるなのです。そのおかげで、あるときに1本だけ圧が低いことに気づき、調べたら異物が刺さっていて走行中のパンクorバーストを事前回避できたということがありました。台所の床で見つけた輪ゴムがもろくなっていたのと同じで、タイヤもほったらかしにしているともろくなります。やはり常に動かすほうがいいのです。

タイヤに限らないのですが、クルマが余計な音を立てるような走りは禁物です。タイヤひと鳴き500kmというひともいて、「キキッ」という音をひとつ立てただけで、タイヤばかりかエンジン、トランスミッション、サスペンション、ボディにムリ・ムダな力がかかり、一瞬にして500km走ったのと同じくらいの劣化が生じるということです。

まあこれは「ウソを付くとエンマ大王に舌を抜かれる」「食べた後すぐに寝ると牛になる」のと似た格言的なものでしょうが、タイヤの鳴きは、百害あって一利なしにはちがいありません。

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置きっぱなしにしていると、そのうち接地部分だけが平らになっちゃうよ! 要注意!

クルマを長期間同じ場所に置きっぱなしにすると、「フラットスポット」が起きてしまいます。これはクルマを動かしても、接地していた部分が平らのままになってしまうことで、やはり毎日乗っていれば、このフラットスポットも避けられ、タイヤを大事にすることにつながります。

5. 給油はいつも満タンに

fuel gauge
燃料をタンクの常時半分以下とか、数十Lにとどめているひとも少なくないが・・・

出費を抑えるためにと、「10Lだけ」とか「1000円分だけ」というように、給油をほどほどにするひとがいます。考え方はひとそれぞれなのでそれでもいいのですが、クルマにとってはあまりいいことではありません。

給油時、燃料タンクには燃料とともにいくらかの空気が入るのと、それとは別に、タンクには呼吸穴があり、ここからもいくらか空気が出入りします(空気の出入りがないと燃料が入っていかず、エンジンにも送られないため。しょうゆ差しに空気穴があるのと同じ)。空気に含まれる水分がタンク内で結露し、水分が内壁に付着してサビの原因になります。もっともいまは樹脂製のタンクが多いですから、その場合はサビの心配は皆無です。

もうひとつ、燃料を常時少量にすることで心配になるのは燃料ポンプの故障です。燃料はエンジン自体が引っ張っているのではなく、燃料タンク内にある燃料ポンプがエンジンに向けて送り出しています(昔はポンプがエンジン側にあり、吸う方式だった)。

このポンプは稼働しているうちに熱を帯びるのですが、実は燃料そのものが熱くなったポンプを冷却しています。ということは、燃料が少ないとポンプは熱くなりっぱなし。この熱が燃料ポンプの寿命を縮めるということになります。「空冷にはならないの?」となりそうですが、ポンプ周辺の空気とて、しょせんはタンク内。空気穴があるとはいっても、それは換気用ではないので、ポンプの熱を放つには至りません。熱が機器によくないことは、スマートホンやパソコンの熱暴走で経験済みでしょう。

給油をほどほどにしたクルマの燃料ポンプの故障を目にしたことがありますが、だいたい新品交換で6万円ほどかかっていました。ガソリン代で抑えていた給油代が燃料ポンプ代に飛んでしまったことになります。

筆者はいつもタンクが空っ欠になるまで走り、満タンにします。これは生来のけちけち根性で燃費計算をしたいがためなのですが、結果的に燃料ポンプの保護にもつながっていたようで、燃料ポンプの故障に遭ったことがありません。

常に満タンにしていれば故障を防げるというものではありませんが、保険、精神衛生の意味で満タン給油を心がけたらどうでしょうか。給油ほどほど主義のひとは、満タンから10L、または1000円分使ったあたりでまた満タンにすればいいのです。

6. ドア開け閉めはやさしく

door
なめていはいけません。こいつがかなり重いのです。

クルマのドアは、開いているときは上下ヒンジの2点で片持ち、閉時はロックが加わった3点で支持されています。

ドア単体を手で持ったことはありますか? これがかなり重い! 鉄板だけですでに重く、下塗りしただけで段違いに重くなる! ここに車体色&クリア塗装を加え、モーターやロック機構、ガラス&昇降機構、ゴム部品、内張りなどがついたら、おそらくドア1枚30kg超えにはなるのではないでしょうか。

これほど重いドアを思いっきり勢いづけて閉めると、ロック部や開口部のゴム(ウェザーストリップ)にどれほど多大なショックがかかるかは想像できるようなできないような…。ドア内側の部品にだって大きな衝撃が加わるでしょう。もちろん自動車メーカーは開発段階でいろいろなテストを行っているに違いありませんが、「バンッ!」という音を立てる閉め方は厳禁! こぶし2つ分まで近づけてから押し付けるだけでドアはしっかり閉まります。半ドアを押したって閉まるのですから。このような丁寧な扱いが、ボディへのいたわりとなります。

7. バッテリー使用は最低限に

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バッテリーも価格がかなり高くなった。できれば長持ちさせたい。

クルマのバッテリーは電気の貯金箱のようなものです。エンジン回転中はオルターネーターが発電し、貯電箱にチャリンと溜まっていきます。が、エンジン停止中にオーディオなどを使っていると、電気はどんどん減っていきます。これもひとそれぞれですが、バッテリー上がりを防止するため、エンジン停止中でも電装品が使える「ACC(アクセサリー)」の使用はバッテリーのためには控えたほうがいいと思います。

バッテリー価格が高くなったこともあり、筆者は少しでも長持ちするように、エンジン停止中には電気はあまり使わないようにしています。そのおかげでバッテリー上がりに遭遇したことはありません。

その代わり、まぬけなバッテリー上がりを起こさせたことはあり、高速道のサービスエリアでスモールランプをつけっぱなしで仮眠し、エンジン始動不可にしてしまったことがありました。トンネルから出た後に消し忘れたのです。バッテリー上がりを数回させてしまうと寿命が短くなりますので注意しましょう。

また、クルマはドアロックをして車庫に置いている状態でも電気を消費しており、これを「暗電流」といいます。昔のクルマが消費する暗電流は時計くらいのものでしたが、いまはそうではありません。いつでもオーナーの操作でロック解除できるように、クルマはいまかいまかとスタンバイして待っています。他には電子ラジオ、またはナビのメモリー、イモビライザー、細かいところではメーターの区間距離計などなど、暗電流で消費した電気をカバーするためにも、毎日乗るほうがいいことがわかります。

volt guage
ナビによっては情報画面でバッテリー電圧を表示させることもできるが、あくまでも参考まで。ナビ表示後の電圧なのだから、静時の電圧とはいえないわけで。

なお、エンジンをかけるとき、スタートモーターが力強くまわり、2~3秒以内で始動すれば正常、それ以上かかるようになっていたり、アクセルの踏み放しでヘッドライトの明るさが増減したり(ハロゲンライトの場合。ディスチャージ式やLEDではわかりにくい)したら、バッテリー電圧は下がり始めており、新品交換を視野に入れ始める頃です。


これら7項目は、普段から実行できることばかりではないでしょうか。

クルマの平均車齢年数は、この8年ほどで8年を超えています。それに比べると、筆者がクルマを使ってきたクルマはたぶん周囲の人たちよりも長いほうで、過去2台を見てみると、2000年3月納車の最終型ブルーバードは8年で16万km超え、次のティーダは2008年3月から2019年3月までの11年間に21万kmを超えるまで使い続けました。

筆者は年にだいたい2万2000kmほど走り、いま使用中の旧シエラはこのコロナ禍で1万4500kmほどにまで落ち込んでいますが、それでも普通のひとの「年間走行距離1万km」よりは多いほうです。

旧シエラはともかく、ブルーバード、ティーダの2台とも、たかだか数年走っている間に、やれトランスミッションやエンジン、ほか駆動系に致命的な故障を起こしてユニット一式交換という事態に出くわしたことはありません。

大きな不具合といえば、20万km弱の頃にリヤサスペンションのショックアブソーバーからオイルのにじみが発生したこと、20万kmを超えた時点で運転席のパワーウインドウが正常な昇降をしなくなったり、ほぼ同時にエアコン(納車時から効きが悪いという大不満はあったが)のコンプレッサーが固着したことの3点。

ただしこれは故障というよりも寿命と思っています。それどころか、20万km前後の時点でもなおのこと、重いフロント側のアブソーバーが正常であったこと、一度もCVTフルードを入れ替えたこともないのに低燃費性を最後の最後まで維持したという、日産(正確にはサプライヤー)の技術に舌を巻いたもの。

ややシビア気味に乗っていれば、寿命を長引かせられることを証明したのではないかと都合よく思っています。

もちろん、ここに掲げた7つを守りさえすればいいというものではありません。ムリな運転操作でムリな力をクルマに与えない、ムダな音を立てない、路面に応じた適切な速度で走るといった、ごく順当な使い方をするのが前提の上です。ここにあなた独自の8つめ9つめの項目があれば、なおクルマは幸せな人生…いや、車生を送ることができるでしょう。

ここに書いたことのすべてはあくまでも筆者の経験にすぎませんが、クルマをお持ちで、余計な故障、修理費を恐れている方、長い長い実験だと思って試してみてはいかがでしょうか。

(文:山口 尚志/写真:中野 孝次・山口 尚志)